2-1-3

彼女たちを助けた僕は思案する。

このまま領へと連れ帰って敵の間者だった場合、公国に危険が及ぶ。

そう考えながらジム〇ーを出す。


公国へと今現在の段階で連れ帰ることはできない。

しかしこのまま彼女らを放置することもできない。

ここは魔物の森ほど危険なエリアではないにせよ、魔物が一切存在しないわけでは無いのだ。

このまま彼女らを放置すると魔物に食われるなり、攫われてしまうだろう。


僕は車に彼女たちを乗せてゆっくりと走り出す。

木々を避けながらの移動の為スピードが遅い。

しかし僕一人で3人を連れていくことはできない。

いいとこ2人が限界だろう。

そうして1時間ほど運転したところで、ようやく草原が見えてくる。


しかし草原には出ないが森のギリギリのラインで車をとめて彼女たちを外に出して寝かせる。


学校に居たころであれば身に着けている制服のアクセサリーで学年を判別できる。

しかし僕も彼女らも今現在着けているのこの世界の物だ。

当然、同級生なのか先輩なのかもわからない。


「・・・・・・う・・・・ん・・?」

どうやら一人気が付き始めたようだ。

僕が肩を揺するとゆっくりと瞼を開けた。


「大丈夫ですか?」

まぁ大丈夫そうには見えないが、そう声をかけるほか無いだろう。


目を覚ました彼女は何を思ったのか分からないが、僕を勢いよく突き飛ばし剣を抜いて構える。


「あなたは誰!?ここはどこ!?私たちに何をしたの!?・・・・っぐ!!」


目を覚ますや否やいきなりの質問攻め。そしてゴブリンどもにやられた傷が痛んだようだ。


「その傷、誰にやられたのか覚えてますか?」


「誰ってゴブリンに・・・・・!

あ・・・」


「わかりましたか?僕はあなた達ここまで運んだだけです。ちなみにあなた達を襲っていたゴブリンは僕が全部倒しましたので安心してください」


「そう・・・助けてくれたのね。ありがと」


そこまで理解した僕は彼女に聞いてみることにした。

一番気になったことをだ。

「あなた達は勇者召喚によって召喚された人たちですよね?」


「なぜそのことを!?もしかしてあいつらの仲間!?」


「あいつらとは?」


「王女の取り巻きたちよ!」


「なるほど、やはりあなた達は王女に追放されたのですね?」


「それを訊くってことは事情を知らない?それにその目、その髪の色・・・・

もしかしてあなたは召喚された日に追放された・・・」


「ああ、やっぱりばれちゃいますよね。この世界で黒い瞳に黒髪は珍しすぎますもんね。

初めまして・・・というべきですかね?

僕は西門 蓮司。一年生です」


「そう。無事に生きていたのね。今となっては喜ぶべきことね。

私は有栖川 里美ありすがわ さとみ。2年生よ。

西門君・・・でいいのかな。助けてくれてありがとう」

長身のスレンダーっぽい体系の女子生徒が答える。


「いえ・・・代わりに、といってはなんですが、伺いたいことがあります」

「何かしら?」


「なぜ追放されたのですか?」

「厳密には追放されたわけじゃ無いのよ。ただ私たちの戦闘スキルはあまりに一般的すぎて使い物にならないと判断されてしまった。その結果私たちは兵士たちにあてがわれそうになって逃げてきたのよ」


「あてがう・・・・とは?」

「早い話が性処理道具の扱いね」


「せ・・・・・・そんな」

「何を驚いているのかしら?今なら私も理解している。貴方が兵士を殺し王女に剣を向け逃げた犯罪者ではないことは。君自身もあの王女に何をされたのか理解してるのではないのかしら?」


「殺した?剣を向けた?どういうことですか?」

「違うの?」


「確かに魔物は殺したことはありますが、人を殺したりしたことはありませんよ」

「なるほどね。それも王女の嘘だったわけね・・・私たちが聞いてた報告では西門君は特別訓練を自分だけが受けるのがいやで、呼び出された際の兵士を殺して、王女に剣を向けたため捕縛しようとしたところ逃亡。そのまま追放扱いになったと聞いたわ。今となってはそれすらもあの王女が自分のことを正当化するための嘘だと分かったわけだけど」


「・・・・・・・・・」

「まあとにかくそんな理由で私たちはあいつらのもとから逃げることにしたの。でもまともに準備を整えられず、最低限の装備だけで森をぬけようとしたらゴブリンに襲われてしまってね。それからはあなたも知る通りよ」


「・・・もう一つ伺いたいことがあります」

「何かしら?」


「僕はいま別の国で暮らしています。もしあなた達が敵対しないというのであればその国に一緒に連れて行こうと思います。ですがもし敵対するのならば・・・」

と言いながら剣に手を掛ける。


「心配しなくていいわ。王国の手の内の者だったら敵対するつもりだけど、そうでないなら敵対する理由がないわ。それから私たちも連れて行ってくれると助かるわ。あとのことは私たちでどうにかするつもりだから」


「いえ、僕もいくらか資金に余裕はありますから。当面の間民泊程度であれば先輩たちの宿代を支払うことはできます。」


「そこまで世話になるわけには・・・」

そう言っていると、残りの2人も目を覚まし始めたようだ。




再び剣を向けられてはたまったものじゃない。

彼女ら2人に対する説明は有栖川先輩に任せることにした。


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