1-4-6
僕はエコラックさんに考えを伝えた。
今のところは塩を安定供給させることは、経済安定させる一手にしかなっていないこと。
外食産業が盛んになれば、それだけでも経済が潤うこと。
そのうえで原価が安くなり品質が向上すれば購入意欲が上昇し金のめぐりが良くなることを伝えた。
「そうか。そこまで考えてくれていたか。
それなら分かった。大変な仕事にはなるが俺も元は第一線で商人をやってた男だ。
しっかりとオーダーをこなして見せるぜ」
「ありがとうございます」
そう言って僕らは再び握手を交わした。
その後は昆布の試供品を渡したのちに、ギルドからの紹介状と仲介書の原本を受け取り薬師さんを紹介してもらうのだった。
そしてその薬師さんの店に到着する。
名前はヒーレニカさんというのだそうだ。
ドアを開けて店に入る。
薬師さんのイメージのように優しそうな人だ。
「いらっしゃいませ。何か御用でしょうか?」
僕はギルドの紹介状を渡して見せる。
しばらくその内容をしっかりと読んでいた彼女はそれを見て口を開く。
「お話は承りました。初級ポーションを作ればいいのですね?
薬草を依頼者さんで用意していただけるとのことなので手間賃だけいただこうと思います」
「お願いします」と返す。
その後詳しく話し合った結果、渡した薬草は全てポーションにしてもうことになった。
手間賃は1本につき銀貨1枚だ。
薬屋での販売価格は銀貨3枚とのこと。
当然薬屋の値段には、薬屋の儲け、薬草の値段、薬師さんの手間賃が含まれてる。
おおむね各所で銀貨1枚の金額がかかっているとのことだ。
一見すると1万円相当は高いように思える。
しかしちょっとした傷であれば薬草だけを買い、そのしぼり汁で直すのが一般的だそうだ。
その点ポーションは大工さんや冒険者といった危険度の高い職業の人のみが使うことが想定された商品だ。
一般市民が使うことは稀と言っていい。
需要が低ければそれだけ生産コストを上げざるを得ない。
薬師さんにも薬屋さんにもそれぞれの生活があるのだ。
これは仕方がないだろう。
僕はあらかじめ購入しておいたオトギリソウを10株と手間賃として銀貨10枚を渡した。
この時に使ったのはリュックの方だ。
まだ出会ったばかりだ。
一見すると優しそうな人に見えるけれどそれだけで信用するのは危険だ。
信用できそうな人だったら今後はアイテムボックスの存在も明かそう。
ギルドの仲介書にお互いの条件を記入し、サインをする。
その原本をギルドに預けることによって、何かトラブルがあった場合に証書として機能するようになるのだそうだ。
彼女によれば明後日にはできるだろうとのことだ。
しかし2日後もこの街に滞在していることが表向きになれば、塩や胡椒の入手経路を疑われることになる。
そう考えた僕は6日後に取りに来ると伝えた。
証書は今は僕が預かりすぐにギルドに預けるため届けに行った。
ポーションの現物を入手していない以上、お金を預けた状態に近い。
これで証書替わりまで渡してしまっては、最悪の場合『証書なんてもらってない』と言い張りお金を持ち逃げするのを防ぐためだ。
逆に受け取りの際は証書を彼女が一度ギルドに提出したのちに、彼女の方で保管することになる。
現物を渡したのに、『渡されてない』と言い張り返金を要求されないようにするためだ。
僕は今日の仕事は終わったとばかりに宿に戻り休むことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます