1-4-8

さて今回の彼女との交渉はレシピの原材料を知りたいことだ。

薬師とはいえ彼女も商人の一人。情報は命だ。

である以上作り方のレシピは彼女の命ともいえる。

そこまで知ろうというわけでは無い。


しかし今現在の段階では初級ポーションしか材料が分からない状態だ。

できることなら中級ポーションやそのうち上級ポーションも入手しておきたい。

資金繰りに心配があるが、そこは貴族向けの塩や胡椒の入荷を増やせばいい。

それに加えて僕には砂糖を追加するという方法がある。


海からここまでが遠いぶん砂糖を仕入れることのできる土地を経由していてもおかしくはない。

砂糖は貴族向けでかなりの高値が付くだろう。

おそらく貴族向けに仕入れている塩とは比べ物にならないほどの価値が。


とはいえ上級ポーションを依頼するだけの資金があるわけじゃ無い。

まずは中級ポーションを依頼できるようにしておきたいところだが、

原材料が分からないのでは仕入れようもないし、何よりそれを秘密にするようでは

冒険者に対して依頼を出すこともできないだろう。


そうおもった僕は彼女に中級ポーションと上級ポーションの原材料を聞いてみた。

それによると

中級ポーションは、初級ポーションの材料であるオトギリソウを10株とユーカリ1株

上級ポーションは、オトギリソウ100株とユーカリ10株に加えてエゾウコギ1株

だそうだ。


なるほど、それほどの材料が必要になるのならば上級ポーションにすさまじい金額が付くだろうことは容易に想像ができる。


僕は明日、初級ポーション10本と中級ポーション5本の材料を持ってくることを伝えた。

伝えられた彼女は完全に目が点になっていた。


初級ポーションの手間賃は1本銀貨1枚だそうだが、

中級ポーションは1本銀貨10枚だ。

それにくわえて材料費を考えれば、なるほどとてつもない額になる。

オトギリソウは異世界店で1株銀貨3枚

ユーカリは1株銀貨5枚だ。

先ほどの注文と手間賃を含めれば僕でも銀貨80枚くらいの出費になる。


逆を言えば僕だからこそ、その程度で済ませられるともいえる。

これをこの世界でやれば普通に銀貨150枚くらいはいってしまうのだ。


なるほどこれを考えればやはり現在の仕入れ内容だけでは限界がある。

それを考えると塩胡椒の卸量を増やしつつ砂糖を解禁にするしかないだろう。


そう考えた僕は先ほど後にした商業ギルドへ足を向けようと思ったが、そろそろ昼ご飯の時間だ。

先に腹ごしらえしておいた方がいいだろう。



昼食を終えた僕は商業ギルドに向かいながら考える。

砂糖を解禁にするにしても現物があったほうがいいだろう。

塩にも品質があったように、砂糖にも品質があるはずだ。


僕は人目に付かない場所に移動してショッピングセンターを利用しようと考えたが

あくまでも人目に付かないだけだ。全く人の目が無いわけでは無い。

端から見れば何もない空間を人が出入りしているように見えるはずだ。

面倒には感じられるが宿へと一度戻ることにした。


宿に戻った僕はショッピングセンターに入る。

すると再びあの音と共に新しいエリアが解放された。


『飲み物屋』が解放されました。


飲み物屋?何それ?

気になった僕は仕入れよりも先にそちらの探検に向かうことにした。

売られていたのは言うまでもなくジュースなどの類だ。

しかし奥の方に行ってみると茶葉やコーヒー豆といったものも置かれている。


食料品店で売られていたのはあくまでも食べ物の材料や調味料系だ。

肉や野菜、魚といったものは売られていたが、お菓子やジュースの類は売られていなかった。

牛乳は売られていなかったが生クリームは売られていた。

牛乳は単体としても飲み物として成り立つが、生クリームは成り立たないと判断されたのだろう。


当然のことながら水も置いてあった。

水を買うのも馬鹿らしく感じる部分はあるが、この世界は上水道が完備されているわけでは無い。

生水を飲むのは危険が伴う。

蓋を開けずにアイテムボックスに入れておけば長期保存は可能だろう。

少なくとも1か月2か月で腐るものではない。


この街を一時的にせよ離れる際に旅をする必要があるわけだが、その時に購入すればいいだろう。

とりあえず、現段階でこの店を利用する意味はとくになさそうだった。


ここに来た本命の仕入れを行う。


食料品店で砂糖1kgを仕入れる。

こちらもおいおい塩や胡椒と同様増量を考えているが、今はこれくらいでいいだろう。

なにせ塩と胡椒であれだったのだ。

貴族などにしか手が出せない種類である砂糖は場合によってはマズイ金額がつく恐れがある。

その可能性がある以上初めから大量に仕入れるのは危険と判断した。

1㎏で大銅貨2枚、200円相当のものがどれだけ化けるのだろうか。

楽しみ半分恐れ半分といったところだ。


胡椒3kgで銀貨1枚

貴族向けの塩10kgで小銀貨5枚

庶民向けの塩200kgで銀貨4枚

乾燥昆布は増量しておいて10kgで銀貨3枚だ。


ポーションの材料を買っておくのも忘れない

オトギリソウは必要数60株で銀貨3枚

ユーカリは必要数5株で銀貨2枚と小銀貨5枚だ。


トータル仕入れ値は銀貨14枚だ。

これに加えて手間賃60万円

すさまじい金額だな。

やはり砂糖に期待したいところだ。


仕入れを終えた僕は再度商人ギルドに向かう。

前回納品が終わった次の日に相談しに行った経緯があるからだろうか。

僕が再び戻ってきたのを見て担当職員の女性はすぐにどこかに走っていった。

なんか申し訳なくなる。



そして僕はすぐに個室に案内された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る