第6部 対魔物戦

1-6-1

ヒーレニカさんとの、大量ポーションの発注依頼がとりあえず済んでから僕は冒険者としての活動を開始した。


といってもしばらくはソロでの活動は控える形になる。

アビーさんたちと合流しゴブリンの討伐依頼を受ける。

といってもスライム・ゴブリン・ウルフ・そしてトレントあたりは探せば割とどこにでもいる魔物ゆえに常駐依頼となっていることが多い。


そのため討伐確認部位を持ってくればそれで討伐完了として報酬が認められることがほとんどだ。

スライムに関してはとても小さい魔石を買い取ってもらうことで報酬となる。

ゴブリンの場合は魔石だけでなくゴブリンの耳で討伐確認となる。

ウルフは魔石と毛皮が対象になる。討伐されたウルフの毛皮を洗えば手触りのいい衣服が作られるのだ。

トレントは普通の木よりも丈夫な分、貴族や一部の商人たちが求める傾向がある。


僕らはスライムに関しては既に余裕をもって討伐できるため、ゴブリンの討伐をメインにおいて活動することになる。

勿論、遭遇してしまい、同時に数が少ない場合はウルフやトレントも討伐する流れになる。


異世界のショッピングセンターというあまりにも特異なスキルがあったがゆえに、僕は商人として大した苦労もせずに資金を稼げているが、

一般的な商人や冒険者はこういうなんてことのない小さな依頼をこなして、資金を稼いで大きな依頼を受けて大成していくのだ。


アビー達のパーティーに僕が加入したことによっていくらかフォーメーションが変えられるようになった。

戦線に余裕があるときは自身である程度防御することを前提としたうえで、魔法使いのルーシーも攻撃に参加する。


一方で通常戦闘の際は盾を持つジャネットがルーシーの防御と側面から流れてきた敵の排除。

僕はミーアを守りながら反対側から流れてきた敵の排除。

アビーは双剣使いとして攻撃もできるし、片方の件で攻撃をいなすこともできる。

盾ほど優秀な防御ができるわけでは無いが、長刀一振りで防御すると攻撃ができないミーアとは違う。

防御が必要な時は片方の件で受け止めて片方の攻撃で攻撃する。

防御が必要ない状態であれば両方の剣をを使い攻撃を行う。


臨機応変な戦い方のできるマルチロールな役割と言えるだろう。


僕たちは森に入る。

同時に僕は考えていたことを彼女らに話す。


「みんな。わかっているとは思うけど油断しないようにね。

こないだの1件も踏まえるとやっぱりスタンピードが起きる可能性は極めて高いと思う。

魔物たちの餌がなくなって移住せざるを得ない状況になっているのか、

それともより強い魔物が奥で発生してそれから逃げてきた魔物が外に出始めてるのか。

原因がどちらなのかは分からないけど、少なくとも今まで割と安全だと思ってた地域も危険度としては1ランクか2ランク上がっている物だと思って行動したほうがいいと思う」


すると彼女らは驚いていたようだ。

「すごいねレンジは。確かに言われてみればそうだね。実際私たちはそれで死の直前までいきかけたわけだし。いつもと同じ感覚で森に入ってたよ」


その言葉をきっかけにしてか割と軽い表情をしていた彼女らの表情は、一気に引き締まったものになった。

油断もおそらくない、そしてポーションもあれから自分用のストックを追加で用意してある。

余程のことがない限り、今の状態で死にかけるようなことは無いだろう。


そして森を歩き始めて1時間ほどした所で奥から何かの鳴き声のようなものが聞こえた。

僕たちは全員が無言でうなずきあって、今まで以上に音を立てないようにしながら鳴き声のもとへと近づく。


そしてとうとう発見した。

いや・・・発見してしまったというべきだろう。

ゴブリンの巣だ。

集団の中には一回りか二回りほど大きな個体が存在している。


「あれは・・・ゴブリンキング。なんで街道から1時間くらいの場所に・・。」

ここは危険だ撤退しようかと考えたときに一つ閃いた。

『アレ』を使えばこの集団を殲滅できるかもしれない。


「皆、あとでスキルのことを説明するから今は詮索しないでくれると助かる。あの集団を倒す方法を閃いた。まずは一旦ここから距離を取って準備したいと思うんだけどいいかな?」


彼女らは驚いた様子を一瞬見せた後、静かに頷いてくれた。

そうして僕らは一度ゴブリンの巣から離れた。

そして僕が持っているスキルのことを簡潔に説明した。


「僕が持っているスキルは自分が今いる地点に、僕だけが使うことのできる露店のような空間を作り出すことができるんだ。普段の依頼で稼いだお金を使って商品をいつでも、どこでも・・・なのかは正直分からないけど、今のところ使えなかった場所はないよ。」

「驚きで何も言えないほどのスキルね。それが本当なら冒険者はもちろん商人だって欲しがるでしょうね。冒険者なら旅をする際に大きな荷物を運ばなくて済む。商人だってわざわざ重い荷物に馬車を引かせて運ぶ必要がなくなる。この世界の常識を覆すスキルだわ」


僕は黙ってうなずく。

「そう。だからこそこのスキルをほんのごく一部の人にしか明かさずにずっと秘密にしてきたんだ。だから皆にも秘密にしてもらえると助かる」


「わかったわ。普通に考えればそんなスキルを持っている人がいると言っても誰も信じないでしょうし、私たちはあなたに助けられた恩がある。その恩を仇で返したとなれば冒険者の名が廃るわ」


「ありがとう。それじゃあそこに行って急いで物を買ってくるから少し待っててね」



そう言って僕はショッピングセンターの中に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る