Purple:始まり
と、言うことでこの日から、俺は
翔さんからは仕事のノウハウを一から教えてもらった。結構スパルタで、大抵の新人はへこたれて辞めていく。逆に、彼の指導に耐えた人材は、
結構接客って大変だ。よく見ていると、いろんなタイプの客がいて、それぞれへの対応も微妙に変化させている。さすが、キャストの面々は気が利いている。
その中でも、純粋に翔さんって言う人はすごい人だった。この
俺からしたら、年上のおっさんなんだけど、落ち着きと安定感ある包容力? 不思議な魅力がある。たぶん、男が男に惚れるっていうのが理解できる。
そして俺は気づいた。この店は基本禁煙なのだ。スタッフもキャストもタバコはNG。だからお客もタバコは吸えない。それはオーナー(京香さんの旦那さん)の強い希望らしい。ということもわかってきた。
そして京香さんのことも。
京香さんは俺が思っていたより、お姉さんだった。もうすぐ40になるそうだ。あの森下グループの一族で、旦那は飲食全般の業務を任されているらしい。その一つがここ、
なんでホストクラブ? って疑問に思う人も多いいはず。実は旦那って言う人は、ここの出身なんだとか。会ったことないけど。
ここは会員制なので、お客の女性たちも遊びを心得ているし一晩で何百万と言う金が動いている。かなり面白い。学校では教わることのない小さな社会だ。
これは京香さんの強い意志なんだろうけど、ここ
慈善事業じゃないって! って思うでしょ? でも不思議にお客は俺たちのために高い酒を選び、お金を落としていってくれる。
毎晩来てくれるお婆ちゃんや、たまに銀座のママって人も訪れていた。不思議な場所だ。
だから俺たちは、会話の引き出しを沢山持つよう指導される。政治・経済からゴシックネタまで、相手に寄り添って話をするためだ。
初めの頃は、「お前は喋らず、周りをよく観察しておけ」と、翔さんに言われてた。
もしかしたら、翔さんも俺が普通の感情ってものを持ち合わせていないことに、この時点から気づいていたのかもしれない。だからどんな仕草でどんなサービスを提供するのが正解なのか、目で見て覚えろってことだと、今ならわかる。
この業界の人は、多分…人一倍感性が豊かで、相手が何を望んでいるのかいち早く理解できるのだろ。そういう人物が、生き残って頂点を極めていく。自ずと客はそうゆうキャストについていくのだ。
「
俺が
初めてだった。
いつも最高級のシャンパンを開け、「頑張ってね」と言って帰るだけのに、今夜は違っていた。
「どうかしらって言われても…」
「翔くん、今夜
「もちろんです」
行ってこい、と翔さんの無言の圧を感じた俺は、別に予定があるわけでもないし、
だから俺は、京香さんの誘いについていった。
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