1-5-10

食事処について僕たちは、食事に飲み物、お酒を頼んだ。

今回は感謝の気持ちもあるとのことでアビーさんたちが支払ってくれるそうだ。


「それじゃあレンジとの出会いを祝してカンパーイ!」

「カンパーイ」×4


「そういえばちゃんとした自己紹介がまだだったね。

私はアビー、このパーティーのリーダーを務めてる双剣使いよ」

「私はミーア。見ての通り長刀を使ってるわ」

「ウチはジャネット、攻撃と防御両方の側面支援をする役よ」

「ボクはルーシー、魔法使いをやってる」


「僕はレンジ。さっきも言ったけど本業は商人をやってる。

ただ助けたい人たちがいて商人では助けられないから、冒険者を始めたんだ」

「そう。商人では助けられず、冒険者でないと助けられないということは武力が関連するのね?レンジが詳しく言わないということはそれ相応の理由があるのだろうけど、もし私たちで力になれるようであればいつでも言ってちょうだい。

可能な限りは手助けするから」


ありがたいことだ。やはりこの国で僕が出会っている人たちは皆暖かい。

彼ら彼女らとの出会いに感謝しながら歓迎会を楽しんだ。



宿に戻り一休みした。

彼女らはお酒を飲んでいたが、僕は飲まなかった。

明日も忙しく動くことになるし、そうでなくとも前の世界の価値観が残っている僕は未成年でお酒を飲む気になれなかった。

一応明日やることがあることと、お酒に弱いという最もらしい理由をつけて普通のジュースを飲ませてもらった。


明日はヒーレニカさんのところに行って大量の薬草類を預け始める頃合いだ。

それにあたって大量の薬草を購入しておく必要がある。

そう思いショッピングセンターに入る。

そしてあの明るい音が鳴り響き、僕は再び飲み物屋に入る権利を得られた。

今回はおそらく彼女らをポーションで助けたことが要因となっているだろう。


確かにその後にパーティーに入れてもらったりと僕にとってのメリットが他にもある。

だが、それは相手の足元をみた交渉ではなく対等の関係での交渉だ。

ゆえにマイナスの点が無かったのだろう。

そして同時に新しいスキルが解放された。

アイテムボックスの時間経過なしだ。


この知らせには非常にありがたい気持ちであった。

これから大量のポーションを作ってもらうにあたり、ヒーレニカさんには大量の薬草をおろさなくてはいけない。

しかし異世界のショッピングセンターは今のところ僕が信用してもいいと判断した人に対してだけ教えている状態だ。

つまり人目に付かないところで使う必要があり、同時にヒーレニカさんから薬草をおろす要請があった時に随時購入する必要があったのだ。


しかし時間経過なしのアイテムボックスがあれば購入した薬草が枯れたりする心配もしなくて済む。

そしてもう一つの心配をしているともしかしたらと思って商人の絆を鑑定してみる。

するとヒーレニカさんの名前があったのを確認した。

同時に時間経過なしのアイテムボックスも共有スキルの対象になっているようだ。


いきなりこちらの都合だけで登録しても困惑することになるだろう。

僕は考えてる数の必要数の薬草を購入し、自分専用の時間経過なしのアイテムボックスに入れることにした。

あとは明日ヒーレニカさんにこのスキルのことを話して彼女との共有アイテムボックス空間を作り出し、そこに薬草を卸せばいいだろう。


それにこのやり方なら彼女の方にもメリットがあるはずだ。

薬草をポーションにする際はその品質によって味が大きく変化する。

そこには当然薬草類の新鮮さも関係してくる。

ならば僕との取引だけでなく、同時にヒーレニカさん自身も時間経過なしのアイテムボックスを入手したことになり、依頼金さえあれば冒険者ギルドに依頼をだし、

いつでも薬草を確保しておくことができるようになる。


他にも必要なものがあり持ち運ぶのが困難なものを運搬可能にできるのだ。

もちろんアイテムボックスのスキル自体が希少だから、彼女自身が人目に気を付けながら使う必要はあるだろうが。


明日やることを決めて僕は眠りについた。



翌日、宿を出ると僕は商人ギルドへと向かった。

大量のポーションを作ってもらうにあたり、数に変化はあれどその手順は変えないほうがいい。

そのためギルドに仲介書を発行しに行くのだ。

仲介書を発行し終わり、いよいよヒーレニカさんに説明と依頼を掛けることになる。


彼女の店に向かい、店舗の中に入る。

「いらっしゃい。待ってたわ。

今日の依頼に合わせてそれまでの依頼は昨日のうちに急いで終わらせたわ。

加えてしばらくの間は依頼を受けられないことも周知してある。」


具体的な話に移る前に僕は彼女に特殊すぎる2つのスキルについて話した。

案の定、他の人と同様に目が点になりながら説明を聞いていた。

「なるほどね。あなたがびっくり箱だって言ってたギルド長の言葉にも納得だわ」


その言葉・・・何回目か最早覚えてない。解せぬ。


「それじゃあ依頼の確認ね。

レンジさんの依頼は初級ポーションと中級ポーションの作成。

初級は1000本、中級は200本。そのため依頼料は金貨3枚でいいわね?」

「はい。それでお願いします」と言いながら僕は金貨3枚を渡した。

「驚いたわね。確かにポーションを扱う以上大銀貨や小金貨を扱うことはたまにあったけど、まさか自分が金貨を扱うことになるとはね」

恐る恐る金貨を受け取っていた。


昨日の薬草購入代金と合わせて僕の資産はこれで3億強になった。

ポーション代恐るべし・・・


「一応聞いておくけど、上級ポーションは良いのかしら?

材料自体は問題なく手に入るのでしょう?」

と聞かれる。


僕は頷く。

「ええ、上級ポーションはとりあえず良いと考えています。

というのも上級ポーションは瀕死の重体から無傷の状態に戻すことができる薬です。

逆を言えば、命を繋げるためということであれば、瀕死の重体から中級ポーションでつなぐことはできると思います。

完全回復は無理でしょうけど」

「わかったわ。それで納得してるならそれでいいわ」


何か含みのありそうな言い方だ。誤解しないでもらうために一応言っておくことにする。

「一応申し上げておきますが、僕は自分の手の届く範囲であればできるかぎりのことはしようと思っています。

ですが、自分の首を完全に絞めてまで、誰かを助けるほどの聖人ではありません」


「・・・・確かにそれは無理難題ね。そんな義務は無ければ義理もないわね」




その後はギルドの仲介書を完成させて、商人の絆を使いアイテムボックスの共有者にヒーレニカさんを登録。

あらかじめ購入しておいた大量の薬草をそこに入れて作ってもらうことになった。

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