1-6-5
アビー達と再合流を目指し移動する。
合流後事情を話したところ協力してくれるそうだ。
どうにもアビー達は元々この領の領都出身らしく、いきなり魔物森で修行するには危険なため比較的穏やかな森がある、この街に来ていたようだ。
今はここで修行をし、いずれは領都に戻り魔物の森をメインの活動場所にしようと考えていたそうだ。
しかし状況が変わりこの街よりも、領都の方がより危険度が増しているとしったからには駆け出しであろうと冒険者になった彼女らは無視できないとのことであった。
僕は彼女らの勇気に感謝しつつ明後日に乗り合い馬車を使って領都へ行こうという話になった。
明後日というのは僕の事情だ。
明日はこの街の商人ギルドに大量の唐辛子を卸さなくてはいけない。
というわけで僕はショッピングセンターを開き唐辛子を大量に購入する。
これで明日の準備は完了だ。
今日も討伐から帰ってきて慌ただしく動いていた為疲れのあまり直ぐに寝てしまった。
翌日。
さっそく商人ギルドへ向かい大量の唐辛子を卸す。
その際にすりつぶす人手が必要になることを注意事項で伝えておく。
いくらで買えばいいか聞かれたが、今回は街の安全向上の為であるため僕の仕入れ値をそのまま伝えた。
僕とのやりとりは高額になることがほとんどであったため、かなり安心したようだ。
その後、僕はポーション作成の進捗が気になったため先にヒーレニカさんに確認しに行くことにした。
もちろんこの短期間で僕が希望した領のポーションを作成し終わっているとは思っていない。
しかし時間経過なしのアイテムボックスを共有することができるようになった今、ある程度はアイテムボックスを使ってやり取りができることになる。
そう考えながらヒーレニカさんの店に入る。
「まだできてないんだけど・・・」
どうにも僕が現時点で受け取りに来たと判断したようだ。
「はい。それはそうだろうと思います。
ただどれくらいのペースでできるのかどうかを聞きたくて伺いました」
「うーん・・・事が事だから大急ぎでやってるけどかなり時間がかかるのよね。
とくにポーションを作るには綺麗な水。それこそ不純物がほとんど存在しない水が必要になるのよ。だからポーションで使う水は蒸留水といって水を火で蒸発させて、その集まった蒸気が水滴になっておちるのだけど、その水をかき集めて使っているのよね」
なるほどそれならば時間がかかるのも納得だ。
そこで気になったことがあったため試してもらうことにした。
―――飲料水だ―――
元々日本では安全な水がどの家庭でも出てくるため、水を買うという概念は無かった。
税金が投入され公共事業として安く安全な水を入手できるからだ。
諸外国の方は日本ほどしっかりとした浄水施設がそろっているわけでは無かったりするため水も購入するという考え方が元々あった。
しかし約10年前程から日本においても水を購入するという考え方が生まれたらしい。
一部の諸外国をルーツにおく高級飲食店ではその時点でも水を購入するという考え方はあったが、世間一般に浸透し始めたのはこの頃とのことだった。
店頭にただの飲むための水が置かれるようになったりもした。
しかし日本の水道水は消毒の為にカルキという薬品を用いている。
このカルキが苦みを生み出したりと、水道水という形で低価格で水を飲めるとは言え、日本に水市場を生み出す一因になった。
店頭で並べられている水には不純物がほとんど入っておらず、舌触りはなめらかで苦みも特に感じないのだ。
この水ならばポーションにも使えるかもしれない。
そう思った僕は綺麗な水を揃えることができるかもしれないと言ってショッピングセンターに入り込んだ。
その時にまたあの音が頭の中に響き、今までと同じように新しいテナントが解放された。
解放されたテナントは
『ディーラー』だ。
最近の車業界のディーラーは各地で店舗を持つのではなく、ディーラーを入れることがある。
勿論ショッピングセンターであるがゆえに、あくまでも販売店としての形であり、整備までそこでできるわけでは無い。
しかし近々車購入を考えてる人が、別の買い物のついでに車販売店をのぞけるのであれば、購入してもらえる機会は増える。
その分利益につながりやすいというわけだ。
それはともかくとして、車が解放されたとはいえ免許ももってないし、なんとなくでしか運転方法は分からない。
とはいえ日本のように明確な法律があるわけでは無いし、人を撥ねないようにすれば何とかなるだろう。
問題は走らせる時間や地域だ。
この世界に自走する乗り物は現在存在しない。
そうなると街道を走る鉄の塊は噂・・・いやそれを通り越して奇怪な現象として広がるだろう。
使い時をしっかりと考えなくてはいけないだろう。
この車はスタンピードの時だけでなく、今後アーガスト王国を相手にしたときも荒事が予想されるし、同時にスピードが求められることも起きうる。
そうなると近いうちにこの世界の常識を破壊するような・・・迅速に動ける乗り物が必要になる。
勿論早馬という手もあるが、僕は馬の扱い方なんて分からないし、時間があれば現実的にもなっただろうが、時間が切羽詰まっている可能性が高い今は現実的な手段とは言い難い。
そう思いながら僕はディーラーに今すぐ入りたい気持ちを必死に抑えて、飲み物屋に入った。
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