第5話 吹っ切れゲーム配信 #これイジメだろ

 アトウェルさんの激励を受け、やる気満タンになった俺は正直無敵だと思う。

 捨てるものが恥と尊厳だけで済むのだ。全然捨てる。もう今更恥とか気にしたって、今や生きてるだけで恥を晒し続けるんだから問題ない。


 大学との兼ね合いもあるが、できるだけ配信を増やしていこうと俺は決めている。

 それとは別に、企画なども積極的に行うことにした。

 ぶっちゃけ、配信だけで人気を掻っ攫うのは結構難しいんだよな。同じことばかりでリスナーは飽きるし、配信だけだと内々のコミュニティの結束だけが強くなってしまって、新規の受け入れがしづらい。


 何にせよ、話題性と、あらゆる方面での面白さの提供。

 必要なことを粛々とこなしていこう。


「よっしゃ! やってやるぜ!」


 とか何とか細かく言ってるけど、まずやるべきなのは脳死で配信だぜ!!

 無策!!



☆☆☆


「はいどうもー、カスです」


コメント

・急激な自虐

・わりと病んでて草


「いやー、今日はタイトルにあるようにゲームしようと思うんだけどさ。今まで煽ることに集中しすぎててまともにゲームやったことねぇと思ったわけよ。だから今回は俺の真の力が明らかになっちゃうかもしれないからよろしく」


コメント

・ほんのりオスガキの残り香があるの草

・確かにゲームまあまあ下手枠だもんな……

・逆境を言い訳に使ってきたw

・早口オタクくんさァ……


 癖が抜けないせいで、半分毒舌が残ってるかもしれん。

 俺が言った通り、今までは人を常識の範囲で煽ることに精を出しすぎて、ゲームを純粋に楽しんでプレイするどころか、ゲームを配信の餌に使っていた節がある。


 つまり、そんな俺が本気でゲームに打ち込んだらすごいのでは……?

 という何の根拠もないアホみたいな理由でやってみた。


「誰がゲーム下手枠だ。そもそも一緒にゲームする人もいないし、比べなくても……………いいじゃん」


コメント

・草

・悲しき獣の慟哭を聞いた

・かわいそw

・結構自業自得で草


「うるせぇ! 俺は吹っ切れたんだ!! いつの日か一緒にゲームしてくれる奴が現れるんだよ!! 知らんけど!」


コメント

・吹っ切れてる、っていうかヤケクソ

・そっちのほうがワイは好きやで

・田中『ノリ良いリスナーが好きすぎる。一人一人に会って握手してスパチャ分のお礼したい』


「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っっ。やめろ、それは俺の別人格が呟いたやつだから!!」


コメント

・悶えてる悶えてるw

・立場逆転してるんだよなぁ……

・そっちの方が嬉しそうだけどな、こいつ

・ドMじゃねぇかw


 ドMじゃねぇし!!

 ただ、自分が煽るなら人に煽られた方が嬉し……それは語弊が生まれるな。ドMじゃないけど。


「俺はSでもMでもない。……しいて言うならノーマルのN」


コメント 

・なんそれ

・それはないだろ

・え! ニュータ◯プ……ってコト!?


「それはちゃうねん。……と、そろそろゲームしていくぞー」


コメント

・おー

・書いてなかったけど何のゲームするん?

・FPSか?

・パーティゲー……あ、ごめん

・煽ってるやつ数名いて草


「あ? 良いのか? 全然パーティーゲーム一人でやるが? 泣きわめきながら一人でプレイする俺がもれなく見れるけど?」


 も◯てつ一人で99年プレイした俺をあまり舐めないでほしい。その気になればソロ行動に糸目をつけない男だぞ、俺は。

 もちろん、全然後で我に返って虚無るけど。


コメント

・ちょっと見てみたいの草

・ただの拷問じゃん

・全力の号泣を見たい気持ちはある


 成人男性の号泣にそんな需要があるなんて知らなかったわ。


「まあ、とにかくやるゲームは……これ! 視聴者参加型格闘ゲーム!!」


コメント

・一応パーティーゲームで草

・一人じゃできないものを選択するな

・参加型かぁ……みんな、参加しないようにしようぜ!


「やめろォ!! オフ会0人ネタじゃないんだから、それは洒落にならんぞ」


 俺がチョイスしたゲームは、世界中で人気の格闘ゲームだ。多種多様なキャラとそのゲームバランスから、配信の鉄板ネタでもあるし、如実に実力が分かる。

 やるならもってこいだ。


 ふふふ……これで視聴者を分からせてやんぜ。


「……っよし、準備完了。早い物勝ちだからな。コードは、46953。さあ来い!!」


 ルーム番号を表示し、いざリスナーの参加を待つ。

 

 …………あれ? 

 

「もしかして設定ミスった? 全然来ないじゃん」


 設定を表示してみるが、特段おかしなことはない。

 なのに、一向にリスナーが来ない。

 同接だって一万人ちょっといるはずで、このゲームを持っている人はかなり多い。


 俺は首を傾げながらコメントを見た。



コメント

・www

・w

・団結力ヤバすぎて草

・凸待ち凸来ないネタは珍しくないけど、視聴者参加型でこのネタやれるやつ初めて見たわwww

・空気読めすぎやろw


「は?」


 ええと、それはつまり?

 リスナーが団結したせいで、誰も部屋に入ってこないってこと?


「いや、なんで変なとこで団結してんだよ!!?? 孤立のさせ方に悪意ありすぎだろ!! つーか、どうやって統制してんだよ!! 普通誰か入るだろ!! 同接1万超えてんだぞ!?」


コメント

・わりぃな、俺ら天才だから

・実力発揮しちゃったね……

・ドンマイ


「やかましいわ」


 俺をイジることに順応しすぎじゃない?

 本性発揮してから二回目の配信なんだけど。初見です、ってチラリと見たヤツも早速俺のこと煽ってる気がするんだけど!

 


 

 ……ちなみに、この後何回募集しても一切リスナーは入ってこず、俺は不貞腐れて寝たのであった。


 この一件は当然のように切り抜かれ、俺は再度不本意なバズりを経験する。



 解せぬ……。


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