第9話
ファニアの森にある村。
その村から少し離れた場所にある畑に僕達はいた。
「駄目だ。こっちもやられちまってるね」
最近ペルラさんの畑の作物が荒らされていることがあるという話を聞いて、僕とマキナちゃんは一緒に様子を見に来ていた。
今までそんなことはなかったのにここ数日で急に荒らされ始めたらしい。
「お婆ちゃん畑の周りに獣除けと魔物除け撒いてなかったっけ?」
「撒いてたさ、全部の畑に周辺にね。やっぱり森の奥で何かあったのかもしれないね」
なんでも獣除けと魔物除けは撒いておけば嫌がって近くに寄りにくくなるとか。とはいえ嫌がるだけでよっぽど腹が空いてるときは寄ってくるらしい。ただ森には食べるものがたくさんあるから滅多に畑を荒らされることはないんだとか。
「森の奥からこの辺にはいないようなやつが出てきたんですかね?」
「かもしんないね。この辺の奴らが縄張りから追い出されちまったのかもね」
「飯にありつけなくなって嫌でも畑に入ってきたってことですか」
「それで? お婆ちゃん私たちに用があるって言ってたけど何?」
「日中の間だけでいいから畑に入ろうとしている奴らを追っ払ってほしいのさ」
「夜の間に荒らされることもあるんじゃないですか?」
「あるだろうねぇ。でもいいのさ、ウルフィンさんが村の暇してる奴らを連れて森の奥を見に行ったからね。あと数日もすれば元の森に戻るさ」
先日ウルフィンさんが異変の解決の為に森の奥に向かったらしい。ウルフィンさんが異変を解決するまでの間、畑を警備してくれとのことだった。
「私は別にいいけどソラは?」
「僕もいいですよ。どこまで力になれるかわからないですが引き受けました」
「悪いね。あたしも若けりゃ一人でどうにでもなったんだけど流石にこの歳じゃ体力が続かなくてね」
かなり元気だからそんな印象はないがペルラさんは結構な御歳らしい。若い頃は一人でどうとでもなったというが、この村の大人はみんな一通り狩りできるから本当にどうにかできてそうだ。
そんなこんなで僕とマキナちゃんの畑警備が始まった。
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ペルラさんから畑警備を頼まれてから数日、森の調査に向かっていたウルフィンさん達が村に帰ってきた。どうやら異変を解決できたみたいだ。後で挨拶に行くついでにどんな異変だったのか聞いてみよう。
異変が解決したということで、僕たちの畑警備も今日で最後になった。畑警備といっても普段は近寄らないような小動物や魔物を追い払うだけだったので、特に大変なことではなかった。
「あんたたち、面倒かけたね。助かったよ」
「いえ、そこまで大変ではなかったですしお役に立ててよかったです」
「これで畑を荒らす奴らがいなくなるといーね」
「少しすれば森も元に戻るはずさ、手間賃として収穫した野菜を持ってっとくれ」
「ありがとうございます。いただきます」
収穫した野菜を分けてもらって僕らはペルラさんと別れた。今日はもう遅いし明日ウルフィンさんに会いに行こうと思う。
「これでまた森に入ることができるね」
「そうだね、ただウルフィンさんに入って問題ないか確認してみないとね」
「じゃあ今から聞きに行く?」
「今日はもう遅いし明日にしよっか」
「なら早く家に帰って晩御飯食べよっ」
マキナちゃんと話しながら家に向かう。というかナチュラルにマキナちゃん達と晩御飯を食べることになっている。自立できるようにって鍛え始めたのにほぼ毎日お世話になっているし、家なんてせっかく建ててもらったのに着替えたり寝る為だけに使っている有様だ。もしかして半分くらいユキナさんの家の住人になっているのでは?なんてことを考えていると家に着いた。
「ただいまー」
家に入るマキナちゃんについていって僕も中に入る。なんの疑問もなくお邪魔している時点でもはや手遅れなのでは?と思った。
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