第2話 次の日

今朝は日直で忙しいから先に出ると、昨日の返事が来ていた。


「なんだ今朝も一人か。」


 寂しいなと思ったのか、口に出てしまった。

 今日から授業が始まるのと、昨日早く寝てしまったので今日は起きられた。それでもやっぱり私も魔法は弱くなってきている。以前なならギリギリまで寝ていて、魔法で支度する。覚醒の魔法をかければ一気に起きる。そのあと簡単な魔法で着替え支度ができる。


 しかし今は魔法が使えなくなってきた。使える魔法使えない魔法いろいろあるけれど、朝の支度が使えなくなったのは痛い。ちょっと早めに起きて、髪を整え着替えて朝ご飯に行く。魔法を使えない人がこんなにも面倒なことを毎朝やっているのかと思うと頭が下がる。もう慣れてきたけれど、やはり朝の時間は貴重なので大変だ。


 なぜ私が魔法を使えなくなってきたのか。それはもう恋をしたからである。


 私はトールに恋をしている。幼馴染みのトールはいつもいっしょ、ずっといっしょにいた。恋をしているという感覚がないぐらいだ。


 トールが誰かに恋をしたら嫌だなと思うこと、魔法が少しずつ落ちていること、そう考えるともうこれは恋に落ちている。トールは気づいてないようなので今のところ隠せているようだ。


 そんなことを考えていたら、クラスメイトが、


「サリアおはよう。トールくん大丈夫?二人の話題で持ちきりだよ。」


「なになに?トールがどうしたって?」


「昨日、トールくんとテリアちゃんがいっしょに帰ったみたいよ。」


「そうなの!」


私は驚いてつい大きな声を出してしまった。


「それを後輩たちが、ベストカップルだと言って騒いでいるみたいなの。」


「そっ、そう?別に二人が誰と帰ろうといいんじゃない。私の親友を悲しませたら許さないよ。」


「サリアがそういうんならいいけれど、ちゃんと捕まえてないといなくなっちゃうよ。」


「う、うん。」


 もうクラスメイトの言葉は耳に入ってきていない。


 どうして? 昨日は委員会だって言ってたじゃん。遅くなるのはテリアに会うため?いっしょに帰るため?私ではダメなの?

 いろいろなことが頭の中でぐるぐるし出している。もう完全に嫉妬している。親友にだ。テリアはそんなことしない。じゃあトールがテリアのこと好き?


 教室に入るとトールとテリアが楽しそうに話している。学級委員の二人だから話しているだけだよね。別にお互い好きで会いたいから早めに学校に行ったわけではないよね。いろいろなことが頭の中をぐるぐるしている。


「おはよう。」


 と二人にあいさつする。そうすると楽しそうに話していた二人が話をやめて挨拶する。


「おはようサリア」


「おはよう、ごめん今日はテリアと日直だったから早く行ったんだ。今日はいっしょに帰れるよ。」


「ありがとうトール。」


「なんだか元気ないみたいだけれど大丈夫かい?」


「そ、そう?別に元気ないわけではないよ。」


「それならいいんだけれど。」


 でもこの日は最悪だった。 魔法実技の時間今まで一度も負けたことない相手に負けた。相手は初めて私に勝てたので喜んでいる。どうやら私の魔法が弱くなっているというのに気付いているようだ。魔法の詠唱も間違えて、違う魔法をかけたり。慌ててかけ直したけれどそれも間違っていた。トールが魔法をキャンセルしてくれたので大事に至らなかったけれど、今までにないミスを連発した。


「トール、ありがとう。」


「ちょっと気をつけないとだね。なんだか今日は調子が悪いみたいだけれど大丈夫?」


 全然大丈夫ではない。昨日テリアと帰っていたのは本当か聞きたかった。もし本当なら、テリアのこと好きなのか聞いてみたかった。トールはすぐ隣にいるのにこのことだけは聞けない。


 明日の授業の話、持ち物、帰りに寄りたいスイーツのお店、それは聞けるのに肝心の昨日のことだけ聞けない。怖くて聞けないのだ。


 こんなに長い帰り道は初めてだ。沈黙が怖い。

 

 でももう何も話すことがないのだ。

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