第6話 デート

 今日はちゃんと準備もでき慌てることはなかった。服も昨日のうちに選んでおいた。あまりおしゃれは得意ではないけれど、頑張ってみた。鏡の前で変なところが無いかチェックしていたとき、お母様に声をかけられた。


「テリアちゃん今日もデート?」


「お母様、デートじゃないです!トールとふたりで図書館に行くのです!」


「え~、それデートじゃないの?」


「違います。トールが紹介状の期限いっぱいまでは行けるだけ行こうよって話になったんです。」


「はいはいそうでしたね。それにしても今日のお洋服はかわいらしいわね。とっても似合っている。」


「ありがとう、お母様。」


何だか恥ずかしくなった。この間トールにかわいいって言われて何だか嬉しかった。また言われたいなって思ってしまった。だからちょっとかわいい服を選んでみた。


「それでは、図書館デート楽しんできてね。」


「だから違うって!」


 もうだめだ、何言ってもデートにされる。今日はたっぷり時間を取るために午前中から行くことにした。そうしたらお父様が王立図書館近くのカフェを予約してくれた。ここは前々から私が行っていて、お気に入りのところなので嬉しい。


 今日はふたりで調べたいことを持ち寄ってお互いの意見を言い合った。図書館では大きな声を出せないので、お昼ご飯を食べに予約したカフェで意見を言い合った。トールの魔法の地知識は深く、男性魔法にも長けていた。私はあまり男性魔法のことは知らないので勉強になった。


 でもそれより1番嬉しかったのが、このカフェでトールといっしょにいられることだった。このあとまた図書館に戻ってお互いの魔法の知識を深めた。楽しい時間はあっという間に過ぎる。本当にそうだ。


「ごめん、今日も遅くなっちゃったね。」


「うううん、私がもうちょっとって言ったからよね。何だか楽しいんだよね。魔法のこと調べるの。」


「僕もだよ。サリアに追い付きたいんだよね。」


私の心にちくんと来た。


「サリアに…。」


「そう、あの魔力だろ。今の自分じゃサリアの横にはいられない。もっと魔力を強くして、せめて横にいてもいいぐらいにはしたいんだ。」


「そうなんだ…。」


「ずっとサリアの横にいたいんだよね。」


「……」


私は声にならなかった。なぜだろう。さっきまでの楽しい気持ちが一気に沈んで落ち込んでしまった。


「大丈夫、テリア?」


そう言われて


「うん、大丈夫。」


そう言うのが精一杯だった。何だろうこの気持ちは。心が締め付けられる。きゅっと締め付けられて痛い。その後も会話したけれど、何を会話したか覚えていなかった。


上弦の月がもう高いところに出ているのに気がつかなかった。

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