暴かれた黒幕

目の前に立っていたのは、既に死んだと思っていた神室であった、その姿を目撃した葛城は思わず、驚きを隠せずにいた、「何しているんですか神室警部!?」葛城の様子を見た吾妻はすぐにどういう事なのかを理解し、突如拳銃を神室に向けて構えだした、「久しぶりだな神室、何故お前がここにいる?」 同じく神室も険しい表情で吾妻に向けて拳銃を構えていた、「とんだ期待はずれだったな吾妻、お前なら復讐に駆られて蛭間を殺すと思っていたが」車内は一気に緊迫感が増してきた、「俺の携帯に送られてきた匿名の相手は、まさかお前だとはな、お前は警察が誇れる捜査一課の警部だろ!」吾妻は怒りを滲ませながら黒幕の一人であった神室にそう言い放った、「吾妻、お前は何もわかっていない、本当の闇に踏み込むためには、何かを犠牲にしなければならないのだと言うことが、」 すると神室は目線を拘束された状態にある蛭間に向けた、「吾妻、今なら見逃してやる、警察の威信にかけて蛭間を渡せ!」

吾妻はふと後ろを振り向き、こちらを黙って睨み付ける蛭間を覗いたその時、「ブハハハハハハハハハ!!!」 先程まで静かだった蛭間が突然、腹から笑いだし始めた、「ギャハハハハハ!」意味もなく笑いだす蛭間に吾妻は困惑した、「あの野郎…!葛城やるんだ!」痺れを切らした神室がそう言うと、吾妻の後ろにいた葛城が突如立ち上がって蛭間の背後に回っていった、「おい!何している!」慌てて吾妻は後ろに視線を向けた瞬間、神室が隙を見て、突如吾妻の拳銃を奪いにかかってきた、「ドン!」突如背後から来た神室に慌てて抵抗した吾妻は座席に体をぶつけながら、激しく二人は揉め始めた、「諦めろ吾妻…!」やがて仰向けになった吾妻を神室は上から頬を殴りかかろうとしたのを、吾妻は神室の顔を蹴った、「ブッ!」鼻から出血し始めた神室は、怒りを露にした目付きで吾妻を睨み付けて、ゆっくりとその場から立ち上がった、「失せろ…」次の瞬間、神室は吾妻にむけて拳銃を振り上げた、吾妻はすぐに身を守る為、座席へと飛び込んだ、「バン!バン!バン!」神室の放った三発の銃弾は、吾妻の左足を掠った、しかし、神室の殺意は収まりきれず、すぐに又発砲しようとした時、吾妻は座席から飛び出し、神室の頬に殴りかかった、すると神室は吾妻の腹に勢いよく蹴り上げて、吾妻を反対の座席へと押し出した、「グウワァァァ!」吾妻は脇腹を押さえ再び立ち上がると、拳を握り締めて勢いよく飛び出した、一方の神室は瞬時に吾妻を撃とうと右腕を振り上げたその時、吾妻の左手が神室の右腕を押さえつけ、固定されて動けないまま、吾妻が目の前に飛び込んできた、「クソ野郎が…」神室は回避することが出来ず、吾妻に強く殴り付けられた、「ボコ!ボコ!」吾妻の両拳が神室の頬に思いっきり打ち付けられるなか、どうにか反撃しようと殴り返すも、反撃する力が出ず、後ろに殴られ仕舞いであった、やがて握っていた拳銃も落とし、抵抗する力が失くなっていくと、神室は力つきてその場で倒れ込んだ、「ブフッ!」口から出血し、ボロボロになった神室は痛みによって立ち上がることは出来ず、その場で悶えた、「はぁ…はぁ…!」吾妻は激しく息を切らし神室を覗いていると、「バーーン!」背後から突然の銃声が響き渡り、すぐに後ろを振り返ると、そこには、神室が落とした拳銃で葛城を人質に取る、厄介な人物である蛭間が拘束を解かれて立っていた、「はぁ…はぁ…」吾妻は落胆するような目で二人を見ていた、よく見ると人質に取られる葛城の右膝には、銃弾の後が残っており、恐らく神室の放った弾が命中したのだと考えた、「ハハハハ、」。


「班長!今の音は?」前の車両から突如聞こえた銃声に異変を感じた山崎はすぐに班長である清原にそう問いかけると、清原はすぐに拳銃を取り出し、2号車に突入しようとしたものの、何故かさっきまで空いていた筈のドアがロックされており、力付くで抉じ開けようするも、開ける事が出来なかった、「どうしたんですか班長?」 「誰かがドアをロックした!」。




警視庁内では、一課長の鈴木、高村、そして長谷川は足早に会議室へと向かっていた、「間もなく列車は終点駅東京へと到着します、」  「高村管理監、現場には大量の警官隊を導入しろ、容疑者は武器を所持している、もしかするとホームは銃撃戦になり得るかもしれない!」鈴木は険しい表情で高村にそう忠告した、「承知しました、至急警官を増員させます。」 

同じく二人と共に同行する麻薬取締部、部長の長谷川は、自身が任務を命じた葉山に電話をかけていたが、既に葉山は殺されており電話に出る筈もなかった、「長谷川部長、彼の死は決して無駄にしません」長谷川の様子を見た鈴木は、そう一言言葉を投げ掛けた、「私は、例の製薬会社が何か関わっていないか調べてみます!」長谷川は鈴木の顔を真剣な目付きで見つめながら応えた、その時、ようやく会議室へと辿り着こうとしていた寸前に、会議室の外で数人の職員がこちらが来るのを待っていたかのように、その場に立っていた、すると、職員の間を掻き分けて警視正の岡元が鈴木の前に現れた、「警視正!」慌てて鈴木達は頭を下げて挨拶すると、岡元はかなり険しい表情を浮かべていた、「鈴木、事件についてマスコミから情報が漏れた、恐らく、盛岡駅で避難した乗客から漏れたのだろう」  「警視正、それでは…」   「至急会見を開く、今後の指揮は管理監の高村に任せる事になった」 岡元が放ったその言葉に思いもよらぬタイミングで鈴木は捜査の指揮から降りなければ行けなくなってしまった、不安げな表情を浮かべながら横にいる高村の方を振り向くと、高村は真剣な眼差しで鈴木の方を見ており、目線があうと高村は口を閉じたまま、静かに頷いた、「高村、後は任せた、」

そう呟くと、鈴木は岡元と共に足早で会見場へと向かっていった、二人が去った後、再び会議室へと戻った高村は、本部の席へと座ると、会議室に残る捜査員達に指令を下し始めた、「東京駅にてSATを要請する!、何としてでも蛭間を確保しろ!」  その高村の強い言葉と共に、捜査員達は一斉に会議室から飛び出していった。





「もうすぐ東京駅に着く、このまま抵抗し続けるのは、もう無意味な事だぞ!」吾妻を拳銃を向けながら、負傷した葛城を人質にとる蛭間にどうにかして警告をかけていた、しかし、蛭間は無表情な顔で葛城を抱き抱えながら、頭部に銃口を突きつけたままでいる、葛城は激痛に悶えながら吾妻の方を見つめていた、「吾妻さん…」

思わず吾妻は深く息を呑み込み、ふと車両の窓の外を覗くと、外は既に薄暗くなっており、都心部が顔を出していた、すると、蛭間は葛城の頭部につけていた銃口の向きを、吾妻の方へと変えてきた、「無意味な事は、やってみないとわからないでしょ?」そう呟くと、蛭間は銃口を向けたままゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた、「コツ、コツ、」蛭間が近付くに連れて、自身の動悸が早くなっていることに気がついた、「コツ、コツ、コツ、」やがて吾妻の目の前へとつくと、互いが拳銃を向けながら睨みを効かせていた、ふと吾妻は目線を反らすと、視線の先には間もなく東京駅が見えてきた、こちらを見つめる蛭間は薄気味悪く、笑みを浮かべている、そんな蛭間に吾妻は一言言い放った、「もっと早く逃げるべきだったな、フッ、」 すると吾妻も薄く笑みを浮かべてきた、可笑しな笑みに疑問を浮かべた蛭間は、意を決して吾妻の頭に発砲しようとした、次の瞬間、「ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

神室が仕掛けていた爆弾が、突如として真ん中の車両内にて爆発が起きた、すると、爆風の衝撃によって、列車は大きく揺れだし、線路の上から吹き飛ばされ、近くの道路へと激しく落ちていった、列車が落ちるその瞬間、凄まじい衝撃音がその場に鳴り響き渡った。

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