狙われた消失の石

第12話失われた鉱石


『──────星に導かれし者よ、我より星約騎士(シュヴァリエ)の名を受け取り給え。されば汝、我が至高の恩恵を賜るだろう。月を呑み込み、空を蝕め、汝の星名は月蝕(エクリプス)なり。永遠の生を我と共に生き、永遠の忠誠を誓い給え。星約に応じよ、汝の名は真白(マシロ)なり。』



地面に膝をつき顔を伏した、騎士さながらのポーズをしたマシロは、私の詠唱と共に白く光り出した。



マシロの下には大きな金色の魔法陣が浮かんでおり、詠唱を進める度にゴッソリと奪われていく魔力はそこに吸い込まれている。



それだけこの魔法は大規模なものなのだ。なんせ、この間作った魔法星約の強化版だから。



その名も《星約騎士(シュヴァリエ)》。この魔法の効果としては、《星約》にもあった絶対服従。そして新たに追加した、魔力とHP・・・体力を接続共有し、もしマシロのものが足りなくなっても私のものから勝手に供給される、という魔法。あとは感覚共有やテレパシー系の魔法。これらは例えば、マシロが見ているものを私が見ることが出来たり、声に出さなくてもどこにいても会話ができる、というもの。あとは互いの位置が分かるとか、簡単な魔法が複数個。それは後々説明するとして。



因みに、この魔法の発動条件は前と同じで、私が契約者の名前を呼び、呪文を唱えることと、契約者が私に助けられた者であること。それから、私に忠誠を誓ってることというのも加えた。



・・・さて。魔法の説明をしたところで、どうして私がまた星約魔法をマシロに掛けようと思ったのかだけど、理由は簡単だ。マシロに、もう死んで欲しくないから。



あとは、何があっても死なないようにもっと強くなって欲しいから、という理由もある。



そしてその強くなる、というのがさっき説明を省いた簡単な魔法、というやつに関係がある。私が追加した魔法には、強化系の魔法がかなりあって、更に魔物を倒した経験値を共有する、というものも加えた。



だが1番大きい強化材料は、《月蝕(エクリプス)》という魔法にある。この魔法は太陽を覆う月を出現させることで、あらゆる星属性魔法を扱えるようになる。そして、同じ主を持つ全ての人間の身体能力を大幅に上げる、という効果もある。



正直この魔法はチートもいいとこだと思うが、マシロの場合魔力がもたないので私から借り受け、やっと発動できるという状態だろう。それでも強いことに変わりはない。



最後に、マシロの名前をカタカナから漢字に変更し、マシロは真白へと進化した。そしてこれにより見た目がかなり変わると思うんだけど・・・。



そう考えてじっ、とマシロが居る場所を見つめる。やがて白い光がすっ、と消えていき、光の中からマシロが現れた。



相変わらずの白い髪と金色の瞳、そして美少年から美青年へと進化した、綺麗すぎる顔立ち。あと、今は跪いているから全身は分からないが、見た感じ身長も160後半位へと伸びているだろう。



「・・・・・・・・・わぁ、服が小さい。」



・・・進化した後の第一声がそれか。相変わらず呑気なスライムだな。



私は呆れつつもいつも通りの真白に笑みを零し、魔法袋から服を取り出して真白に投げた。



顔面で服を受け取った真白はぶっ、と呻きながらも、それが服だと分かると普通に手渡ししてよ!と文句を言ってきた。でも、・・・仕方ないだろ、あまりその姿を見たくないんだ。子供姿の頃の真白はまだ良かったが、今の真白はなんというか・・・刺激が、強い・・・。



いくらイケメンの友達が3人もいたと言っても、3人はただの友達だし、真白みたいにスキンシップ激しめなやつもいなかった。・・・いや、塚井はちょっと激しかったか?まぁ、それでも真白には適わない。



つまり心臓が破裂しそうなくらいに恥ずかしいし意識してしまうため、真白を直視出来ないのだ。



「・・・はっはーん、さてはボクに見惚れてたな?」



『っ、自意識過剰!!』



「あはは、冗談だよ。というか、前にも思ったけどそんなに何回も命約を結んで大丈夫なの〜?」



・・・命約?なんだそれ?本にも載ってなかったと思うけど・・・。



『・・・命約ってなに?』



「えっ・・・もしかして、知らないでやってたの!?」



『う、うん?』



な、なに?そんなにやばいことなの?



「・・・命約っていうのは、生命に名前を付ける行為のこと。それも、特に魔力を持つ者が行う名付けに対してそう呼ぶの。」



『・・・何故魔力を持つ者だけなんだ?』



「魔物はそもそも子に名前を付ける習慣なんてないけど、人間にはあるでしょ?でも人間は人口の約7割が魔力を持たない。魔力を持たない者がする名付けは、ただの名付けでしかないから。」



・・・なるほどね。でも、私の場合は魔力持ちで、そこになんらかの効果がある・・・ということか。



「命約は、自身よりも弱い者に対してのみ行える名付けのことで、名付けることによって名付けられた者は急激に進化し、成長する。成長の度合いは名付けをする人の技量によるけど、どれだけ大量の魔力を持っていても魔力をかなり吸い取られることは間違いないし、下手したら命に関わることもある。ましてや、自分よりも魔力の多い者に行う名付けなんて、魔力の変わりに生命力を利用するから、死亡することだって珍しくない。」



・・・そんな危険なことを、知らずにしてたって訳か。もし私が真白よりも魔力が少なかったら、死んでたかもな。



・・・・・・あれ、私って真白に2回名付けしなかった?つまり・・・2回分強くなってる・・・のか?



私は確かめるべく、《鑑定(ステータス)》で真白を見てみた。



・・・・・・・・・・・・なるほどね?とりあえず、命約はとてつもない進化を促すってことだけは分かった。



だって、出会った時はLv50だった真白が、今やLv150に。どうなったら100も上がるんだ?ちょっとバグってないか?



いや、それよりも真白って3歳だったの?人間で言うと15歳くらいらしいけど、生まれて3年はやばいな、色々と。



それに体力や魔力も桁外れになってるし、ユニークスキルも発現されてる。



なになに・・・?《純白(ピュア)》?効果は、何者にも染まらぬ心を持つことが出来、また心の色が見える・・・か。これはもしかしたら、元から持っていたスキルかもな。色が見えるって言ってたし。



あとは・・・真白が土属性だってことくらいか?つまり星属性とは相性抜群じゃないか。良かった、《月蝕(エクリプス)》が使えそうで。



『・・・命約については分かった。そんなに危険なものなら、多分もうしないよ。』



「多分ってのが気になるけど・・・まぁ、いいや。それで、これからどうするの?ずっと森の中に居るつもり〜?」



・・・いいや、このままずっと森に居るつもりはない。だけど真白の体質を考えると、また街に入ってもこの前と同じことが繰り返されるだけになるだろう。



だからまずは、真白の体質を抑える・・・若しくは、封印できるような魔法の道具を開発しないと。



『・・・ここら辺にさ、宝石とか特別な石とか、とにかく何かないか?』



「ちょ、何その急な話の転換!その話、ボクの質問と何か関係ある!?」



『ある。────────真白の体質を抑える魔道具を作るからな。』



「え・・・っ、・・・つ、作れるの!?」



『断言は出来ないが、恐らくは。』



私の今着ているマントにも、外部から受ける呪いの効果を無効化させるという便利機能が着いているし、その原理をフル活用し、説明は省くが凡そ数十個の魔法を組み合わせれば、なんとか作れるとは思う。



けど、問題は素材だ。その魔法を刻み込む道具がない。私が組み合わせる魔法はかなりの数あるし、そこら辺の石やよくある鉱石なんかでは直ぐに壊れてしまう。だから丈夫で魔法を通しても壊れないような、そんな鉱石なんかがあればいいなーと思い真白に尋ねた次第だ。



「・・・・・・分かった。思い当たる節があるから、その場所に案内するね。でも・・・少し危険かもよ?」



『・・・それ、誰に言ってるんだ?』



「ふふ、心配は不要だったね。なんせボクのご主人様は、最強だから。」



・・・ま、その最強のご主人様も真白がいないとただの雑魚だけどな。ほんと、真白が居れば魔物と戦うのも怖くなくなるなんて、どんな魔法だよって感じだ。



でも・・・どこからか力が湧いてくるんだ。嘘じゃない。ほんとに、ほんとの話だよ。



「じゃあ、歩きながら場所の説明をしようか。」



真白はそう言うと、タタタッと軽快な足取りで私の横に並び、痛いくらい強い力で私の腕に自身の腕を絡ませた。



近頃は移動する際必ずこうするんだよな、真白。甘えん坊か?



・・・というか、真白が成長したからか身長差があって腕が痛いな。まぁ、真白が嬉しそうだし我慢するか・・・。



『それで、どういうものなんだ?鉱石か?』



「そうだよ〜。名前は”ルイン鉱石”。でも今は出回ってないみたい。あるのは既に加工されたネックレスなんかのアクセサリー類だけ。」



『・・・それ、そのネックレスなんかを加工前の宝石の状態に戻せばいい話じゃないか?』



「チッチッチッ、甘いねぇトモリちゃん。そもそも、それが可能だったらボクは出回ってない、なんて言わないよ〜?」



確かにそうだが言い方と顔がウザイな。言っておくが、私はその出回ってないって言った理由が聞きたくて敢えて質問しただけだからな?



『・・・で?どうして出回ってないんだ。』



「理由は幾つかあるんだけど、まず1つ目。ルイン鉱石は加工が難しくて、少しの衝撃でも砕け散るくらいに脆い。だからさっき言ってた、加工前の状態に戻す、というのが出来ない。それにそれが出来る職人が少ないのも理由の一つ。2つ目の理由が、そもそもルイン鉱石が採れなくなっちゃったから。ルイン鉱石を採掘する人間はいるんだけど、問題はルイン鉱石が採れる洞窟にあるの。」



『・・・もしかして、洞窟に強い魔物が住み着いたから、採掘が出来なくなった・・・とか?』



「わぁ!正解だよトモリちゃん。やっぱりトモリちゃんは頭良いねぇ〜。」



よしよししたげる〜と言って頭を撫でようとしてきた真白の手を叩き落とす。酷い!とか喚いてるが無視だ。・・・それにしてもこいつ、私の事子供扱いしてないか?殴るぞ?



「トモリちゃんが言った通り、魔物が突然洞窟に住み始めて、採掘が出来なくなっちゃったの。その魔物の姿を見た人はいないから、どんな魔物なのかもわからない。だから鉱夫達はその魔物をこう呼ぶらしい。───────ディスオーダー、ってね。」



ディスオーダー・・・無秩序や混乱、って意味だっけ?それほど凶暴な魔物なのか?



「他にも、冒険者達の間でもかなりの被害が出ていて、魔物討伐の依頼を受けた冒険者達が全員行方不明になったりもしてるらしい。だからみんな洞窟には近付きたがらないし、そもそも封鎖されていて入ることは出来ないしで、かれこれ数年は放置されてるんだってさ。」



なるほど・・・魔物に出くわした人間は全員行方不明になってしまったから、魔物の姿を知らない。・・・でもそれって、魔物が洞窟に存在してるってこと自体怪しくないか?



誰も見た事はないのに、何故魔物の存在を認識できたんだ?察知系のスキル?それにしては情報が少なすぎる。



まぁまだまだおかしな点は山ほどあるが、1番おかしいのは・・・瞬間移動という便利な魔法が存在するにも関わらず、それを使って姿を見たという者が一人もいないということ。



余程の馬鹿でも無い限り、このことには気付くだろう。だから問題なのは、仮に瞬間移動を持つ人間が赴いたのだとして、それでも逃げ切れない状況になったということ。



ということは・・・魔法が使えない状況になる可能性が高い。



「それからねぇ・・・ちょっと気になって調べてみたんだけど・・・夜になると洞窟から、何かを叩くような音が聞こえるんだよ。かん、かんってね。まるで・・・何かを掘ってるみたいな音が。」



『何かを・・・・・・なるほど、そういうことか。』



大体分かったけど、真白はどうしてそんなこと知ってるんだ?調べたって・・・自分で調べたってことだよな?



『・・・私と出会う前は、そんなことしてたのか?』



「暇だったから、探偵気分で色々調査してたんだ〜。結構楽しいんだよ?」



楽しい・・・のか?まぁ、真白ほど頭が良ければ楽しいかもな・・・。



『まぁ、とにかく今は勝手に動くなよ。もう私のものなんだからな。』



「あはは、いいねぇトモリちゃんのものっていう響き!というか、心配してくれてるの〜?」



『してない。が、勝手に動かれると困る。』



「またまたぁ〜。ほんと、素直じゃないよねトモリちゃんは〜っと、ここだよ、ここ。流石に中には入れなかったけど、前はここら辺まで来たんだよね。」



確かに中には入れなさそうだな。魔法陣みたいなもので封印されているから。でも・・・この魔法陣、随分と真新しいな?



魔法陣は、時が経てば経つほどその強度を増す。特に刻印系の魔法は。だけどこの魔法陣は新しすぎる。数十年放置されてるようには見えない。つまりこれは・・・、



『・・・・・・、っ・・・、』



「わっ、何これ・・・霧?」



私の考えを遮るようにして現れたのは、雲のように白く、透明な霧だった。だけど、こんな時間から?しかも今のは、いきなり現れたようにしか見えなかった。



『確認だが、この辺の森に霧は、』



「発生しないよ、絶対に。だからこれは間違いなく・・・、」



───────魔法だろうね。



真白のその声が耳元で聞こえた瞬間、何かが空を切る音が聞こえて慌てて真白を抱き寄せた。



先程まで真白が居た場所を横切ったのは、鋭く尖ったナイフ。



「きゃっ、トモリちゃんったらだいた〜ん!」



『黙ってろバカ!』



どうしてこんな状況でそんなにふざけられるんだ。馬鹿なの?馬鹿だな!?



というか、やはりというかなんというか・・・魔法が使えない。探索魔法すら使えないから、全神経を研ぎ澄ましてこの視界の悪い霧の中、飛んでくる攻撃を避けるしかない。



『っ、!』



あっぶな、敵が2人いることは気配で分かってたけど、流石に攻撃の瞬間に生じる殺気だけを頼りに避け続けるのはきつい。



あまり長引かせるのは得策じゃないし、さっさとケリをつけに行くとしよう。



『真白、このマント頭から被っとけ。絶対動くなよ。』



「?このマントそんなに丈夫なの〜?」



『物理攻撃は無効化される。だから絶対にそこから出るなよ。』



「はぁ〜い。」



私は真白の返事を聞き、ゆっくりと目を閉じて刀の柄に手を掛けた。



敵は霧を使うだけあって、正確に私達にナイフを投げて来ている。つまり私達の姿は丸見えなわけだ。でも接近戦を挑んでこないということは、近付けば姿が見えてしまうということ。



ならば話は簡単だ。気配を消してるみたいだけど、わかり易すぎて直ぐに分かった。どこにいるか分かればこっちのものだ。



私の行動を警戒しているらしい2人に気配を悟らせない為に、すっ、と気配を消し感情を消した。



そして素早く駆け出し、木の上にいるマントを被った敵を刀の柄の部分で叩き付けて気絶させる。



もう1人のマントの敵はそれに気が付いていないようで、いきなり消えた私に動揺を隠せないようだ。



そんな敵を冷静に観察しながら、木から木へと移動して敵の背後に回り、同じように気絶させた。



2人の気配しか感じていなかった私は、敵を全て倒したと思い込み油断していた。



だが次の瞬間感じた痛みに、私の警戒心はグッと上がった。



幸いギリギリで避けたため頬を掠っただけで大きな怪我はなかったが、今のはやばかった。



・・・というか、まだ敵がいたのか?今だってまだどこかに居るはずなのに、全く気配を感じ取れない。



霧の魔法が晴れないことから、さっき攻撃してきた奴が魔法を発動させてる張本人か。面倒だな。



『っ、チッ、』



再び飛んできた三本のナイフを避けきり、私は地を蹴った。そこか、とナイフが飛んできた方向へ向かう。



が、もう既に移動した後だったようで、そこには誰も居なかった。それどころか、私が攻めてくると見越していたかのように別の場所から5本のナイフが飛んできた。



私は思わず抜刀し、それらを全て弾き落とした。



が、間髪入れずに次は10本のナイフが飛んでくる。くっそ、避けきれない・・・っ、なら!



私は素早く刀を鞘に収め、飛んでくるナイフを血眼になって観察した。そして、狙いを定めた2本のナイフを両手で1本ずつキャッチし、即座に刃の方向を入れ換えてナイフが飛んできた場所へと投擲した。



確かな手応えと共に、避けきれなかったナイフが二の腕と脇腹を掠り、太腿にモロに突き刺さった。



『っ、・・・・・・、』



痛い・・・。これ以上戦うとなると、不利なのは私だ。けど相手もダメージを負ってる。だからここは大人しく引いてくれよ。



そう祈りながら痛みに耐えきれず地面に膝を着く。くっそ、痛いなぁ・・・。



早く、早く行ってくれ、と祈る。その祈りが届いたのかなんなのか、突然霧が晴れ、視界がクリアになった。



「っ、トモリちゃん!!血が・・・っ!!」



『・・・大丈夫だ、このくらい。』



真白には強がったが、正直死ぬほど痛い。私は太腿に刺さったナイフを抜き取り、魔法袋から取り出した布を押し当てた。



するとじわじわと赤に染まっていく。あぁ、ジクジクしてて痛い・・・。



「大丈夫・・・なわけ、ないじゃん!ポーションは!?」



『ポーション・・・・・・あぁ、そういえば持ってるな。』



「じゃあ早く出して!」



『あ、うん・・・。』



普通に忘れてた。・・・いや、この世界に来る前の常識で考えてた、って言った方がいいかな。怪我した時はいつもこうやって・・・って、この話は今はいいか。



私はポーションを取り出し、蓋を開けてグイッと飲み干した。すると、痛みがどんどん和らいでいき、傷が完全に塞がった。



「・・・・・・もう、痛いとこは?」



『ない。完治した。』



「・・・っ、ばか!!ばかばか!!心配したんだよ!!」



『・・・ごめん。』



「・・・っ、ボク、これから強くなる。それでトモリちゃんを守る。星約騎士(シュヴァリエ)の名に恥じないように・・・もっと、もっと強く・・・、」



『・・・・・・勝手にしろ。』



真白が自責の念を感じてないといいが・・・。この怪我は私の油断によるものだし、真白は何も悪くない。



真白が戦えないのは、私だって知っている。でもその代わり真白には頭脳がある。それだけで、立派な戦力になっているのだから。



それに・・・真白は、そばに居てくれるだけで・・・ただ、それだけでいいんだよ。



『・・・・・・・・・、』



なんて言って、真白を励ますことが出来たら・・・真白だって、余計な荷物を増やさずに済んだかもしれないのに。



あぁ、どうしてこうも私は、素直な感情を言葉にすることができないのだろう。



今はただ、それだけが心底悔しくて、自分に対する嫌悪の感情が、心のごみ溜めにサラサラと募っていくのを感じた。



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