第10話
村の中心から少し離れた場所にある一軒の小さな家。
そこがウルフィンさんの住んでいる家だった。森の異変調査から戻ってきたウルフィンさんに挨拶がてら、森に入って問題ないか確認しに僕とマキナちゃんはウルフィンさんの家に訪れていた。
「おかえりなさい、ウルフィンさん。ご無事でなによりです」
「おはよー、ウルフィンおじさん」
「よお、ソラ、マキナ。久しぶりだな」
「久しぶりってほどじゃないと思うけど… 今回の異変は何が原因だったの?」
「森の深部でグランサーペントの変異個体が発生してたんだ。そいつにビビッて元々いた奴らがこっちに流れてきたせいで森全体の縄張りが動いたって感じだな」
グランサーペント?ウルフィンさんの授業では教えてもらってない名前だ。聞き覚えのない名前に首を傾げていると、マキナちゃんがウルフィンさんに質問していた。
「グランサーペントってどんな奴? この森にそんなのいたっけ?」
「見た目はでけぇ蛇だな。ここの森には生息してねぇ」
「確かにそんなの見たことないかも。どっかから流れてきたの?」
「さっき発生したって言ったろ。魔力溜まりから生まれたんだ」
「森の魔力溜まりからはそんなに強い魔物は発生しないって言ってませんでしたっけ?」
森の魔力溜まりはそこまで大きなものじゃないから大した奴は生まれないって教わった気がする。
「本来はそうなんだが近くに魔物の食い残した死体が何体かあってな。それと合わさって普段より強いのが生まれたってとこだな」
「変異個体って言ってたけど、どう違ったの?」
「通常は体高2メートル程度、体長は15メートルを超える位なんだが、今回の奴は倍以上のサイズだったな」
「うわぁ、そんなの余裕で倒すなんておじさん相変わらず強いね」
「そんな大した奴じゃねぇよ。あいつ倒すのより調べて回った時間のが長かったくらいだ」
後でマキナちゃんに聞いた話だけど変異個体って通常の個体よりかなり強いらしい。単純にウルフィンさんが強すぎるだけだとか。異変のことについて質問攻めにしてしまったが律儀にウルフィンさんは答えてくれる。いい加減質問を切り上げて森に入ってもいいか聞いてみよう。
「異変が解決したってことはもう森に入ってもいいんでしょうか?」
「そうだな、あいつを仕留めたのも数日前だしそろそろ逃げ出した奴らも元の住処に戻ってるだろ」
ウルフィンさんから許可が出た。また森の探索を再開しよう。
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村から少し離れたを僕とマキナちゃんは歩いていた。
森に入っていなかったのは、異変が起きてウルフィンさんが戻ってくるまでの短い間のはずなのに、なんだか久々な気がする。
「前に森に入ってからそんなに経っていないはずなのに久しぶりな感じー」
どうもマキナちゃんも僕と同じようなことを考えていたみたいだ。
「感覚を取り戻すためにも今日は軽めにしようか」
「そうだね、ウルフィンおじさんもあんまり森の奥まで行くなって言ってたし」
まだ森が完全に以前のようにはなっていないから、村の近場にしておけとのことだった。忠告に従って初めての探索の時と同じ程度の範囲で行動することにする。
「こんなに獲物を見かけないのなんて最初の時以来じゃない?」
「やっぱりまだ元通りにはなってないんだね」
「あまり無理しない程度に探してみるか」
森に入ってから全く獲物を見かけない。マキナちゃんが言うようにまだ森は元通りには戻ってないみたいだ。
今日は手ぶらで帰ることになるかもなんて考えながらマキナちゃんに声をかける。
「今日はもう諦めて帰ろうか」
「うん。しばらくはこんな感じで軽めに済ませることになるかもね」
森が元通りになるまではこんな状況が続きそうだ。
二人で村に向かって歩き出そうとすると僕の感知範囲に何かが入ってきた。
何だ?かなりでかい。この辺にここまででかい奴は居なかったはずだ。どうやら向こうもこちらに気づいているようで、まっすぐに向かってくる。感知のみに異能を使っているからそこそこ距離があるのにこちらに気づくなんて。
マキナちゃんもどうやら気づいたようで声をかけてくる。
「ソラ……気づいてる?」
「うん、でかいのがこっちに向かってくる」
「かなり魔力が強い。多分森の奥から逃げてきた奴だと思う」
「逃げられるかな?」
「難しいかも、きっと追いつかれる」
そうこう言っているうちにかなり近くまで来てる。二人で警戒しながら身構える。
見えた。
熊だ。でかい、立ち上がれば5メートル以上ありそうだ。あの巨体で森の中を駆けてきたってのか?
僕らを見ながらゆっくり距離を詰めてくる。隙を見せたら一気に襲い掛かられそうだ。
「うわ……ワイルドベアの変異個体だ。こいつを倒すのは骨が折れるかも」
通常のワイルドベアはこいつの半分くらいのサイズだと以前教わった気がする。
様子を見ている僕らに焦れたのか、一直線に襲い掛かってきた。
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