第8話






 今日はソラの初めての森の探索の付き添いに来てる。ウルフィンさんのところに長いこと通っていたし、森に入る許可も出たって話だから実力的にも問題ないはず。


 森の探索の未経験者はしばらくの間は慣れている人間が付き添うことになっている。今回私が暇をしていて、近所に住んでいて気心の知れた仲だということで白羽の矢が立った。元々付き添いに手を挙げようとおもっていたので渡りに船とばかりに了承した。


 ソラは初めての探索ということでだいぶ緊張してるみたいで動きがちょっとぎこちない。気を抜くのはよくないけどこの状態なのもあまり良くないということで雑談をして緊張をほぐすことにする。



「ソラ大丈夫? 緊張してるの?」


「う、うん、大丈夫。緊張はちょっとしてるかな」


「まあ最初はそんなもんだよね。何かあったら私が助けてあげるから安心してよ」


「ありがとう。そのときはお願いするよ」


 

 しばらく話しながら、森の果物を採っているとソラもある程度落ち着いてきたみたい。体の硬さがとれてぎこちなさが無くなった。


 果物に関しては問題なく集まったけど、目標の一つである獣とは出くわしていない。村の近くってのもあるし、話しながら移動していたから逃げてしまったのかもしれない。魔物なんかはその程度で逃げ出したりしないけど、もしかしたら最近村の誰かに駆除されていたのかも。


 このまま果物だけってのも味気ないので、森の入り口付近まで足を延ばしてみることにした。


 森の入り口付近まで足を延ばした甲斐があって、フォレストクロウを見つけた。大した強さじゃないから怪我をする危険性も少ないし、初めての獲物としてはちょうどいいかも。


 そのまま気づかれぬよう身を隠し、ソラのお手並み拝見といく。


 後ろからにじり寄っている最中に気づかれていた。逃げられちゃうかなと思っているとうまく飛び立てずに藻搔いていた。その隙にソラが捕まえてとどめを刺していた。


 ひとまず目標達成ということでソラに声をかける。



「やったじゃん。今日の目標達成だね」


「なんとかなったよ。とりあえずこいつの処理をしないとね」



 そういいながら血抜きを始めるソラの様子を黙ってみていると、フォレストクロウからすごい勢いで血が噴き出し始めた。どうやら異能を使って一気に血を抜いたみたい。本人はよく大した異能じゃないといいているけど、傍から見ていると便利な異能だ。


 そんなことを考えていると内臓を処分しようとしている。自分では冷やせないからこの場で捨てていくつもりみたいだ。もったいないから私が冷やしてあげると提案してそのまま内臓も持っていく。


 初めての森の探索は無事終わったということで村に向かって歩き出す。


 今日はソラとユキナお姉ちゃんと3人で焼肉パーティーだ!






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 森の探索を終えてマキナちゃんと村に帰ってきたときにはもう日が傾いていた。


 村に着いたことに安心して一息ついているとマキナちゃんが話しかけてくる。


「ソラ、今日は初めての探索記念ってことでその肉を使って、うちで焼肉パーティーしようよ」


「そうだね、いつも二人にはお世話になってるしこの肉でよければみんなで食べよっか」



 二人で今日の晩御飯の話をしながら家に向かっていると、僕達が帰ってきたことに気づいた村の人から声をかけられる。



「おや、お帰り二人とも。その様子だと何事もなく終わったようだね」



 声をかけてきたのは普人種のペルラさん。趣味で農業をやっていて、この村で食べられる野菜の半分以上を作っているお婆ちゃんだ。



「はい。おかげさまで怪我無く無事に帰ってくることができました」


「お婆ちゃん、ただいまー」


「マキちゃん、ソラちゃんの探索の様子はどうだったんだい?」


「初めてだと考えたら上出来だったと思うよ。獲物も一人で仕留めたし」


「へぇ、やるじゃないか。最初は手伝ってもらったり逃げられちまったりってことが多いのに」



 目の前で自分の話をされるのは少し照れる。そんな僕の様子を見たペルラさんが声をかけてきた。



「引き留めちまって悪かったね。早いところユキちゃんにも顔を見せてやりな」



 そう言ってペルラさんは行ってしまった。言われたとおりに早く家に戻ろう。






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 家の近くでマキナちゃんと別れる。肉はマキナちゃんに預けておいた。


 家に着いたらまずは汚れを落とす。用意していた水を使って体を拭っていく。魔力が使えれば簡単にシャワーを浴びれる道具が各家に備え付けられてるんだけど、魔力のない僕には全く使うことができない。とはいえ異能を使って汗や汚れだけ浮かせれば、体を清めることは簡単にできる。戦闘にはあまり使えないが生活する上では地味に便利だ。


 汚れを落として身支度を済ませたら、お隣さんに直行だ。


 今日食べるものが自分の力で手に入れたものだと考えると、少しは自立ができた気がして安心する。まだまだ周りに頼ることはあるだろうが、最低限自分の力で生活することができるようになった。そんなことを考えながら僕は自分の家を出た。

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