第1回カクヨム短歌・俳句コンテストの募集要項には次の一文が添えられています。
> また、今回は、ふだん短歌や俳句に馴染みのない方にもぜひ挑戦いただければと思っております。
カクヨムの書き手の層を鑑みると、この意図は好ましいものです。日頃軽い小説を書いている人たちにとって日本が持つ詩形に触れる好機を設けています。
しかし、です。常に短歌に親しんできた人たちがカクヨム上で短歌を詠むとどうなるか。
それを見せつけているのが本作です。精緻な旧仮名遣いと旧字体。背景には幅広い文献の蓄積。
これが古文の素養です。
かといって綺麗事ではありません。作中には、春を覚えた少年が古い文体を掻き分けて読み解けば心躍るであろう艶のある歌もあります。これの意味を知りたいなら古文を学ぶのがいいと誑かせるほどに。
背景の全てを追いかけることは極めて難しいですが、一番美味しいところを取り出した本作を味わいましょう。