第5部 ファスペル辺境伯と明かされる真実
1-5-1
あの大失敗から6日間が経過した。
今日はギルドにいつもの品を卸したらファスペル辺境伯領の領都に向かうことになっている。
あのあとギルドマスターは早馬を出して手早く辺境伯との面会の手筈を整えてくれたらしい。
本当なら今日はポーションの受け取りもやって、卸を行った収益でポーションの依頼を再度かけたいと思っていた。
しかし辺境伯と会いたいと言い出したのは僕の方だ。
それに合わせて辺境伯も急いで予定を調整してくれたのだろう。
ここは誠意を見せるべきだ。
ギルドについて先にポーションを受け取るための証書を預かった。
手早くヒーレニカさんの店に行き証書とポーションを交換する。
その際に今週は予定が入っているので依頼が出せないことを伝えておく。
大口の依頼主が見つかったと思っていたのだろう。
少し残念な様子が見られた。
そのあと足早に商人ギルドへ向かう。
ギルドに到着し
調味料を一通り渡す。
昆布の売り上げは銀貨5枚と大したことはなかった。
しかし他の物の桁が違いすぎた。
トータルで小金貨3枚だ。
全てを銀貨で持とうとすればそれだけ邪魔になる。
しかし逆に金貨を持てば用途が限られてしまう。
そう思った僕は大銀貨20枚と銀貨105枚での受け取りを希望した。
受け取りが終わると商人ギルドの裏手に早馬が用意されていたらしく、
そこに通される。
いまから早馬を使って移動すれば夕方には領都に到着する予定とのことだ。
僕はエコラックさんが駆る早馬にのって領都を目指した。
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夕方に領都についた。
はっきり言って苦痛だった。
揺れがすごい。
腰やお尻は痛いし、酔ってしまった。
でも自分から言い出したことだそこは我慢しなくてはいけない。
今日はエコラックさんが用意した宿に泊まる形で、明日辺境伯にお目通りとのことだ。
初めての乗馬や一日中行動していたからか、宿について僕はすぐに眠ってしまった。
翌朝、宿で朝食を食べた僕は辺境伯の屋敷へ向かう。
勿論エコラックさんも一緒だ。
辺境伯の屋敷について、間抜けにも呆けてしまった。
仕方がないことだと思う。
僕はあくまでも一般的な家庭で生まれ育った身だ。
辺境伯の屋敷はすさまじく大きく前居た世界の学校の敷地くらいはありそうだった。
とても強そうな門番もしっかりといる。
屋敷に入ると執事と思われる人が、客間に通してくれた。
辺境伯を呼んでくるから少しまってほしいとのことだ。
さほど時間を置かずに辺境伯が部屋に入る。
この国の防衛の一翼を担うだけあってパッと見が厳ついひとに見える。
「私はレッサーモンド・フォン・ファスペル。デミウルゴス公国の辺境を治める領主だ」
「レンジ・ニシカドと申します」
「早速で悪いが君は安定して塩や胡椒を入手できると聞いた。
本来ならば希少な高品質の砂糖や、ポーションの材料となる薬草に関しても入手方法があるらしいな」
僕は頷いた。
辺境伯の要望を聞くとできる限り塩や胡椒、砂糖の仕入れを増やしてほしいとのことだった。
どうにも隣の辺境伯領でも高品質の砂糖や塩胡椒が安定して入手できるというのが噂になっているようだ。
ここで僕が個人的にやり取りを行うと、僕を囲おうとする貴族たちが一斉に動き出す可能性があるとのことだ。
公国というだけあり小規模な国家が集まってできた国だ。
一枚岩というわけでは無く、自分の利権を確保するためならば手段を選ばない貴族も存在しているとのことだった。
そうなると僕の身に危険が及ぶ可能性が高いとのことだ。
そこでファスペル辺境伯が一枚かむことで直接のやり取りを防止する役割を担う。
つまりこれが後ろ盾だ。
代わりに僕は辺境伯が求める品を今と変わらない形で一定期間入手し安定供給に努めてほしいとのことだ。
なんでも領内の物価が上がり始めており困っているそうだ。
また初耳であったがこの領の隣には魔物が多く棲みついている森が存在するそうだ。
戦争のリスクだけでなく、森から一斉に魔物が押し寄せるスタンピードの危険もあるとのことだ。
それに備えてポーションを大量に作ってほしいとのことだ。
今はとりあえず初級ポーションを大量に欲しいとのことだ。
余裕があれば中級ポーションや上級ポーションに関しても用意してほしいと。
この件に関してはエコラックさんが指揮するギルドと辺境伯の間で一定のやりとりがあったらしく、費用に関してはギルドが立て替えてくれるそうだ。
後日ギルドが辺境伯に実費を請求するという流れになっているらしい。
また僕に対しても辺境伯の方から納品する種類や数に応じ報奨金をだすとのこと。
あくまでもこちらが商人であることを理解してくれているようだ。
具体的な話に入ろうとしたときに僕は少し待ってもらうことにした
「少し待ってください。辺境伯様にお伝えしたいことがあります」
僕はこの世界の人の誰にも明かしたことのなかった秘密を打ち明けようと考えた。
不利になる可能性はある。
だがこの人たちなら信用してもいいのではないかとと思ったのだ。
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