1-4-7
あれから6日が経った。
いつもの如く1回の朝食代と、1週間分の宿泊料として銀貨2枚、小銀貨4枚、大銅貨5枚を払った。
最近は夜に洗濯をしている。
というのも前の世界の洗剤はどう考えてもオーバースペックだ。
そう考えると日中の間に洗濯する気にはなれなかったのだ。
まるで泥棒にでもなったような気分だ。
休んでいる6日間の間で、胡椒600gと貴族向けの塩2kg、庶民向けの塩200kgを仕入れた。
宿代と合わせるとこの一週間で6万円近く使った計算になる。
また乾燥昆布も入荷しておく。
時間経過ありのアイテムボックスとはいえ、そう簡単に腐ったりするものでもない。
特に水気が変わらないのであれば長期保存は可能だ。
僕としてはこれにも計画がある。
宿の食事は何度も言ったがあくまでも普通の物だ。
なので失礼かもしれないが、この話が断られるようなことがあれば
儲けが出ないことは承知の上で個人的に楽しもうと考えているのだ。
納品希望があれば、そこに儲けを見込めるだろうし、
納品希望が無くても自分だけで楽しめばいい。
仮に自分だけで楽しむ形になったとしても世の中に対する貢献度の影響は無いはずだ。
なんせこちらは提案自体はしているのだから。
そういった諸々のことを考えながら購入した。
自分で別の袋に移し替えればいいわけだし、
購入したのは1㎏で小銀貨3枚の商品だ。
とはいえ現段階では一人で楽しむ可能性も残っているので10kgとかすさまじい量を入荷するつもりはない。
だが自分の動きを阻害しない程度の量は納品できるようにしておきたい。
それに他にも方法がある。
昆布は水に戻すことによって出汁が取れるだけでなく食べ物としての量も増える。
それだけ腹持ちが良くなるのだ。
これなら固い干し肉しかなく大して栄養補給のできなかった冒険者からも一定の需要は見込めるだろう。
そのことも相談しようとは考えていた。
まずは5㎏ほど入荷し様子を見る。
初回から5kg全てを納品してほしいというなら、ギルドマスターには相談だけ。
1kg程度を欲するのであれば相談しつつ冒険者ギルドへの試供品提供をして
広めていければいいと考えた次第だ。
10㎏で銀貨3枚。3万円相当に該当する。
先ほどのと合わせて9万円相当。
かなりの出費だな。
卸し値は1kg小銀貨5枚で考えている。
一番利益率が少ない商品だ。
しかし今までにない概念だ。向こうのリスクも考えて最低限の利益ととらえてもらえるようにしよう。
まぁこの後それ以上の金額が手に入るはずなんだが・・・
ギルドに到着するなり個室に案内された。
言うまでもなくアイテムボックスを使っているところを見られるわけにはいかないからだ。
もちろん周りの目に対するカモフラージュとして大きなリュックも服を詰め込んでパンパンに見せかけている。
話の2つは一切滞りなく進んだ。
まず調味料だ。
あわせて銀貨140枚での引き取りだ。
最小枚数としては小金貨1枚、大銀貨4枚での受け取りになる。
そのため小金貨で支払うか聞かれたが、基本的に今の僕の生活レベルだけで考えてみると基本的に万単位での支払いが多く感じる。
唯一支払額が大きいのがこの後、取りに行く予定のポーションの依頼料だ。
こちらは安くて1万円だ。
中級ポーションにもなればおそらく10倍。
上級ポーションはその10倍はするだろう。
市場価格で見てみても3万、30万、300万というのは妥当だと思える。
それだけの品を扱うとなると売れなかった場合などの損失は大きいものだ。
当然のことながら1個あたりにかける利益は大きくせざるを得ないだろう。
一般人からすれば大けがと言える切り傷等を3万で癒すことができ、
骨折などの重傷を30万で瞬時に直し、
瀕死の重体から300万で回復することができるのだ。
それを考えれば安いものだとも思える。
例えば日本で交通事故にあい瀕死の重体になったとしよう。
300万円支払えば家族の命をほぼ確実に助けることができるのだ。
そうなったときにどうする?
おそらく大半の人はそれで助かるなら・・・と考えるだろう。
大工当たりなら骨折程度が考えられることだし30万くらいは支払うだろう。
しかし冒険者からすれば300万で自分の命を繋ぐことができるのだ。
冒険者として大成したいという願望があったとしても、それも命あればこその話だ。
死んでしまっては元も子もない。
そんなことを考えながら僕は全て銀貨での取引を依頼した。
金貨で受け取るとポーション作成依頼には便利かもしれないが、他の場面でなかなかに使いにくい部分がでる。
100万円相当のお金をポンと出せるだろうか?
無理だよね・・・と考えながら。
ポーションを引き取るための証書・・・つまり仲介書も受け取った。
これで今の僕の財産は160万円ほどだ。
残る問題は、試供品として提供した乾燥昆布だ。
飲食店の反応が気になるところであるがどうだろうか?
すると担当職員が席を離れてどこかに行った。
どうやらギルドであてにした飲食店の経営者を呼びに行ったようだ。
3分くらいして担当職員のほかに男性が部屋に入ってくる。
「デニス」という男性らしい
「飲食店を営んでるデニスです。今日はよろしくお願いします。」
と言ってくる。
すかさず僕も挨拶をする。
ギルドマスターによれば乾燥昆布を使った出汁を汁物に入れて作ってみたところ、
デニス本人や店員からも好評だったそうだ。
試しでメニュー開発の一環としてよく来る常連に試験的にやっているメニューを
食べてもらったところこちらも好評。
それらを鑑みて値段次第では乾燥昆布を納品したいと考えていたそうだ。
僕は考えていた値段を提示する。
最初は5000円相当を高いと感じていたようだが、こちらの仕入れでも小銀貨を使っていることを伝えると少し納得してもらえた。
また1杯あたりで考えれば5円程度上乗せされるぐらいの量であることに気づいたらしい。
客からも少し値上がりしていいから出汁入りの汁物が欲しいとのオーダーがあるそうだ。
納得してくれたところで今回の納品量の相談だ。
今回僕が用意できているのは5kgまでだということを説明すると。
かなりの人気らしく5kg全てを購入したいとのことだ。
5kg全てを卸すことになり銀貨2枚と小銀貨5枚が手に入った。
尤も経費として銀貨1枚と小銀貨5枚がかかっているので利益率は最低と言っていいだろう。
今日の取引はそういった形で終了した。
始めたばかりにしてはまずまずの成果だろう。
おおむね満足した表情で僕はポーション受け取りの為にヒーレニカさんのもとへ向かった。
店に入り彼女に確認すると、問題なくできているそうだ。
それに全て高品質品だそうだ。
流石はギルド御用達しの薬師。
そう思っていると今回の薬草は鮮度が良く、
普段であればちょっと苦みのある普通品質のものが2~3本はできるだろうと思っていたら、
全てが高品質になったらしい。
異世界のショッピングセンター様様だな。
ヒーレニカさんからは、僕のところで薬草の仕入れができないのか打診が来た。
それ自体はできなくはない。
しかしそれでは間接的にポーションを僕が卸しているのと何ら変わらない状態だ。
品質が落ちればその分価格を下げて販売するしかない彼女にとっては僕はまさに金のなる木なのだろう。
しかし冒険者たちの仕事を少し奪ってしまう可能性があることから、その理由をやんわりと話し、断らせてもらった。
若干落胆した様子があったものの、理由に納得したのか引き下がってくれた。
僕は持ってきた証書に受け取りのサインをして彼女に渡す。
同時に僕はこのポーションを受け取る。
あとは彼女が一度ギルドにこの証書を提出し、ギルドの方で記録をつければ今回の取引は完了だ。
しかし今回はこれで終わらせるつもりはなかった。
さぁここから彼女との交渉の時間だ。
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