第2話
「おはようございます。エリン様。朝の支度を致しましょう」
私は眠い目を擦りながら朝の挨拶をする。
「おはよう。サーシャ。」
メイドに濡れた布で顔を拭いて貰い、塩で歯を磨いて貰い、軽く全身を拭いて貰いながら着替えを手伝って貰う。
鏡の前に座ると髪型を簡単にセットしてくれる。
私めっちゃ可愛い。
気が付いたら男爵家の次女に転生していた。名前はエリン・フォン・オルレアン。
何故かは分からない。
しかも見た目がゲームのキャラの【エリン】をそのまま幼くした見た目。マジで可愛い。
最初はあまり考える力も無かったが、成長すると段々と複雑な思考も出来る様になって転生した自覚も持てた。
それでも感情のコントロールが上手く行かない為に未だに子供らしい行動が多い。そして性別も女性になった為か、趣味思考も女性寄りになっている。でもやっぱり女の子が好きです。男と結婚するって考えただけで吐き気がします。絶対無理です。でもやっぱり肉体に精神が引っ張られてるんだろうな。
「エリン様。終わりましたので食堂に向かいましょう」
「はーい」
ひょんとイスから降りて部屋の扉を開けて貰うとそこには姉のエレナが待っていた。
「お姉さま」
思わず走り寄ってダイブ。
「エリーは私の事が大好きね」
そう言って優しく抱き締めてくれるお姉さま。優しくて強くて可愛くてカッコ良くて良い匂いがするお姉さま。幸せです。
「お姉さま大好き」
「ありがとう。じゃあ一緒に食堂に行きましょう」
「はーい」
そうして手を繋いで一緒に食堂に向かう。
食堂ではお父様、お母様、お兄様が待っていた。
皆でご飯を食べて居るとお母様から声を掛けられた。
「エリーはご飯を食べるのがとても上手ね。でもお口が小さいんだからもう少し小さくして口に入れないとダメよ」
「はーい」
どうしても前世の感覚に引っ張られて一口を大きくしてしまう。逆に食べ方は前世のお陰でキレイに食べる事が出来る。
あんまり美味しく無いけどね。
でも体は栄養を欲しているのだ。
朝食を食べ終わるとお父様が話始めた。
「エリンは今日で5歳になった。ここまで健康に育ってくれてひと安心だ」
そうなのだ。この世界の文明はちぐはぐながらあまり発展していない。その為出産のリスクも高いし、子供の死亡率も高い。その為5歳に成るまでは外にも出られないし、屋敷の住人以外にも会えない。
「今日から敷地内までの外出は許可する。おめでとう。エリン。良く頑張ったね」
「「おめでとう」」
「ありがとうございます」
私は嬉しくて目を潤ませながらお辞儀をした。
だってさ、もっと小さい時に「何で外に出たらダメなの?」って聞いたら、「小さい時に外に出ると病気になったりして死んじゃう人が多いんだよ」って聞くと怖くて外に出られる訳無いじゃん。
「5歳になると身分証の発行をしないといけないから一緒に執務室に行こう」
「はーい。お父様」
この身分証が無いと町で働く事が出来ないだけではなく、町に入る事も難しいらしい。しかも税金を払わないと身分証の剥奪もあるらしい。怖いね。
お父様と一緒に執務室に向かうと謎の魔道具に手を置く。すると体から何かが抜けて行く感覚がする。
「もう手を離しても良いよ。これがエリンの身分証だよ。大事な物だから無くさないように首に掛けて置くんだよ」
「はーい。お父様」
渡されたのは前世の名刺より少し大きい位のプラスチックの様な透明な板だった。何も書かれてないけど。これ身分証なんだよね?
「この身分証に魔力を流すと自分のステータスが表示されるんだよ。これがお父さんのステータスだよ」
するとお父様が持っていた透明な板に文字が浮かび上がって来た。
【名前】
アームズ・フォン・オルレアン男爵
【年齢】
35歳
【所属】
ムスタール王国・オルレアン領・領主
「おぉー。凄い」
ってかめっちゃハイテクなんだけど?何これ?凄い。
「表の表示がある内にもう一度魔力を流すと裏面にはその人の能力が表示されるんだよ」
【種族】人間【祝福】64
【筋力】89【堅牢】53【俊敏】36【体力】61【魔力】22【器用】40【知力】33
【技能】剣技24・体術19・闘気12・馬術12・感知15・毒耐性6・算術15・速読7・直感4・魔力制御6
「おー。凄い。お父様強い?」
「強いぞ。お父さんは戦争で活躍して貴族の当主になったからな」
凄く自慢気な顔をしている。お父様のこんな顔初めて見たかも。
「先ずはこの身分証に魔力を流す訓練をしてみなさい。これは最低限出来ないといけない事だからね。それからそろそろ勉強も始めようか。先ずは文字の読み書きからだな」
「はーい。頑張ります」
気合いが入るね。やりたい事があり過ぎて何から始めようかな。先ずはステータスの確認がしたいから魔力を流す訓練から始めよう。
そして私は身分証に魔力を流す訓練を始めた。
「身分証は魔力を流す補助が付いてるって言ってたから直ぐに出来ると思ってたけど、なかなか上手く行かないな。魔力を感じる事は出来るけど、中々動かすイメージが湧かないんだよね」
新しい感覚って難しい。尻尾の無い人間に尻尾を動かせって言ってる感覚に近い。今までに無い感覚だから違和感で存在事態は直ぐに感じられたけど、中々難しいな。
少し考え方を変えてみよう。そもそも動かすって考え事態が間違ってるかもしれない。私は体の中にある魔力が水槽の中の水が停滞している状態で、少しかき混ぜると全体が動き出す感覚で動かそうと思っていた。
じゃあ例えば毛細血管の様に全体に張り巡らされてるイメージにしてみよう。すると魔力が流れない原因がある筈だ。じゃあ仮説として、その毛細血管は細すぎて魔力が流れにくい。もしくは塞がっている。そしてそれを解決するにはどうすれば良いか。
【動かす】では無くて、圧力をかけて血管を広げる様に【押し出す】感覚で試してみよう。
胸の辺りから魔力を強く感じる。胸に手を当てて力強く押し出すイメージをする。
「ぬぬぬぬぬぬ」
「ぬぬぬぬぬぬ」
「ぬぬぬぬぬぬ」
すると脳に響く様に「バチン」って音が鳴った気がした。
ゆっくりと目を開けて身分証を見てみると、そこには私の名前が書かれていた。
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