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え・・・

僕は何を言われたのか全く分からなかった。

そりゃそうだろう?

こっちの世界の都合で平穏な日常から切り離され、見ず知らずの土地で誰にも頼れない状況でいきなり「出ていけ」と言われたのだから。

確かにこの世界で生きていく決意は少しでき始めている。

だけどそれは自立する力を確保してからの話だ。

気持ちは固まっていても僕は所詮高校1年生なのだ。


「いくらなんでも、あんまりではないですか?」

と返すと後ろにいた兵士たちが


「無礼だぞ!」

「この場で打ち首にされたいのか!?」

と憤慨していた。


恐怖に打ちのめされそうになりながらも反論しようとすると

「静まりなさい」と静かに王女が諫める。


「酷いことを申し上げているのは理解しています。

しかし此方も国であり無尽蔵にお金があるわけではありません。

国民が頑張り収めた税金をあなた方に食事などの形で与えるのは、あなた方が魔王討伐に向けて必要な方である可能性が高いからです。

ですがあなたは能力が見えず可能性も見いだせない。

失礼ですがそんな貴方に国民の税金を使う余力はありません」

と返されてしまう。


理不尽だと心の中は荒れ狂っていたが、頭の中では理解できていた。

この人たちにとってみれば魔王討伐に必要な人だからこそ先行投資として僕らにお金をかけるのだ。

可能性が見いだせない人物にお金を与え続けるのは困難だろう・・・と。

しかし前の世界のお金だってお小遣い程度の金額しか持っていないし、何よりもそのお金だってこの世界で使えるとは思えない。

後ろに控えている兵士たちも怖いがこのまま無一文で放り出されるわけにはいかない僕は怯えながらも頼むことにした。


「ならばせめて当面の生活費だけでもいただけませんか?

ずっとお世話になるのは遠慮いたします。ですが私はこの世界に呼ばれたばかりでこの世界のお金だって全くもっていないのですから」

と頼むと案の定後ろに控える兵士たちが怒り出す様子が見られた。

中にはすでに剣の柄に手をかけている者すらいる。


長い溜息の後に

「わかりました。当面の生活費として銀貨20枚をお渡しします。

受け取ったらすぐに出て行ってください。

さもなくば・・・」

と言いながら兵士を鋭い目で見る様子を見せてくる。


幼馴染に挨拶をする時間とかほしいし、すぐになんて・・・と怒り出したいところであったが、下手に要求し続ければ後ろの兵士たちに殺されてしまうだろう。

ましてこの時点ですでに僕はこの王女を信じられなくなっていた。

この王女はあの召喚された空間にいた王女と同一人物とは思えなかったのだ。

それくらいにまで人格が変わっていた。



そうして僕は幼馴染たちに挨拶する時間ももらえず、兵士たちに付き添われ・・・いや監視されるようにして王都の門をくぐった。

そして1時間ほど歩いたのちに、どこかに通じるであろう分かれ道のところで兵士から

「ここまでは付き添ってやった。あとはどこへでも行けよ。ああ、ただし王都には戻ってくるなよ?戻ってくれば・・・・・わかるよな?」

と剣の柄に手を掛けた。

僕は必死に頷いた。



そうして僕はどうすればいいのかもわからないまま文字通り本当の意味でひとりぼっちになってしまったのだ。

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