第7話
とても暖かい。気持ち良くてこなまま眠っていたい。
「エリン」
「エリン」
あれ。声が聞こえた気がする。
「エリン」
「エリン」
お母様の声だ。どうしてそんなに悲しそうなの?私はここに居るよ。
私はゆっくりと目を開けた。
すると目の前には目を真っ赤に腫らしたお母様が居た。
「お母様。どうして泣いているの?」
「・・・・・・」
「お母様?」
「エリン・・・貴方・・・どこかおかしい所はない?」
「おかしいところ?特に痛い所もないですし、むしろとても調子が良いですよ」
「そう。とても心配したのよ。貴方は丸2日も眠って居たのよ」
「え?そんなに?」
「そうよ。何処まで覚えてる?」
「えーっと・・・確か・・・いつもより早く眠くなって、少し休もうとしてソファーに横になって、それから夢を見ていた気がします」
「その夢はどんな夢だったの?どんな事でも良いのよ。お母さんに話してみて」
「えーっと、とても暗い場所に居て、使用人の家族を拐って協力させて、全員殺したって話声が聞こえてきて、扉が開くと一瞬光の閃が見えると二人も急に倒れました」
「そのまま奥に行くと貴族の依頼がどうとか、家庭教師の情報がどうとか、貴族の迎えが来るとか、そんな話声が聞こえてきて。はっきりは覚えていません。でもまた光が走るとまた二人も倒れました」
「また扉を開けると外にも二人居て気がついたら二人も倒れていました。それから暫く経つと馬に乗った沢山の人と馬車が一台やってきて、子爵様の物に手を出すと殺すとか聞こえてきて、突然その人達に沢山の雷が降り注いで皆倒れちゃいました」
「それから歩いて居ると遠くからハロルドの声が聞こえてきて、安心するとそこで夢は終わりました」
「そうなのね」
何故か皆辛そうな顔で私の事を見つめて居る。あれ?皆どうしたんだろう?私は夢の話をしてるだけなのに。
「エリン。貴方が見た夢は多分現実に起こったことなのよ。貴方が行方不明になって、皆で探し回ったのよ。そしてハロルドが歩いている貴方を見つけて連れて帰って来たのよ」
「私、誘拐されたの?でも私あんまり覚えてなくて」
「良いのよ。エリンが無事に帰って来てくれてお母さんとても嬉しいわ」
私はお母様に強く抱き締められた。やっぱりお母様の匂いは安心する。
「これをエリンが持っていたんだね?」
「はい。賊を一人捕らえて馬で引きずりながら連れていました。間違いありません。賊の証言も取れています」
「そうか。それで現場はどうだった?」
「それが。とても凄惨な現場でした。外にあった死体は全て黒焦げで見た目で判断出来る者は居ませんでした。建物の中には盗賊達の死体がありました。死体は全て首を刺されていました。全ての死体が首への一撃意外の傷はありませんでした」
「そうか。にわかには信じられんな。それにしっかりと証拠も確保している。この件は国王陛下へは報告済みだ。恐らくケンプファー子爵家は小さな子供はいないから一族全て極刑だろう。証拠が無ければ泣き寝入りだったが、今回は動かぬ証拠がある」
「はい。それでエリンお嬢様の目は一体」
「私にも分からん。片目だけ金色になるなんて。聞いた事もない。陛下ならもしかしたら何か知っているかもしれんが」
「そうですか。それからエリンお嬢様の事を隠していた事で捜索が難航いたしました。これだけ大事になってしまえば、これからも隠し続けるメリットは無いかもしれません」
「そうだな。だが直ぐにとはいかん。エリンの心の傷が癒えてから考えよう」
「かしこまりました」
私は起き上がると鏡の前に立った。何か目線がいつもより高い気がする。そして鏡を見ると凄く違和感がある。見間違え様もない程ハッキリと。
右目が金色になってます。
「はぁ。素敵」
可愛くて、ミステリアスで妖艶な雰囲気まで醸し出しています。私はどれだけ私を魅了してしまうんでしょうか。
「あ、そう言えば私が起きた時に皆が無言になったのって、原因はこれだったのですね」
だからお母様は体に異常が無いか聞いてきたのね。あ、ステータス見れば何か分かるかもしれません。
【種族】人間【祝福】28
【筋力】111【堅牢】68【俊敏】84【体力】70【魔力】172【器用】181【知力】245
【技能】剣技18・体術49・闘気1・纏い7・魔力場1・思考加速1・思考制御3・魔力感知33・感知8・算術50・速読18・真理6・魔力制御30・設計レシピ10・刻印6・雷魔術50・プラズマ1・錬金術1・解眼1
え?この数字?おかしくないですか?それに何故か上がらないはずの【祝福】の数値が上がっています。
それにしても、起きたらいつもより調子が良いと思ったらステータスが上がってたのね。確かステータスの上がり方はそれまでの行動に左右されるって話だったけど、既にお父様のステータスを上回ってるのですが。人には見せられないですね。
それに凄く気持ちが落ち着いてると思ったら、きっとこの思考制御って技能のせいね。これは助かるわね。最近ストレスでかなり暴走気味だったから。
色々気になるけど、恐らくこの【解眼】が金色の目の事ね。これはどうやって使ったら良いの?
取り敢えず右目に魔力を集めてみた。
魔物の
「これは凄いわね。この解析って数値が進むと、より詳しい情報が見られるって事かしら?色んな物に試してみましょう」
色々調べてみたけど、何となく傾向は分かってきたわね。小さくて単純な仕組みの物は解析率が高い。逆に大きな物や複雑な仕組みの物は解析率が低いみたい。
そして解眼はめちゃくちゃ疲れる。使いすぎると右目の痛みと頭痛がする。少しずつ使っていきましょう。
数日するとお姉様が騎士養成学園から帰って来た。
「エリー。心配したのよ。エリーが誘拐されたって聞いた時は心臓止まるかと思ったわ」
「お姉様。ぐるじい」
「あ、ごめんなさい。でも無事で本当に良かったわ。それにエリー大分大きくなったわね」
そう言って優しく頭を撫でてくれた。
「そうだ。今日はエリーのダンスの先生も一緒に来たのよ。エリーもこれから社交界に出るんだからしっかり学ぶのよ」
「はい」
社交界。遂に外に出られる。そして豪華なドレスを着て華やかな場所で華麗なダンスを披露する。
何か想像すると鼻血が出そう。はー。映像として残せれば何度でも見たいのに。男装の令嬢とかいないかしら?ま、流石に居ないわよね。
翌日、早速ダンスのレッスンが始まった。
「先生、足が痛くてもうダメです」
「こればっかりは慣れないとダメよ。皆必ず通る道なんだから」
「そんなー」
私、もうダメかもしれません。こんな靴で踊らせるなんてどうかしています。せっかく綺麗な私の足の指が台無し。
なんか考えてたら沸々と何かの感情が込み上げてくる。
そうだ。靴を作ってしまいましょう。そうだそうだ。お父様に相談しに行きましょう。
「お父様、エリンです」
「入りなさい」
「お父様、実はダンスのレッスンで靴が合わなくて足が痛くて上手く踊れないのです。ですからオーダーメイドの靴を作りたいので職人さんを呼んで頂けないでしょうか?」
「そうか。まあそれ位なら良いだろう。職人が来たら呼びに行かせよう」
「ありがとうございます。お父様」
私はそそくさと部屋から退散した。
「早速。デザイン画を書かなくては」
「最近は落ち着いて来たと思っていたら、今日は突然何事か?と思ったけど、存外普通のお願いだったな」
そして私がお願いした靴は、紐で固定するタイプのヒールなのです。ベルト調整も出来る、すっきりとしてて色気のあるデザイン。アクセントに足首を固定する紐に蝶結びの紐を固定してある。とても素敵。
しかも普通の革の靴と違い、革紐でサイズ調整出来るので靴底さえ作れば直ぐに作れる。最強コスパ。しかも私の綺麗な薄いピンク色の爪も見えるおまけ付き。マニキュアしてるみたい。
早速完成品でダンスのレッスン開始。
「おはようございます。エリン様。あらこのヒールは?」
「足が痛くならないようにオーダーメイドで作って貰いました。それに紐でしっかり固定されてるので、とても動きやすいのです。全力疾走も出来ますよ」
「あら、とても凄いわね。少し近くで見ても良いかしら?」
「はい」
「まあ。紐の横に付いている蝶結びが素敵なアクセントになっているわね。それにこの丈夫な紐できっちり固定されていれば激しい動きも安心ね。紐の固定する場所も上手く考えられていて痛くならずに動かないようになっているのね。それに素足を紐で結ぶなんて、少し危ない色気も感じるわ」
「もし良ければ先生にプレゼント致しますよ。是非使った感想をお聞かせ下さい」
「あら、良いの? 実は私も靴の事は悩んでいたのよ。オリジナルのダンスを作っているのだけど、今の靴では難しい動きが結構あるのよ」
「なるほど。ではダンスのレッスンが終わったら足のサイズを図らせて下さい。デザインと色は一緒に考えましょう」
これでダンスも完璧ね。他の普段使いのサンダルとかも作りましょう。そしてそれを商会で売り出しましょう。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
「分かったわ」
一体何の話でしょう?
全く心当たりが無いのですが。
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