Dimgray:どうして…
「みんな! 聞いてくれ」
誰もが奴に注目する。
その中で、あいつは翔さんを手招きする。もちろん、相変わらず
「来週、
みな、心しておもてなしをするんだぞ、と言うことだろう。わーーーっと歓声と拍手が巻き起こった。
クソ野郎はそう言うと、どさくさに紛れて
「で、ここからが重要な話だ。よぉ~く聞いて欲しい。俺は今日をもって、
薄々知っているニュースとはいえ、室内が静まり返る。それに満足したのか、あいつは更に上機嫌になり、大声で話し始めた。
「これからは、
奴は翔さんの肩を抱き寄せ、満足そうだ。その言葉で、室内に拍手が溢れんばかりに響く。翔さんも嬉しそうに見えた。
続いて翔さんからの挨拶。
このニュースは俺にとっても嬉しいニュースだ。「翔さん、おめでとうございます!」と自然に気持ちが沸き立ってくるのを感じる。
あいつもたまには、いい選択をする。と思いながら、俺は翔さんに拍手を贈っていた。
だけどその間もあいつは、翔さんの話しなど聞きもせず、京香さんの目の前で堂々と
スピーチも終わり、クソ野郎の目が完全に座り始めた頃、京香さんが動いた。
「そろそろお開きにした方が良いわね。
「京香さん…」
そう言うと、京香さんはあいつのところに行き、なにやら話している。その間も
俺は京香さんがママをひっぱだくんじゃないかと、内心冷やひやしていた。
「京香さん、キレないんすかね?」
「うん?」
いつの間にか隣に来た
「京香さんの旦那さんですよね?」
「そうだな」
「奥さんの前であれはないっすよね」
なんだったんだ?
そんなことを考えながら、若手のキャストと片付けを行っていると、リビングからお開きの挨拶が聞こえてきた。
やべっ。俺は慌ててリビングへ顔を出す。あいつはもはや一人で立っていられないほど酔っぱらっている。それを支えるのは
挨拶が終わり割れんばかりの拍手が聞こえ、各々店の女の子たちは、クソ野郎に挨拶をし部屋を出ていく。どうやら
俺はそれを見送り、早くあの男も出ていけ! と念を送る。
だが…いっこうに帰る気配がない。すると、上機嫌のクソが、両サイドに女を従え、俺の前にやって来た。すごく酒臭い。
「よぉ、
「いえ…」
「決めたぞ」
何をだ? 両サイドの女たちも笑みを絶やさない。なんなんだ?
「俺は~、ここに泊まる」
「えっ?」
「なんか文句でもあるのか?」
「…」
俺は何も言い返せなかった。まさかそう来るとは思ってもいなかったんだ。
「さぁ可愛い子猫たちよ、ついてこい」
「もぉ、
そう言うと、クソたちはベッドルームへ向かう。ダメだ。止めてくれ!
俺の心はそう叫んでる。でも笑顔は変わらず張り付いたまま、俺の足も手も…何一つ動かない。
止めてくれ! お願いだ!
クソ野郎が俺の、俺たちの部屋に入っていく。
その時、奴が振り向いた。
「お前も来るか?」
そう言うだけ言って、
京香さんと約束したのに。誰も部屋に入れない、二人だけの秘密の場所だったのに。
パタン。
ゆっくりとドアがしまり、全てが終わった。
俺は何もできず、ただ黒い扉を見続けていた。
「もう…終わりね」
俺のすぐ後ろから、京香さんの声が聞こえた。
それはとても寂しく、呟くような声だった。
「京香さん?」
彼女は俺を見ることもなく、それ以上何も言わず、翔さんに「あとは頼むわね」と言い部屋を出ていってしまった。
待って…、俺をおいていかないでくれ。
俺…俺はどうすれば……?
俺の顔には相変わらず笑顔が張り付いていた。
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