第24話 それぞれの戦い side:シルヴィ
side:シルヴィ
ジークとダンの戦いが始まり、私とおじいちゃんは近寄るためにそこへ向かおうとする。
すると、ダンの仲間の2人組がこちらに近づいてくる。
「おっと、兄貴の元へは行かせないぜ!なぁ、ボリ!」
「おおよ、バリ!お前らはここで俺らに倒されるんだからよ!」
どうやらバリとボリという2人は、私とおじいちゃんがジークとダンの元に行かせないようにするつもりらしい。
「シルヴィちゃんは下がっておってもよいぞ?
儂1人でも………」
「私も戦うよ、おじいちゃん」
「ほっほっほっ、そうかそうか。なら好きにするとよい」
おじいちゃんは1人でもいいと言うが、私はもう決意していた。
「舐められてるな、ボリ」
「舐められてるぞ、バリ」
「よし!俺はあの女の方をやるから、あのじーさんはボリ、お前に任せた!」
「あ!バリ、ずるいぞ!火の賢者の方を避けやがって!」
やはりおじいちゃんよりも私の方が楽だと思われているようで、2人はどっちの相手をするかで揉めていた。
揉めた結果、私の相手はバリ、おじいちゃんの相手はボリということになった。
お互いの邪魔になるだろうということで、私とおじいちゃんは離れて別々に戦うことにした。
私はバリと2人になり、お互いに距離を取って様子見をしている。
「へへっ、悪く思うなよ、お嬢ちゃん。
戦場じゃあ、男も女も関係ないからよ!」
「大丈夫だよ。私だってそのくらいの覚悟はできてる!」
バリは、私のことを完全に下に見ている。
私が女だから勝手に弱いものと判断しているのだろう。
それは別にいい。強いと思われたいわけではなかったから。
そうして睨み合っていると、バリが話しかけてくる。
「でもあいつも馬鹿だよな。あんな捨て子のエルフを助けるために、性懲りもなく兄貴に挑むなんてよぉ!
どうせ勝てもしないのに、ご苦労様だぜ」
この言葉には流石に私も怒りが込み上げてくる。
「ジークやセレナちゃんの努力も知らないで勝手なことを言わないで!」
「そう怒るなよ。
それじゃあ、俺はサクッと嬢ちゃんを倒して、兄貴の応援にでも行くとするか!」
そう言ってバリは、臨戦態勢を整えた。
私はまだ光の賢者になったという実感は無い。
だけど、この力で誰かを、ジークを助けることができるなら私はこの力を使うことに躊躇はしない!
「嬢ちゃん、覚悟しやが………」
「《サンクチュアリ》」
私が唱えると、バリの周りに光の壁が現れる。
光魔法サンクチュアリは指定した領域内を光の壁で覆うという魔法だ。私以外は中からも外からもその壁を壊すことはできない。
「な、なんだ!?この光の壁は!?………出れねぇ!?」
バリは壁を叩き、出ようとしている。
「無駄だよ。その壁は私以外には壊せないから」
「なっ!?ふざけんな!ここから出せ!」
私はバリの叫びを聞きながら、魔力を込めて手を前に出す。
何をしようと察したのか、バリは助けを求め、慌て始める。
「や、やめろ!悪かった!俺が悪かったから!助けてぇ、あにきぃ!」
「ごめんね?《ウィンドブラスト》!」
「ぐふっ!?」
私が放った風魔法によって、《サンクチュアリ》ごとバリを吹き飛ばした。
吹き飛ばされたバリはその場で気を失って倒れていた。
♢ ♢ ♢
バリを倒した私は、おじいちゃんの方を見る。
向こうはまだ戦いが始まっていないのか、お互いに向かい合ったままだった。
「ちっ、バリのやつ。あんな娘1人にすら勝てねーのかよ」
「ほっほっほっ、シルヴィちゃんをなめてかかるからじゃ」
「これじゃあ、俺の手間が増えちまったじゃねーか」
ボリはバリが私に負けたことで、2人を相手にしなければいけない事を嘆いている。
「大丈夫じゃよ。お主の相手は儂1人じゃからのう」
「いいのかよ?随分と余裕だな。いくら火の賢者とはいえ、今は老いぼれ。手加減はしねーぜ!」
バリが私を甘く見てたように、ボリもおじいちゃんのことを甘く見ていた。
「それでいいのかのう?」
「あん?」
「………最後の言葉はそれでいいのかと聞いておる」
聞いたこともないような威圧感のある低い声でおじいちゃんは言った。
「ひっ………!」
「《フレイムノヴァ》」
おじいちゃんが詠唱すると、辺りを眩しく照らす炎の星のような火球が出現する。
先程の言葉で威圧されて完全に怯えてしまったボリは、動くことができないのか、近づいてくる火球を前にして固まってしまっている。
「や、やめろ!やめてくれぇぇぇ!」
ボリが助けを求めて叫び、火球がぶつかる!と思った瞬間、火球が消えてしまった。
私がおじいちゃんの方を見ると、にこにこ笑っている。
「ほっほっほっ、まぁこの辺にしといてやるかのう」
やはりおじいちゃんがわざと当たる直前に火球を消したようだった。
ギリギリまで恐怖を味わったであろうボリは、口から泡を吹いて気絶していた。
無事、バリとボリに勝利した私達は、今だに戦っているジークとダンの方を見る。
ここに来る前にジークに言われていたことを思い出す。
それは『俺とダンが戦っている間は手は出さないでくれ』ということだった。
その時私はあまり乗り気じゃなかったが、ジークの真剣な眼差しにやられて、渋々頷いてしまった。
あの目はずるい。
あんな目で見られたら駄目だなんて言えない。
今、ジークはセレナちゃんのために戦っている。
それを少しだけ羨ましく思いながらも、私は心の底からジークを応援する。
「………がんばれ、ジーク!」
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