第5話

 彼女が立ち上がる。


「数年間。ずっと。戦ってきたの。ずっとずっと」


 彼女がシャツを脱ぐ。


「胸も。筋肉がついたから、ほら。それで押し出されただけ。それだけ」


 彼女の身体。傷だらけだった。


「今も戦ってる。外では、あなたを狙ってる人じゃないものが」


 彼女。咥えていたシガレット。


「これからも。わたしは戦うの。今も通信を聴きながら、ここにいる」


 シガレット。

 なにか言おうとした私の口に。押し付けられる。


「それを吸ってれば、こわいものに会わなくなるよ。吸っててね」


 彼女。にこっと笑って。すくっと立ち上がる。


「じゃあね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る