裳裾なる脛の肉叢白百合の香も詳しもよ蘂も撓に
白百合の花と言えば、清楚かつ官能的なたたずまいと香りの高さ。
漏斗状を成した花弁の内側で、
清楚に見せかけた中に潜む、強い執着心のようなものを、この花粉は連想させる。
夏目漱石の小説には、色々な場面で百合が効果的に使われている。
例えば、『夢十夜』の「第一夜」。
「百年待つてゐて下さい」と遺言して死んだ女の墓の前で、赤い日が昇って沈むのを、一つ、二つと数えながら待っている男。あるとき、その男の胸の辺りに向かって、一本の花茎が伸び、その
その表徴的なシーンの様子を、漱石は次のように綴っている。
眞白な百合が鼻の先で骨に
「百年はもう來てゐたんだな」とこの時始めて氣がついた。
実に詩的な表現である。
或いは、『それから』においては、主人公・代助と、友人の妹でかつ別の友人の妻である三千代との間に去来する、背徳感漂う情緒の表徴として描かれている。
一例として、次のような記述。
なお、拙歌中に用いた上代語「
「百合」という文字自体が惹起する印象、あるいは、この語が醸す女性同士のある種の関係性に関するコノテーションなども含め、この花には、単純で表層的な解釈を拒む、複雑に入り組んだ、精細かつ繊細な美が薫り立つように思われる。
そのような複雑な美に対しては、「くはし」という表現が似つかわしい。
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