黃昏の浦廻の磯を風の共蟹の頭を撫でゝ渡らな


黃昏たそかれ浦廻うらみいそを風のむたかにかしらでゝ渡らな



 磯の蟹の爪を振れる、しとへど、人影寄らばこと〴〵く逃げ失す。

 常に持餘もてあませる吾が身の、更にかれを脅かすをいとへど、かた無し。

 むなしき肉體しゝむら打棄うちすてゝ、目にも見えず、るもりかてぬものとなりて、風のむたかにかしらを吹かひて渡らなとそふ。







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