1-5-4

結局あの後の商談はいまいち覚えてない。

というのも辺境伯様との取引の桁が今までの比ではなかった。

国中にいくらスキルを使った入手とはいえど、一人の商人の力で国のすべてに行き渡らせるのは土台無理な話だ。


とはいえ備蓄と領内を主体に置いた形とはいえ辺境伯様とのやりとりは凄まじい金額になった。

本来であれば


庶民向けの塩 10トンで小金貨50枚

貴族向けの塩 1トンで小金貨100枚

グラニュー糖 1トンで小金貨300枚

上白糖    200kgで小金貨300枚

胡椒     200㎏で小金貨6枚


という形になった。

小金貨が100万円相当だから5億5600万円相当の売り上げになる。

ただ通常ならばの話だ。

そこまでの量を仕入れるだけの資産はまだ持っていないため建て替えをしてくれるという点と、辺境伯様を経由して売ることができるように3割引きを提案した。

実際の売り上げとして3億8920万円ということになるのだが、

そこは辺境伯様が少し譲ってくれて4億円ということになった。


流石に4億という金額は一般市場で使われることは無いはず。

なので大金貨4枚での支払いではなく、

大金貨3枚、金貨9枚、小金貨9枚、大銀貨5枚、銀貨50枚での支払いをお願いした。

やたら細かい分け方になってしまったが致し方ないだろう。


唯一上級ポーションを作るとなると、僕の方で原料を仕入れるにしても、原料代だけで36万円行ってしまう。

そこに依頼料100万円が追加されるわけだ。

したがってかりに10本作製依頼を掛けようとしただけで、金貨での支払いが基本になることぐらいだろう。


現状僕が持っているポーション初級ポーション20本と中級ポーション5本だ。

冒険者としても活動を開始するにあたって上級ポーションが必要になるレベル、

つまり瀕死の重体になんかはなりたくないし、そんな状況になっても逃げるだけだ。

しかし骨折程度の怪我なら見込むべきだろう。


とはいえそれにしたってできる限り避けようと考えている。

ならば切り傷を負うことを心配して初級ポーションの購入を考えたほうがいいだろう。

中級ポーションを保険程度に考えて、上級ポーションをしようするような状況であれば基本逃げる。

これを基本方針としよう。


とはいえ魔物の森がありスタンピードが考えられる以上は、それと同じくらいに大量のポーションがあったほうがいいだろう。

此方に関しては辺境伯様には内密に進めようと思う。

もし必要が生じて供給を求められればその時に必要代金を請求しようと思う。


そうなると元居た街にもどりヒーレニカさんに初級ポーションの大量発注を行い、

同時に冒険者登録を行い、手始めにスライムの討伐で地道にレベルを上げるしかないだろう。

今のところ傷を癒すポーションしか知らないが、MPの概念がある以上MP・・・というか魔力回復ポーションのようなものも存在するはずだ。

その辺に関しては材料を把握し、自分の手持ちで作れるようであればつくればいいだろう。


僕とエコラックさんは街へと戻った。


早馬に乗っての移動だったためさほど時間はかからなかった。

まあ再び吐き気や腰・お尻の痛みに耐えなくてはいけなかったが・・・

戻ってくると夜だったため、すぐに宿に戻ることにした。

1泊2日の強行軍だったため非常に疲れていた。


すでにヒーレニカさんの店は閉まっているだろうし、また明日でいいだろう。

加えてしばらくの間は領主様のほうでも仕入れが完了しているので急いで仕入れをしなくてはいけないということはない。

かりに可能性があるとすればデニスさんのところの乾燥昆布くらいなものだが、

それにしても僕のスキルを知っているエコラックさんに現物を大量に預けておいて、

一定期間おきに売り上げの回収を行えば大丈夫だろう。



翌日。

僕は冒険者ギルドに、辺境伯様から預かった紹介状をもって向かうことにする。

ギルドに到着するまでの時間で少し考える。

冒険者になるといっても、主に2つのタイプがいるはずだ。

魔法を使った中遠距離線を主眼に置いた冒険者と、

剣や槍などを使ったゼロ距離あるいは近距離を主眼に置いた冒険者とだ。

勿論両方を使うタイプもいるようだが、僕にできるだろうか?


最初にステータスを見たところ、MPの方が多かったはずだ。

冒険者としての出だしは魔法使いとしての戦い方を主眼に置いて、

保険として近距離向けの装備をしておけばいいだろう。


と考えている間に冒険者ギルドに到着したようだ。


冒険者ギルドに着くなりジロジロとみられる。

まあ今まで商人としてやってきており、基本ひ弱な体格の僕だ。

似合わないものが来れば視線を受けるのは当然のことだろうとあきらめる。


カウンターにつき担当してくれた職員の人に紹介状を渡す。

すると、どこかで見た光景の如く慌てて奥の方に行って誰かを呼びに行ったようだ。

そして5分くらいしてから、厳つく、隆起した筋肉。いかにも冒険者らしいといわんばかりの雰囲気をもった男性がやってきた。




彼の名はトレーン・メック。

この街で冒険者ギルドのマスターをしている人の名だ。

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