第3話 ママの魔法

「はぁ~。」


 帰ってくるなりため息ついてしまった。


「あらあらどうしたの帰ってくるなりため息なんて。お帰り。」


「今日は散々だったんだよね。」


 私は今日あった散々な中身を話す。本当は思い出したくないが、外に出さないとやってられない。


「それは大変だったわね。でもトールくんがいてくれてよかったわね。どうせ聞いてもらったんでしょ。」


「う、うん。まあ少しは。」


「いつもなら真っ先に全部話して慰めてもらうのに、今日は話していないんだ。どうしてかな~?」


なんだかこのときのママの顔はニヤついていて嫌だ。話題を変えないと。


「ママってむかし魔女だったんだよね。」


「失礼ね。今でも魔女よ。魔力はずいぶん弱くなったけれど。」


「はいはいごめんなさい。でも完全に魔力ってなくなったわけではないわよね。なんで?」


「まあそれについてはまだまだわからないことだらけだけれど、通常恋をすると魔力は失っていく。魔力の源になるものと、人を恋するものが同じだからね。」


「そうだよね。でもママの魔力はゼロではないよね。どうしてなの?」


「まあ人それぞれと言ってしまったら元も子もないけれど、私はパパに愛されているからかな?」


「ここにきてのろけ? 子供の前でやる? でもどういうこと?」


「パパとの生活がまだ魔力の源を作り出してくれているんじゃないかなって思っているのよ。」


「じゃあ愛されている限り魔力はゼロにはならない?」


「たぶんね。だってパパ、ママのこと大好きだからきっとそうよ。」


「だから子供の前でのろけないでよ。」


 これ以上いてもママの話を聞かされるだけだから自分の部屋に行った。テリアもそうだけれど、私も魔力は落ちている。落ちているとは言ってもまだまだ人の魔力よりは上だ。


 でもこのまま魔力がなくなり魔女になることができなくなったらどうしようかと考えた。


「そうだ、トールに私のこと愛してもらえばいいんだ。」


 言った瞬間恥ずかしくなる。 どうやってそうしてもらえばいいんだ。


「魔力がなくなりそうなので私のこと愛してください。」


 とでもいうのだろうか。これは恥ずかしい。そういえばテリアの魔力が下がってきているのも恋のせい?でも全然そんな感じはない。テリアが浮ついているところ見たことない。ちょっと嫌なあの噂話を思い出してしまった。


「もしかしてテリア、トールのこと好きなのかな?」


もう考えても答えが出ないことで頭がぐるぐるする。


幼なじみというだけでトールに好きになってもらおうなんて、ひどすぎる発想だ。


「トールはテリアのこと好きな…。」


なんだか嫌になってくる。考えを消そうとしても消えない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る