第20話:鈴木小路家、斜陽
スモークガラスのハイエースが数台、閑静な住宅街を走っていた。
目的地は、
車に積み込まれた火炎瓶には増粘剤が混合されている。ナパーム弾と大差無い代物だ。デカい木造建築はさぞかし派手に燃えるだろう。
いよいよだ。
士気も揚々と、
日辻川良太。
切込み隊長は目を疑った。彼は学園で警備隊の襲撃を受けているはず。比較的行儀のいい組員を集めたベルロード安全保障だが、学園班のリーダーは
面白い。
まずは挨拶代わりに、このカンガルーバンパーをどう
向こう傷の目立つ顔に不適な笑みを浮かべ、思い切りアクセルを踏み込んだ鈴木小路一家の切り込み隊長は、エアバッグごと平らにひしゃげて帰らぬ人となった。
意味が分からない。
切り込み隊長の車が縦に潰れて全長が半分以下になっている。まるで巨大な壁に正面衝突したかのように。
何が起きた? どうなったらそうなる?
「ちっ、危ないもん山ほど積みやがって。こんなとこで爆発炎上したらどうすんだよ」
後続車に乗っていた組員Aの驚愕はそれだけでは済まなかった。
次の瞬間、空気の唸る音を残して、潰れたハイエースが消えたのだ。
後には、一人の少年が残るのみ。
やべぇ、クスリをやり過ぎたか? 日辻川家との全面戦争を前にして、テンション上がり過ぎちまったからなぁ……
呆然と、近付いてくる良太を見つめる組員A。自慢の銃を持つ手が震えるのも、クスリのせいだろうか。
轟音とともに、乗っていた車が横転する。
「この車に乗ってる連中も全部ダメか。錆びた鉄屑やら腐った死骸やらが混ざってる感じの奴等はもう手遅れだな。目的のためなら人を傷付けるどころか、人を傷付けるのが目的みたいな連中だ」
続いて、空に舞い上がるかのような浮遊感。
こりゃダメだ。飛んじまってる。キメ過ぎたんだ。
それが組員Aその他3名の、最後の思考だった。
その数秒後、10km程離れた鈴木小路家本宅に轟音と爆音が鳴り響き、威容を誇っていた豪邸は派手に炎上した。
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