第29話新たな星約の絆


そろそろ戻って会議を再開しよう、そう思い口を開こうとした時だった。遠慮がちに、ディランが喋り始めたのは。



「・・・ところでトモリ、フードはいいの?」



『え?』



フード、だと?私はディランの言葉を聞き、手を頭に当てた。そこにフードの感触はない。・・・・・・あれ?



・・・もしかして、さっき廊下を通った時見られてたのは・・・騎士や貴族が顔を赤くしていたのは・・・まさか、



『・・・っ!!』



私は素早くフードを被った。どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・っ、目が合った?誰と?誰と合った?



あれ、待って、後ろにいる騎士・・・右にいる騎士とは目が合った気がする・・・やばい、やばい・・・っ、



「どうして隠すの?綺麗な顔なのに。」



『・・・おいディラン、さっき私と目、合ったか?』



「え?うん、合ったけど・・・。」



合った?確かに合った気がする、やばいどうしよう、頭が混乱してどうしていいか分からない・・・。



とりあえず、”話し合い”をするべく騎士2人を部屋の中に入れ、《恒星》で作り出した大きな壁で入口を塞いだ。



いきなりの急展開に3人は着いていけないのか暫くポカーンとしていたが、我に返ったディランが私に問い掛けた。



「ちょ、これなに!?どういうこと?」



騎士2人もいるというのに素の喋り方だということは、相当焦っているか、驚いているんだろう。それもそうだ、私がいきなり奇行を始めたのだから。



『今から大事な話をするぞ。』



「え、あ、うん?」



『いいか、そこの騎士2人もよく聞けよ。──────お前ら、私のこと好きになれ。』



私は究極の命令を3人に与えた。目が合ってない方の騎士?この際一蓮托生だ。



「・・・えぇっと、何それどういうこと?」



『話せば長くなるんだが・・・。』



私は3人に話した。色欲のこと、その能力の説明、そして私を好きになれば呪いが解けること。3人は話すにつれて顔色が悪くなり、色欲の名前を聞いた時には殺到しそうになっていた。



「つまり、え、し、色欲なの?トモリが?あの、物語の中で悪役の色欲が?」



『悪役なのか・・・。だから私のことを好きになって欲しい。頼む。好きになったら後はもうどうでもいいから。』



「それはそれでどうなの・・・。」



ディランは呆れたように言った。確かに無責任であるけど、好きになられたって私は気持ちに答えることは出来ないしな・・・。



だからこれは仕方の無いこと、そう、そうだ。と自分に言い聞かせていると、目が合ってない方の騎士が遠慮がちに手を挙げた。



「・・・あの、目が合ったら効果が出るなら、自分は関係ないのでは?」



こいつまさか逃げる気か?事情を知った奴を私がみすみす逃がすと思ってるのか?うん?



「ま、ちょ、お前逃げる気か!?頼む1人にしないでくれ!!」



『おいこらお前。そりゃどういう意味だ?』



「い、イエ・・・ナンデモアリマセン。」



全く・・・私から逃げようなんて1000年早いんだよ。



ムスッとして目が合った方の騎士を睨むと、そいつはヒィッ!と情けない声を出した。思わず呆れた目で見ていると、目が合ってない方の騎士も呆れた目で彼を見ていることが分かった。うん、なんとなく力関係が分かったよ・・・。



それにしてもディラン、なんか静かだな?そう思ってディランの方を見ると、ディランはじっ、と私を見つめていた。騎士1(目が合った方)と騎士2(目が合ってない方)もそれに気付いたのか、怪訝そうにディランと私を見比べ出した。



なんだか不思議な沈黙が数秒の間訪れた。しかしそれをぶち壊したのは沈黙を作り出した本人であるディランだった。



「──────僕、トモリのこと好きだよ?」



「「『・・・えっ?』」」



私と騎士二人の声が重なった。それはもう見事に。だけどそんなこと気にならないくらいにディランの言葉は私達に激震を走らせた。



とんでもない爆弾をなんでもない事のようにぶっこんできたなディラン・・・。というか好きってそういうあれなの?家族的なあれじゃなくて?



「・・・王よ、それは恋情とは別物の好意では・・・?」



「そ、そうですよ!色欲なんだから恋情以外はダメなんじゃ・・・。」



『あぁ、多分そうだ。私の父親は、私をとても大事にしてくれていた。だが目が合ったらあっけなく死んでしまったからな。』



父さんの話をなんでもない事のように話せば、今度はマジかこいつみたいな目で騎士2人に見られた。お前らマジでいつか殴るからな。



「・・・言っておくけど、僕本当に好きだから。それから・・・僕にならまだしも、この2人には無理強いはしない方がいいよ。恋人や家族がいるかもしれないし。」



・・・それは確かに、一理あるな。でも私を好きにならないと死ぬんだから、恋人や家族のことは諦めるか・・・浮気を選ぶしかないな。



ひとまず聞いてみようと思い、騎士2人に視線を向けた。2人は顔を見合せた後、困ったような、なんとも言えない顔で答えた。が、騎士2に関しては終始無表情である。



「私はそんな相手いないですけど・・・でもそうですね、確かに少し戸惑います・・・。」



「私もいません。あれ、というか私好きになる必要ないですよね・・・?」



『ならこうしよう。』



「無視ですか・・・。」



だから、一蓮托生だってば。可哀想だとは思うが、運がなかったと思って諦めてくれ。



『私と星約を結ばないか?』



「星約?ってなに?」



なに、と聞かれると困るんだが・・・。まぁ、敢えて言うとしたら、



『それを結べば私への忠誠を糧にして強さが手に入る。あとは、色欲の呪いの侵攻が遅まる可能性がある。』



「やります!」



「おい・・・。」



ふむ、騎士1は強さが欲しいのか?なるほど理解した。騎士2も強さには多少興味はあるとみた。



「僕はなんでもいいよ。トモリに従う。」



「私もやります!やらせてください!」



「はぁ・・・私もやります。こうなったらヤケです。」



3人は覚悟を決めた顔で答えた。うん、そんな顔されるとこっちが恥ずかしいんだけどな・・・。まぁ、いいか。



『よろしい。ならば早速始めるぞ。』



星約はどんなのがいいかな・・・やはりここは十二星座か・・・二十八宿でもいいな・・・。よし、ディランは十二星座、騎士2人は二十八宿にしよう。



『────── 星に導かれし者よ、我より十二星座星約(オリュンポス)の名を受け取り給え。されば汝、我が至高の恩恵を賜るだろう。虚を見つめ、深淵を覗け、汝の星名は蠍座(スコーピオ)なり。永遠の生を我と共に生き、永遠の忠誠を誓い給え。星約に応じよ、汝の名はディラン・セシル・フィッツウィリアム・ヴァイスなり。』



私が星の呪文を唱え始めると、ディランの足元に金色の魔法陣が浮かび上がった。



それは声を重ねる度に色を増し、輝きを放った。窓が開いていないにも関わらずビュービューと風が吹き、被っていたフードを乱雑に払った。抑えられていた髪が自由を取り戻したように踊り出す。ふわり、空を舞った。



「っ、!!」



「なっ、なにこれ、なにこれ!?」



「これは・・・、」



3人の声が耳に入る。しかし無理矢理にそれを払い除ける。集中しなきゃ出来ない。集中しなきゃ、魔法陣が完成しない。



──────星を繋ぎ、星を結べ、星約を刻み込め。



「・・・!こ、れは・・・!!」



どうやら成功したみたいだ。ディランが異変に気付いたように、自身の手を見つめた。



・・・さて、少し効果を試してみるか。



『ディラン、実は私・・・元々は貴族だったんだ。』



「はえ、ど、どうしたんですいきなり?」



「なにかの冗談ですか・・・?」



『おいこら。』



騎士2は私に対して辛辣じゃないか?あとで嫌がらせしてやる。



・・・まぁ、騎士2人のことはどうでもいいんだ。私が効果を試したいのは・・・、



「─────それ、嘘だよね?」



「えっ、そ、そうなんですか!?」



「寧ろ信じたのかお前・・・。」



騎士1は絶対に馬鹿だな。断言出来る。騎士2は毒舌だ。これも間違いない。



『・・・何故、そう思った?』



一応聞いてみると、ディランは説明しづらそうにしながらも、ポツポツと訳を話し始めた。



「なんか、こう・・・耳鳴り?もや?よく分からないけど、感覚的に・・・絶対嘘だって、分かったというか・・・。」



『ふむ・・・どうやらしっかりと機能しているようだな。』



「ってことは・・・まさか、これが・・・。」



『そうだ、それが私の《星約》の効果。その能力は十二星座の1つ、蠍座(スコーピオ)の権能だ。嘘を見破り、真実を見通す能力だ。この能力には発動条件があって、それは相手が嘘をつくこと。相手が嘘をついたら、ディランはその嘘に対する真実を知ることが出来る。まぁ、その嘘が意味の無い嘘だったなら、何も分からないとは思うが。』



王になるならこういう能力があった方が便利だと思ったんだが・・・やはり戦闘系の能力の方が良かったか?



『あ、一応言っておくが、身体能力は向上されてるから安心して「─────ありがとう、トモリ!!」うえっ、』



付属能力について説明してたら、何故かディランがお礼を言いながら抱きついてきたんだけど。そんなにこの能力が嬉しいのか?



「・・・僕、すっごい嬉しい・・・!初めて・・・初めて家族から、贈り物を貰った・・・!」



そう言ったディランの目には、涙が浮かんでいた。しかしそんな涙も覆い尽くすくらいに嬉しそうな笑顔で笑っていた。まるで太陽のようだとふと思った。



『・・・喜んでくれたみたいで、良かったよ。』



「うん!ありがとうトモリ!!」



未だにぎゅうっと抱きついてくるディランの頭を撫でる。でもそろそろ次に行かないと・・・。そう思った私はやんわりとディランを引き離し、騎士1の方へ向かった。



「うぇ、つ、次は私ですか!?」



『あぁ。名前をフルネームで言ってくれ。あと、私に忠誠を誓え。』



騎士1はそう言うと、ハッとした顔になり、慣れた動作で跪いた。忘れそうになるが、こいつは列記とした騎士なんだよなぁ・・・。



「カルミア・ラティフォリア、22歳です!現在三等騎士です!よろしくお願いします!!」



カルミア・ラティフォリア・・・ね。22ってことは私の4歳上か。・・・んじゃあ、さっさと始めますか。



『────── 星に導かれし者よ、我より朱雀(スザク)の名を受け取り給え。されば汝、我が至高の恩恵を賜るだろう。火を灯し、命を燃やせ、汝の星名は星宿(ホトオリボシ)なり。永遠の生を我と共に生き、永遠の忠誠を誓い給え。星約に応じよ、汝の名はカルミア・ラティフォリアなり。』



またしても金色が輝き出す。それは徐々に輝きを増し、やがて魔法陣が消え失せた。成功したのを肌で感じ取り、ふぅ、と息を吐く。騎士2の星約に入る前に・・・戸惑ってる騎士1に能力の説明をするか。



『今のは簡単に言えば新たな属性を付与する魔法だ。・・・ところでカルミア、お前の属性は?』



「は、はい!水属性です!!」



『水か・・・。今付与したのは火属性なのだが、扱えそう「火属性!!?」あ、あぁ・・・どうした?』



まさか火属性嫌い?でも今更変えられないしな・・・。我慢してもらうしか・・・。



「俺、ずっと火属性が欲しくて・・・!!ほんとありがとう!!・・・あっ!あ、ありがとうございます!!」



まさか敬語を忘れるほど嬉しがるとは。そんなに人気なのか?火属性は。



「・・・こいつ、ずっと火属性に憧れてたんです。でも発現したのは水魔法で、2、3日寝込むくらいショックを受けてたので。だから、

凄く嬉しいんだと思います。」



興奮しすぎて上手く喋れそうにないカルミアに代わり、騎士2が説明を加えてくれた。



まさかそんなに火属性が大好きだとは思わなかったが、嬉しい誤算だな。



『・・・まぁ、その・・・良かったな。』



「へっ、あ、はい!!ほんとありがとうございます!!」



?何故顔を赤らめるんだ。フードは被って・・・あ、取れてる。・・・まぁ、私の美貌に見惚れるのは仕方ないし、見なかったことにしてやろう。



「・・・では、最後は私ですね。」



騎士2は落ち着き払った声でそう言った。・・・巻き込んどいてなんだけど、こいつ本当に良かったのか?正直後からやっぱ嫌とか言われてもどうにもならないぞ?



『・・・本当にいいのか?というかお前、私に忠誠を誓えるのか?私を、好きになれるのか?』



はっきりとそう聞くと、騎士2は少し考える素振りを見せた。しかしそれは一瞬のことで、数秒後には無表情のまま頷いていた。



「はい。これでいいんです。忠誠を誓うのも、騎士なのだから当然出来ます。好きになるのは、正直自信はありませんが・・・頑張ります。何よりも・・・親友を1人には出来ません。だから私は、ここにいるんです。」



「お前・・・!そこまで俺の事・・・!!」



「まだお前に貸した本返して貰ってないしな。」



「おい!台無しじゃんか!!」



ギャーギャーと言い合う・・・というかカルミアが一方的に騒いでいるのをチラリと見遣る。きっと騎士2のさっきの言葉は本気なのだろう。だって目に光が宿っていたから。それだけカルミアのことが大事で・・・大切だから、私みたいな怪しいヤツから守りたい・・・まぁ、そんなもんだろうな。理由は。



でもそれでいい。寧ろカルミアはもっと私のことを疑うべきだ。例えその純粋さがカルミアの良さなのだとしても。



だから、騎士2くらいは私を疑って貰わないと。そして、私がなにか変なことをしたら、真っ先に切って欲しい。その役目を、騎士2には担って欲しいのだ。



『・・・なら、フルネームを教えてくれ。それと、欲しいスキルや魔法はあるか?』



「エノテラ・テトラプテラです。歳は22。・・・強いて言うなら、隠密系の能力でしょうか。情報収集なんかの裏の作業の方が得意なので。」



なるほど。確かにそれっぽい雰囲気ではある。それにしても・・・隠密系か。ならば、



『────── 星に導かれし者よ、我より準惑星星約(ドワーフプラネット)の名を受け取り給え。されば汝、我が至高の恩恵を賜るだろう。影を歩み、闇を狩れ、汝の星名は冥王星(プルート)なり。永遠の生を我と共に生き、永遠の忠誠を誓い給え。星約に応じよ、汝の名はエノテラ・テトラプテラなり。』



金色の魔法陣が浮かび上がる、それはエノテラを包み込み、暫くすると徐々に消えていった。



エノテラは付与された能力を自覚したらしかった。どうやら能力の説明をする必要はないようだ。



「ど、どうした?」



「・・・こんな魔法、見たことがない。・・・まさか、あなたは・・・、」



『・・・私が、なんだ?』



「・・・、いえ。ただ、一つだけ忠告を。その星約という能力、下手を打てばこの世の脅威となりうる能力です。あまり人前で晒さない方がいいかと。」



それはそうだろうな。なんせ私でも偶に驚く。この能力については、持て余してるのが現状だし。



『肝に銘じよう。・・・じゃあそろそろ会議の続きをしようか。君達も来るといい。』



「あ、はい!!」



「わかりました。」



2人は返事をして私達の後に続いた。私はディランの少し後ろを、2人は私の後ろを歩く。



他の人もいるため下手なことを喋れない空間に辟易する。流石に退屈を催してふと窓の外を見た。



外は既に常闇に支配されており、街灯のみがアスファルトを照らしていた。その明かりすらも薄ぼんやりとしており、人1人を照らせるほどの強さは無い。



街灯を増やして明るさを強くしないとな、なんて考えて、ふと我に返った。まるでこの国の偉い人にでもなったような考え方だと思った。しかしまぁ、英雄と言う意味ではある意味高い地位にいるのだろうけど。



でもずっとこの国に留まるつもりなど欠片もないのだから、この国の人にはもっと頑張ってもらわないと。



『(・・・それにしても暗いな。こんな暗かったら人に襲われても気付かないんじゃ・・・。)』



後でこの国の犯罪について調べてみようと心に決め、ようやく視線を前に戻そうとした刹那。



街灯近くを通ったフードを被った男に、視線が釘付けになった。その男は暗い場所でもまるで見えてるように迷いなく歩いていた。その姿が、何故か見覚えがあって、思わず足が止まってしまった。



「・・・?どうしたのだ、トモリ。」



「何かあるんですか?」



カルミアが興味津々といった表情で近付いてきた。少し右にずれてやると、カルミアはひょこっと窓から外を見た。



「ん〜、あ!なんか人が居ますね!フードを被った、マントの男です!というかあれって、」



『?・・・なんだ。』



「あ、いえ、えっと・・・。」



カルミアは言いにくそうに口を閉ざした。言葉を探すように視線をキョロキョロするカルミアは、エノテラと目が合うとぱぁぁっと顔を緩ませた。



あぁ、押し付けたな・・・そう思ったのはディランもだったようで、2人で顔を合わせて笑った。一方エノテラは呆れて冷たい目をカルミアに向けながらも、どこか満更でもないような顔でこちらに寄ってきた。



ある程度予想は着いていたが、エノテラってカルミアのこと大好きだよなぁ。ただの同僚、ってわけではない気がする。



「・・・!・・・あれは、」



エノテラは窓から外を見遣って、何かに気付いたように表情を崩した。どうやらカルミアと同様フードの男に見覚えがあるらしい。・・・それも、悪い意味で。



「・・・エストレア・ブリュム・ドゥ・シャルール。シャルール伯爵家の三男で、現在は冒険者です。」



『へぇ。ということは貴族か・・・。』



それにしても冒険者とは。もしかしたらそのエストレアってやつが私と真白の恩人だったりして。



「・・・エストレア?」



ぽつり、消え入りそうな程小さい声で呟いたのは、意外にもディランだった。



私達3人は驚きつつもディランの方を見る。ディランは混乱しているのか、私達の視線に気付かぬまま窓にゆっくりと近づいた。



そして窓から外を見つめて、やがて目を見開き廊下を走り出した。



「陛下!?」



「お待ちください陛下!」



ディランはカルミアとエノテラの静止の声も聞かず、全力疾走で廊下を走った。恐らく向かう先は・・・。



『2人は王を追ってくれ。私は先にあの男を追い掛ける。』



「・・・っ、ダメです!」



カルミアは私を止めるために腕をきつく掴んだ。それはもう、痛いくらいに。しかしそれが気にならないくらいにカルミアの言葉が気になった。そして、ディランのあの行動の意味も。



『・・・どういうことだ?』



カルミアは慌てており答えられそうにないと判断した私は、エノテラに視線を合わせた。



エノテラはその視線に気付いたのか少し躊躇う素振りを見せたが、諦めたように息を吐き出し早口に話し始めた。



「・・・・・・魔力の死神。それがあの男・・・エストレアの通り名です。そして──────今回の騒動・・・吸魔の呪いを引き起こした張本人と噂される、この国一番の嫌われ者の名です。」



”嫌われ者”。そう聞いて、僅かに親近感を覚えた。それが、私がエストレアに興味を持った最初の出来事だった。

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