Darkslateblue:探し続ける
「こんな格好でごめんなさいね」
「こちらこそ、こんなに早い時間から申し訳ございません」
俺は翔さんが紹介してくれた銀座のクラブ “ダリア” の扉をくぐった。店内は白とゴールドを基調にした、清潔感のある大人の世界観を持った居心地のいい空間だった。
ダリアのママ
「翔くんにはいつも良くしてもらっているから、彼に頼まれたら無下に断れないわ」
「押しかけてしまって、本当に申し訳ございません…」
いいのよ。と言い
「翔くんから大体のことは聞いたけど…。大変なことに巻き込まれちゃったみたいね」
「あ、いえ…」
「ふぅ〜っ」
うまそうにタバコを吸う。「ありがとう」と言いながら
俺はゴクっと唾を飲みこんでいた。
「で、クリスタルよね?」
「あ、はい」
「
「あ、いえ。そうですよね」
喉が乾く様な気がして、俺は缶コーヒーを飲み干す。そして俺は落ち込んだ顔を作る。
「あ、そんなに落ち込まないで。ちょっとあるかどうか分からないけど、この辺りのお店でクリスタルを扱ってる店をリスト化しておいたから」
「あ、ありがとうございます」
「いいのよ。翔くんによろしくね。
棘のある言葉だった。そりゃそうだ。いくら土地が離れているとはいえ、ライバル店になる可能性もあるわけだ。
俺はもう一度丁寧にお礼を言い、店を出ようとした時
「
「はい」
「
俺が
必ずクリスタルを手に入れる。俺は改めて強く思った。
「ありがとう。俺、やれるだけやってみます!」
この後からが散々だった。
「
やった! 意外と早く見つかるモノだ。俺は
「それ譲っていただけませんか? 次回
「それじゃ~ね」
女はクリスタルを抱え、ボトルにキスをする。この女は何を欲してる? 俺に何を要求するつもりなんだ!?
「現金も1本置いて行けます」
「ふ~ん」
リストを見ると、
その幸子ママが俺を下から上に舐める様に見ている。俺にどうしろと?
「どうすれば…お譲りいただけますか?」
「あなた、
「鬼?」
「あんな男が喜ぶことを私たちがするわけないでしょ? あなたも馬鹿ね」
そう言うとこの女、俺の目の前で無傷のクリスタルのボトルキャップを開け始めたんだ。
「な、何を!」
俺は動けなかった。下手に手を出せば、訴えられかねない。こうゆう女は用意周到にいろいろ考えている。俺の本能がそう告げていた。
「
「幸子さん…。お、落ち着いて」
「とっとと帰れ!」
すごい剣幕で店を追い出されてしまった。いったい
「
今度は何だよ? 入り口の内勤の男にどつかれた。
「お、俺はママにお願いがあって…」
「はぁ~? 会う訳ねーだろ?」
もう一人ガタイの良い、ラガーマンのような男が店内から出てきた。やばっ。俺喧嘩は得意じゃない。
「痛い目見たくなければ、大人しく帰るんだな」
「お、俺はどうしてもママに会って話がしたいんだ。話を聞いて欲しいんです! キャシーさん! お願いです!」
俺は黒づくめの男の間を割って、店内に入ろうとしたその途端!
「えっ?」
地面と天井が逆転した。そしてぶっとばされていた。
「いってぇ~」
俺は背中をしこたま打って、立ち上がるまでに時間を要していた。そこへラガーマンの重たいキックが俺の腹めがけて飛んで来た。
ドスっ。
「くっ…っ」
「これくらいで済んでよかったな。帰れ! 二度とこの店に顔だすな。あのクソ野郎に言っておけ! お前の居場所はないってな」
くそっ。
ただ、幸運なことにみな同じ業界。顔を避けてボディを攻撃してくれる。ありがたいこった。
そろそろ、今日の限られた時間は終わりを迎える。
―― 残りは明日だ…。大丈夫まだあと1日ある。
俺は傷ついた体を引きずりながら
残された時間は…あと少しだ。
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