第8話 あなたを見つけた理由
Side
私は超絶大人気Vtuber。
普段は大学で清楚ボッチを楽しみ、家に帰ればチャンネル登録者数100万人超えの天才Vtuber。
私は一切の謙遜を抜きに、成功者であると思う。
世界の中心は私ではないけれど、中心近く……しいて言うなら日本で表せば神奈川辺りにはいるんじゃないかしら。
ともかく、トントン拍子に上手くいった人生。
二周年ライブではVtuber史上初となる同接11万人を達成した。
人気になった原因はある程度分かる。
どうも私はイジられ役らしく、コラボ等の掛け合いがそれなりに人気らしい。まあ、裏を返せば一人じゃ何もできないってことね。解せないけれど。
とは言っても、企画等を練ればそれなりの再生数は見込めるし、一端のVtuberとしてのトーク力と企画力はあると自負している。
私には相棒が必要だ。
──一人でやれなくても、二人なら。
私は完璧(笑)で究極のVtuberであるけれど、何も自分一人の力だけで何とかなると思うバカじゃない。
私には相棒が必要だ。
ツッコミができて、キャラも立っていて、話題性があって、互いを高め合うような……って、さすがに高望みしすぎね。
本当はリアルで話を付けた方が気持ちも伝わって良いとは思うけれど、リスクは高いし近くに条件に当てはまるVtuberがいるわけないわ。
──と思っていたけれど……。
「い、いた……」
少なくともVtuberはいた。
最近少しずつ登録者を増やしている新進気鋭のVtuber、田中・エリオット・毒沼。
毒舌(本人自称)と煽り系オスガキとして、リスナーとプロレスを繰り広げる独特な手法で視聴者を取り入れている。
「地声そのままじゃないの……。それでよく今までバレなかったわね……」
まあ、私みたいにVtuberを探そうとして探さないと気づかないのかしら。それにしてもリテラシーがないとは思う。
「……私の条件には当てはまらないわね」
ツッコミとは少し種類が違うし、キャラは立っているけれど私の求めるものではない。 話題性も細々としてるし。
「はぁ……諦めるしかないわ」
同じ大学ってことで多少興奮したのだけれど。
互いを高め合わないとコンビを組む意味がないもの。仕方ないわ。
「ふっ、私という孤高で天才のVtuber様にはそぐわない、ってことね。お祈りメールを送ってあげるわ。心の中で」
そんなこんなで、田中(勝手に呼び捨て)のことは地味に気になってはいたけれど、徐々にその存在を忘れてきた二ヶ月ほどが経った頃。
「田中ァ!! なかなかやるじゃないの!! 前のあなたより今のあなたの方が好きよ!!」
隠れて配信をチラチラ見ていたから、オスガキキャラでも一応ファンではある。
けれど、吹っ切れてリスナーの玩具にされている彼は、前よりも輝いて覇気が満ちていた。
それでこそVtuber。本人が楽しんでこそのVtuber。
今の彼なら……もしかしたら私の相棒足り得る存在かもしれない。
「ツッコミ役でないのが残念ね。まあ、私みたいな完璧なVtuberにツッコミなんてできるはずもないわ。そこは許してあげましょう」
なぜこんなにプライドが肥大化しまくったカスみたいな人間になったと思う?
──承認欲求を満たしまくった結果よ!!
客観的に見たらカスよ!!
でも私は私というカスが好きよ。
それはともかく、私はすぐに行動を起こした。
事前に話し合うための個室喫茶を予約。
履修を調べ、たまたま重なっていた講義があったため、その日に決行を決意。
更には家でどう話しかけようかを158パターンほど構想。
……完璧よ!! 究極よ!!!
断られることもなく、泣いて喜ぶに違いないわ!!
やっぱりバカとかアホとか言われてるけど、本当の私は天才なのよ。私の計画に抜かりはないもの。
今までの人生のようにトントン拍子に上手く行くに違いないわ。
だって、私だもの。しおり。
──だというのに。
会話してみて印象が180°変わった。
悔しいことに、田中は私の求めるイジり役にピッタリハマっていたし、イジメにならない絶妙に気持ちよくなるラインを理解していた。
くっ……悔しいのに(ryってやつね。
ツッコミ役(イジり役)で、キャラも立っていて、話題性は抜群。
そして、私は田中ならともに高め合うことができると感じていた。
そう、これは運命よ!!!!
勢いそのままに、私は喫茶店で田中を誘う。
順序だとか説明だとか、そんなのはいらない。
だって、私と田中は通じ合ってるもの……ッ!!!!
「嫌です」
「どうしてよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」
田中ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!
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