第11話
「うわっ!」
僕に向かって一直線に突っ込んできたワイルドベア。その突進を横っ飛びで躱す。ワイルドベアはそのままの勢いで僕の後ろにあった木にぶつかりへし折った。かなりの勢いでぶつかったはずなのにまるで堪えていない。
「ソラ、大丈夫!?」
「なんとかね。動きが直線的だから避けられたよ」
「とにかくこいつをなんとかしないと! ソラはこいつを倒す方法ある?」
「弱点に全力の一撃をお見舞いするくらいしか思いつかないよ」
強靭な顎での噛み付き。
鋭い爪で引き裂くかのような薙ぎ払い。
巨体からの突進。
それらをなんとか避けながらマキナちゃんと対策を話す。正直僕一人ではこいつを倒せる気がしない。
「私もこいつを仕留めるくらいの魔法を使うには少し時間が必要だよ! ソラ、こいつを引き付けていられる?」
「なんとかやってみる!」
僕が攻撃するよりもマキナちゃんの魔法の方が確実だ。とはいえ普段ノータイムで使っているような魔法ではこいつには効かないみたいだ。集中して魔力を溜めているマキナちゃんを狙わせないために、僕に意識を向けさせなければ。
僕を引き裂こうとして振り下ろしてきた爪を避け、体勢が低くなったワイルドベアの鼻先を蹴りつける。
「グォッ!?」
反撃を警戒していたため軽い一撃だったが、ワイルドベアを僕に集中させることには成功したようだ。僕を睨み付けているこいつに向かって地面を蹴り上げ、砂煙を立てる。立てた砂煙を操作して目つぶしを狙う。
「グォォォッ!」
目つぶし自体は上手くいったが失敗したかもしれない。手当たり次第に周囲を攻撃している。それに臭いでこちらの位置をある程度把握しているのか僕に向かって大雑把に攻撃してくる。はっきりこちらを認識せずに攻撃している分、どこを狙っているのかわかりにくく攻撃を避けづらい。異能で相手の動きを把握できているからなんとか避けられているが、そうでなければとっくに直撃していただろう。
「ソラ、そろそろ準備できる!」
「わかった!」
どうやらマキナちゃんの魔法の準備ができたようだ。様子を見計らってワイルドベアから距離をとろう。大振りの攻撃を避けた隙をついて、後ろに跳ぼうとしたとき急に地面が光り始めた。これって僕がこの世界に来た時の……
「危ない!」
急に横から突き飛ばされて地面を転がる。一体何が?
「え?」
マキナちゃんが樹に叩きつけられて倒れている。なんで?動揺で思考が纏まらない。頭がぐらぐらする。
どうしてマキナちゃんが倒れている。
僕のことを庇ったからだ。
僕が光に気を取られてこいつから意識を逸らしたからだ。
「グォォォッ!」
ワイルドベアの雄叫びで正気に戻り、薙ぎ払いを咄嗟に躱した。
狼狽えている場合じゃない。異能で感知したところ呼吸をしているみたいだから、無事のようだけど倒れたまま動く様子がない。異能では怪我の具合までは確認できないため、早くマキナちゃんのところまで行きたいがこいつが近くにいるうちはそれもできない。むしろ意識の無いマキナちゃんを狙われて余計に危険になる。
とにかく今はマキナちゃんを助けるためにもこいつをどうにかしなければならない。さっきまでのように避けてばかりではなく、攻撃を仕掛けるべく飛び出した。
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