第4話

「や、ごめん。やっぱ無しで」


 あわてて胸を引く。

 忘れてた。

 HQも見てる可能性あるんだったこれ。こんな、こんなことして。わたし。何がしたいんだろう。殺し続けたせいで、なんか、変なところのたがが外れちゃったのかもしれない。


『おい続けろよっ』


 HQからの通信。女の声。黙っとけよ。


 ミントシガレットを、また胸から出して。1本咥える。今日こればっか。彼。やはり胸を見ている。顔は見てない。嬉しいのか、切ないのか。自分でも分からなかった。胸も自分自身だと思えば、まぁ、わるくはない。

 逆に。

 彼が胸しか見ていないのであれば。わたしの感情に価値はないのかもしれない。


『数年振りに会った好きな子が胸爆盛りだったら見るでしょ普通に』


「黙っとけよ」


 あ。

 やばい声に出しちゃった。

 戦闘中なら絶対にやらない初歩的なミスも。彼の前だと出てきてしまう。いや致命的ではあるけど、目の前にいるのは化物ではなく彼。こっちのほうが致命的か。


「いや。ごめん。なんでもない」


 もう。なんでもないなんて言える感じでも。ないか。

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