酷い
酷いが抜けないまましばらく経つ。
酷いは、希望なんて感じられなくて、ベッドの上から動くことが出来ずにいた。それでも勉強はしないと、定期テストが来ちゃうから、ベッドの上で勉強していた。お風呂入らないの?母の声がする。まだ入らない。お風呂入らないの?母の声がする。そのうち入る。だって、辛いんだもん。酷いは辛いなんて感情持つことが既に罪。それでも、辛いんだもん。心臓を素手でぐがって掴まれて、揺さぶられてるような嫌な感じ。いつもよりちょっと重い体が、いつもよりちょっと思い体以外の何かが、酷いの全ての動きを抑制して、それでも酷いは頭だけ、面白いぐらい後ろ向きに下向きに走ってく。
父からLINEが来た。『母がお風呂入らないの?って聞くのはね、早く家事を終わらせてゆっくりしたいからなんだよ。協力してあげて。』
わかってる。
母を楽にするために私が苦しくならなきゃいけない、それが当たり前なのはわかっってる。
でも。
酷いのテスト前に平気で爆音でドラマを観る人が。
酷いの忙しい時に酷いが皆で観るのを楽しみにしてたアニメを観始める人が。
協力してあげて。
何も言わなくても全てを察して動いてくれる夫がいて、母は幸せだ。
ただ、母と父が、子供に恵まれなかっただけ。
酷い子供のことは、察しなかっただけ。
酷いが積み上げた辛い辛い辛い辛いを、気づいて欲しかった辛い辛い辛い辛いを、察してくれなかっただけ。
いい夫婦だね。でもいい親子じゃない。
それだけ。だって酷いが酷いのが全部いけないんだもん。
酷いは部屋に籠ってまた笑いました。
酷い酷い酷い酷い。
酷い酷い酷い酷い。
今日も誰にも心配かけないように、
静かに静かに、部屋の隅で静かに。
酷い酷い酷い酷い。
酷いは私の一人称だ。
最初に書いておけばよかったね。
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