第5話運命へと続く契約


殺したい・・・。開始早々物騒だって?そんなの知るか。殺したいものは殺したいんだ。だってこのスライム、殺意製造機なんだよ?いっけなーい、殺意殺意!って状況なんだよ?



スライムのやったことだし許してやれよ、とか言ったそこのお前。私の話を聞いてもそれが言えるかな?まずは手始めに魔物を誘き寄せる。それもたまに群れを呼ぶこともある。それだけでも面倒なのに、何故か他のスライムを見つけたら攻撃し出すわ、無駄に危なっかしいわ、その辺の毒キノコとか直ぐに食べるわで、もう、本当に、まじで、殺したい・・・。



大体、どうして同族のスライムなのに攻撃するんだ。押し付けたくても押し付けられないじゃないか。あと直ぐに川に落ちそうになるし、崖から落ちそうになるし、面倒の塊でしかない。スキルの件がなかったら殺してる自信があるね。



『・・・はぁ。お前さ、何をどうしたいの?死にたいの?死にたいならお望み通り殺してあげるよ?』



喋りかけるが、やはり伝わっていないのか、不思議そうな顔のスライムが目に入る。



・・・・・・面倒だけど、これ以上の面倒事が増える前に、さっさと対策しておくか。



『《魔法創作(チャームクリエイト)》』



《魔法創作(チャームクリエイト)》とは、私が1年の間に身に付けた魔法の1つで、エクストラスキルに分類される。魔法を創造することが出来るが、既に存在する魔法や七代魔法などは作ることが出来ない。但しそれに分類されない細かい魔法なら作ることが出来る。



まぁ説明はこの辺にしておいて、早速作るか。今回作るのは魔法付与系の魔法だ。実は付与の魔法は既に作っているのだが、それは無機物に対する付与魔法だ。でも今回は生物に対する付与。だから新しい魔法を作る必要があるのだ。名前は・・・そうだな、



『──────《星約》』



この名前にした理由は2つある。1つ目は、私が星好きのため。2つ目は、この魔法は契約に近いため。



そう、この魔法は私に絶対服従の魔法。この魔法の発動条件は、私が契約者の名前を呼び、呪文を唱えることと、契約者が私に助けられた者であること。



まぁ、このスライムの場合発動は簡単だ。要は頷かせればいいのだから。



名前・・・は、あるのか?・・・まぁいいや、適当に付けよう。



『──────星に導かれし者よ、我に星約を誓い給え。されば汝、我が至高の恩恵を賜るだろう。星約に応じよ、汝の名はマシロなり。』



呪文を唱え、名前を呼んだ。すると白い煙がマシロを覆った。まるで進化みたいだなと場違いなことを考えながら、それを見守る。因みに名前はマシロだ。見たまんまだって?いいじゃん分かりやすくて。



っと、見えてきたようだ・・・な?・・・・・・うん?え、・・・誰?



煙が晴れて見えて来たのは、座り込む美少年だった。その美少年は白い髪に金色の瞳で、髪の色以外は私にそっくりだった。目の色然り、顔立ち然り。つまりは美形なのだ。しかし身長は低めだな。150後半くらいか?



「う・・・ん?・・・あれ?ボク・・・、」



『お前の名前はマシロ。星約により私の従僕となったんだよ。』



「ましろ・・・せーやく・・・じゅー・・・ぼく?」



『ふむ・・・声帯機能に問題は無さそうだな。言語理解もしっかりと機能しているようだ。』



今回の星約でマシロに与えた魔法は、《言語理解(ランゲージ)》と《擬態(ミミック)》だ。《言語理解(ランゲージ)》は言わずもがなどんな言語も理解出来るというもので、《擬態(ミミック)》は見たことがある生物に限り、好きな姿や形に変形できるというもの。しかしただの擬態・・・つまり真似なので、本人の面影が残ることが多い。マシロはその魔法で、私の姿に変形したのだろう。だから私に似ているのだ。だがしかし身長は私の方が高い。その差なんと約2cmだ。



『僕はトモリ様の下僕です、って言える?』



「ボクは・・・トモリのげぼく・・・?」



『様なクソガキ。ほら、トモリ様って言ってみ?』



「トモリ・・・トモリ!」



『話聞いてた?耳の方は異常ありかな?うん?1回潰すか?』



なぁにがトモリだこのスライムが。私の名前を呼んでいいのは同等の相手・・・つまり友達3人だけなんだよ。いいか?



『はぁ・・・なら、トモリさんって呼んで。いい?』



「トモリ・・・ちゃん?」



『・・・・・・・・・もうそれでいいよ。塚井と同じ呼び方なのには少しイラッとするけど。』



・・・で、これからどうするか。話を聞くにしても、もう暗くなってきたし。晩御飯を食べてからにするか。



『今からご飯作るから、ちゃんと手伝うこと。いい?』



「あい!」



返事だけはいいな。返事だけは。私はニコニコと私を見つめるマシロをジトっとした目で見ながらも、魔法袋から材料や野宿セットを取り出し始めた。



『んじゃあマシロ、薪拾ってきてくれる?』



「わかた!」



『分かった、ね。』



「あい!」



元気だなこのスライム。そのテンションについていけないのは私が歳だからなのか。・・・いや、18歳はまだ若い。



というかマシロは薪拾えるのか?・・・心配になってきた。まぁ、いいか。私はご飯の準備しよう。



今日は暑いから冷製スープとピザ風トーストにしよう。そう決めて、私は料理を始めたのだった。



─────────────────



『いただきます。』



「?・・・ます!」



『いただきますだよ。』



「いただ・・・ます?」



はぁ・・・。最初喋った時は普通に喋れてたような気がするんだけど。気のせいか?まぁどうでもいいや。考えるのも面倒臭い。



「!おいしー!!」



『・・・・・・まぁ、私が作ったからね。』



「あい!」



・・・そんな素直に返事されると反応に困るんだけど。というか食べるの早・・・。



『・・・マシロはどこから来たの?』



「?とおいとこー。」



遠い所、ね。・・・このスライム、なんか変だな。いや、そもそも色が変なんだけど、そうじゃなくて・・・。



まず、最初に喋った時は流暢に喋れていたこと。次に、気配察知で分かったけど、結構遠い場所まで薪を拾いに行っていたにも関わらず、迷うことなくここに帰ってきたこと。最後に、今の質問だ。普通、道が分からないのならこういうはずなんだ。わからない、と。しかしマシロは遠い所から来たと言った。つまりそれは、ここがどこか分かっていて、更に言うとどこから来たのかも理解していたということ。



つまり、だ。マシロは今、どういう訳か演技をしている。馬鹿なスライムのふりを。



何が目的なのか・・・それは分からないが、少なくとも私に危害を加えるつもりはない筈だ。だから今のところは放置でいいかな。



そう判断し、思考を終わらせて食事を始めた。相変わらず、私のご飯は美味だった。









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