第3話 うわさ

 次の日学校に行ったら、何だか噂になっていた。新聞部が作った校内新聞にスクープが出ていた。


「美男美女カップル誕生!」


「ふたり一緒にいるところを多数が目撃!」


 昨日、トールといっしょに帰ったとき、写真に撮られていたみたい。それを新聞部の人が面白おかしく記事にしたようだ。でもこれは好都合だ。昨晩、満月の下で考えた作戦を後押ししてくれる。


作戦はこうだ。トールにサリアのいいところを言っていく。トールを少しずつサリアと接近させる。今までのように幼なじみとしてではなく、恋人としてだ。

サリアについてはやきもちをやかせて、トールをもっと好きにさせて意識させる。そして恋に落ちてもらい、少しぐらい魔力を落としてもらおう。同じ魔力なら私も勝てないわけではない。


新聞にもあったけれど、何だかちょっと気分が良かった。トールとベストカップルみたいないいこと書かれて少し浮かれてしまう。いつも1番のサリアに勝てた気がした。


 何だかあちこちで噂になっているみたい。そのせいか今日の魔法の実技の時間、サリアの魔法はずいぶん乱れていた。魔法が発動しないなと思いっきりステッキを降ると一気に魔法が出てきて、校舎の壁が黒焦げになっていた。先生が魔法で直していたけれど、サリアが調子が悪いのがわかった。


ちょっとかわいそうなので、


「今日いっしょに帰らない?」


とサリアを誘ってみることにした。


 帰り道、夕日がまだ高いが空の色が変わってきた。私が


「サリア、今日の魔法の実技のとき、調子悪かったみたいだけれど大丈夫?」


と聞いてみた。


「うん、何だかねこのところ魔法のかかりが悪いのよね。」


「どうしたの?体調でも悪いの?」


「今まで体調が悪いぐらいでは魔法の効きが悪くなったことないんだよね。テリアはあるの?」


「まあ、今までサリアが化け物だったってことよ。ふつう月の動きに連動して、新月のときは弱くなり満月の時は強くなっているじゃない。」


「う~ん、感じたことないなぁ。」


さすがサリアである。魔力が半端ない。


「それはそうよ。サリアはふつうに魔法かけても他の人の数倍の威力出ているから、弱くなったなんて感じないんじゃない?」


「そうなんだ。でもそれってとっても弱くなるってことある?術がかからないほどに弱くなる。」


「それはないわね。いくら弱くなっても魔法がかからないというほどではないわ。」


「そうだよね。」


私は少し切り出してみることにした。


「もしかして…、誰か好きになった?」


「な、何言っているのテリア!誰を好きになるっていうの!」


これはかなり動揺している。確認のため聞いてみる。


「例えば…、トールくんとか。」


一瞬の間が入る。


「ないないない、トールとはそういう恋人って感じではなく、いつもいっしょにいるだけって感じかなぁ。」


ああ、もうこれは完全にトールに恋しているわね。確証はないけれど、きっとそう。


 何だか噂が一人歩きして、私とトールがカップルのように言われているけれど、トールと私はぜんぜんその気ではないのでどこ吹く風だった。


 でもサリアはとても気にしているようで、いろいろなところで不調なことが出ていた。私は気持ちがよかった。サリアの上に立っていることで優越感を感じていた。親友だけれど、ちょっとぐらいいいわよね。

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