第23話 ジーク vs ダン
今の俺の身体強化無しのステータスはこんな感じになっている。
名前:ジーク
種族:人間
HP:100/100
魔力:100/100
筋力:80
耐久:80
敏捷:100
《スキル》
【上級】火魔法・・・火属性の魔法
【上級】剣術・・・剣の扱いが上手くなる
【特級】鑑定・・・あらゆるものの情報を見ることができる
【王級】魔力回復魔法・・・使った魔力の10倍の魔力を回復させる
俺は、また不意打ちでやられないように今度は最初から身体強化、剣に物体強化をしている。
身体強化は魔力30、物体強化は魔力20の強度である。
今の俺なら身体強化は魔力40、物体強化は魔力50まで使うことができるが、相手の出方が分からない以上、温存しておくに越したことはない。
それに俺が今持っている武器は何の変哲もない普通の剣なので、魔力20の強化までしか剣の耐久が持たない。
だからどのみち、物体強化には魔力20までしか使うことができなかった。
俺は剣を、ダンは短剣を構えて、お互いに相手の出方を窺っている。
睨み合いを続ける中で、先に動いたのはダンだった。
「《ライトニングアクセル》!」
ダンがそう言った瞬間、稲妻が走り、高速で移動する。
湖の時はこの速度に対応できずに、やられてしまったが、身体強化をしている今の俺にはしっかりとその動きを捉えることができていた。
素早く俺の後ろに回り込み、ダンは短剣で切りかかってくる。
それを俺はその速度に合わせて振り返り、剣で防ぐ。
キンッと音がなり、刃と刃が交じり合う。
「なんだよ、意外とやるじゃねぇか」
刃を交えながら、ダンは少し驚いている。
「湖の時とは、反応も動きも段違いだな。
スキル………?いや、この感じは身体強化か。
それにその剣、見たところ普通の剣だが俺のこのミノタウルスの角で出来た短剣を防ぎやがった。
物体強化も使ってやがるな」
「ああ、そうだ」
どうせ隠していてもすぐにバレることだから、否定はしない。
俺が肯定すると、ダンは急に笑い出す。
「くっははっ!」
「何がおかしい!」
「そんな効率の悪い戦い方をするなんて思ってもみてなくてよぉ。
体力も魔力も馬鹿みたいに使ってほんとに大丈夫なのか?こっからの動きについてこれるんだろうなぁ!」
ダンがそう言うと、今まで以上に稲妻の激しさが増した。
元々速かった動きは、さらに激しさを増し、目で追うことも困難になる。
「くっ!」
なんとか致命傷にはならないように防いではいるが、完全には防ぐことができず、少しずつ傷を負ってしまう。
「ほらほらぁ!どうしたぁ!こんなもんかぁ?」
防戦一方になっている俺に対して、ダンは煽りながら辺りを高速で移動し、攻撃を次々と仕掛けてくる。
攻撃をその身に喰らいながら、どうにかいなしている状況だった。
連続攻撃を耐えながらどうにかダンのステータスを見ることができた。
名前:ダン
種族:人間
HP:90/100
魔力:2700/3000
筋力:350
耐久:300
敏捷:480
《スキル》
【上級】雷魔法・・・雷属性の魔法
【上級】剣術・・・剣の扱いが上手くなる
スキルは想像通りで、雷魔法込みでの数値だが、やはり敏捷値だけ飛び抜けている。
身体強化の強度を上げるべきかと頭を悩ませていると、ダンがこんな言葉を言い放った。
「大体てめぇらも馬鹿だよなぁ!こんな捨て子のエルフなんか
ほっといてこんな所に来なきゃ、わざわざ死ななくても済んだのによぉ!」
「なんだと!?」
「大方、才能も実力もねぇから捨てられたんだろうなぁ!
それなのにこんな森に引きこもって強くなるんだなんだって、そんなの無駄な努力だと、いい加減目を覚まさせてやらねーとな!」
その直後、ダンは後ろで様子を見ていたセレナの元まで移動する。
急に目の前に現れたことに驚いているのか、セレナはその場に固まってしまっている。
そのまま動かない彼女に対して、ダンは短剣を振りかざした。
セレナは目を瞑り、頭を抱える。
「きゃあ!」
もう手遅れかと思ったが、キンッという音がなり、俺の剣とダンの短剣がぶつかる。
俺は身体強化の強度を上げることでダンの速度に負けない速さでセレナを助けることができた。
「………ジーク!」
目の前に俺が現れ、セレナは安心したような声を上げた。
「………よく間に合ったじゃねぇか。
さっきまでこの速さに手も足も出なかったくせによぉ?」
「………お前が」
「あ?なんだって?」
「お前がセレナの努力を馬鹿にしてんじゃねーよ!
セレナは人一倍努力してんだよ!強くなって見返してやろうって!そんな強い奴なんだ!
それを関係ないお前がヘラヘラ笑って良いはずがないだろ!」
「ぎゃーぎゃーとうるさいんだよ。
そんなに死にたきゃ、お前から殺してやるよ!」
標的をセレナから俺に変えたダンは、凄まじい速さの斬撃を繰り出してくる。
だが、身体強化に使う魔力を30から40にまで増やし、俺の身体能力は普段の5倍にまでなっている。
「うおっ!?ぐっ………!なんだと!?」
「こんなもんか?」
ダンと同じ言葉で煽り返す。
この状態だと俺の方が速く、ダンに対して有利に戦えるようになっている。
速さだけでなく、攻撃力も先程とは違うので、ダンはこちらの攻撃をいなしきれてはいなかった。
先ほどまで受けが多かったが、今はこちらから攻めて相手のペースを乱すことができている。
「て、てめぇ!さらに身体強化の強度を上げやがったな!
だが、そんな無茶な戦い方がいつまでも続くはずがねぇ………!
このまま俺が耐え切ればお前が自滅して終いだ!」
確かにこちらが有利ではあるが、完全に倒し切ることはできず、決め手に欠ける状況である。
こちらの決め手が無いことを読んだダンは、このまま俺との耐久力、体力勝負に持ち込む気のようだ。
凄まじい速さの戦いの中で、何十、何百と刃が交じり、互いに一歩も引かない。
しかし、この戦いをしばらく続けていると、ダンの動きにキレがなくなってくる。
息も上がってきており、明らかに疲れが見え始める。
何百回目かという2人の刃が交じり合う。
「はぁ、、、はぁ、、、何故だ………!
どうしてそれほどまで強化を使って、息の一つも上がっていない!
そもそもなんだその強化の持続時間は!
何故魔力が持つ!?何故体力が持つんだ!?」
俺が魔力切れ、体力切れをいつまでも起こさないことにダンが苛立ちを露わにする。
3年の修行と魔力回復魔法により俺は、その問題点を解決することができている。
「もう終わりか?」
「ぐっ………!」
悔しそうに噛み締めたダンの唇からうめきが漏れた。
「ふ、ふざけるな!
元B級冒険者のこの俺がこんなガキ1人に負けるはずがねぇ!そんなことあるはずがねぇんだぁぁ!」
怒りに身を任せ、完全に速度が落ちた単調な動きで攻撃を仕掛けてくる。
俺は、その攻撃を躱し、隙ができたダンに対して思いっきり剣を薙ぎ払う。
「がはっ………!」
その一撃で洞窟の壁までダンは吹っ飛び、気を失った。
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