吹く風に骸は晒れて鵺鳥の呻吟ひ啼ける骨哨となる


吹く風にむくろれて鵺鳥の呻吟のどよける骨哨ほねぶえとなる



 関東地方は空梅雨気味に暑い日が続いているが、僕の郷里の九州は豪雨に見舞われ、あちこちの被害も報道されており、係累のことなどを思うと不安で憂鬱な気分である。


 ちょうど二年前には、熱海伊豆山の土石流災害が起きた。多くの人が亡くなり、人以外の多くの命もまた失われたことだろう。

 自然の猛威を前に、生きものの命などひとたまりもない。


 拙歌の舞台はこの時季とは反対の冬。


 木枯らし吹きすさぶ枯野をイメージしている。

 野晒しとなった脊椎動物――人も含めた――の遺骸。

 その肋骨などに強い風が吹きつけ、笛のような音を立てている様子を想像した。


 この世に生を受けたものは、全て骸となる。

 現下に生あるものを全て集めた数より、遥かに遥かに多くの遺骸が何億年にもわたって積み重ねられてきた。


 この世は至る所が死処であり、地球とは壮大なる墓場である。




 

 

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