第3話 テリア

 魔法の実技のときに遠くにいるトールをぼぉっと眺めて目で追ってしまった。なんだか意識してしまって魔法がうまく発動しない。私の視線に気づいたのか笑いながらこっち向かってくる。ちょっと今こっちに来ないで、何だか顔が赤い。


 放課後委員会があるということでトールは遅くなるという。待っていてもいいのだけれど、テリアが、


「今日いっしょに帰らない?」


って言ってきたのでいっしょに帰ることにした。途中までは道が同じなので、3人で帰ることもある。


帰り道、夕日がまだ高いが空の色が変わってきた。テリアが


「サリア、今日の魔法の実技のとき、調子悪かったみたいだけれど大丈夫?」


と聞いてきた。


「うん、何だかこのところ魔法のかかりが悪いのよね。」


「どうしたの?らしくもない?」


「今まで体調が悪いぐらいでは魔法の効きが悪くなったことないんだよね。テリアはあるの?」


「まあ今までサリアが化け物だったってことよ。ふつう月の動きに連動して、新月のときは弱くなり満月の時は強くなっているじゃない。」


「う〜ん、感じたことないなぁ。」


「それそれ。サリアはふつうに魔法かけても他の人の数倍の威力出ているから、弱くなったなんて感じないんじゃない?」


「そうなんだ。でもそれってとっても弱くなるってことある?術がかからないほどに弱くなる。」


「それはないわね。いくら弱くなっても魔法がかからないというほどではないわ。」


「そうだよね。」


「もしかして…、誰か好きになった?」


「な、何言っているのテリア!誰を好きになるっていうの!」


「例えば…、トールくんとか。」


一瞬の間が入る。


「ないないない、トールとはそういう恋人って感じではなく、つもいっしょにいるだけって感じかなぁ。」


「ふ〜ん。でも恋に落ちていたら確実に魔力は落ちるわよ。」


「それこの間ママにも言われた。知らなかったのよね〜。」


「知らなかったの!」


「そんなに?みんな知っていることなの?」


「そうよ。私の家は代々魔女が出やすい家系。お母様は家を存続させるためにお父様と結婚したのよ。」


「えっ、なんで?そうしてふたり愛し合ったら魔女がいなくなるじゃん。」


「そうよ。だから魔女の役は姉のおばさんが担っているの。おばさんは結婚していないし、ずっと一人よ。」


「そうなの!」


「女王に認められた魔女の家系だからこそ、そうやって家をつなげてきたのよ。」


「魔女の家系も大変なんだね〜。考えたことなかった。」


「サリアはのん気ね。」


そのあとテリアと別れた後に「トールと二人で帰ったの?」と聞けばよかったけど聞けなかったことに後悔した。

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