裏切り者
30分前、警視庁内では、再び捜査員達が会議室へと集められていた、刻々と終点の東京駅へと迫る列車に、会議室内で待機を命じられている捜査員達は皆がソワソワと慌ただしい空気が流れている、そんな時、本部の席から突然立ち上がった鈴木の一言で会議は開始された、「はやぶさを遠隔操作している容疑者について、サイバー犯罪対策課から報告が出てきた。皆藤、」
鈴木はそう告げると、本部と近い席に座っていたサイバー班副長の皆藤が立ち上がると、本部の席へと足早に歩きだした、眼鏡をかけた堅物そうな人物である皆藤が気になる高村は、ふと目線を気にしながら、皆藤の様子を伺った、やがて本部の席へと座り込み、テーブルに取り付けられたマイクを近づけ報告し始めた、「新幹線はやぶさを遠隔操作している人物について、ある程度の予測が推測できたので報告します。まずはこの列車を遠隔操作されたと確認できたのは、今朝の11時であることは確認できました、しかし第三者人物が列車のシステムをハッキングするには、直接列車内部に取り付けれているコンピューターに入らなければなりません。」
すると遠くの席から、一人の捜査員が声を上げてきた、「つまり容疑者は、現在列車内にいると言うことでしょうか?」その問いかけで、一斉に周りにいた捜査員達はざわつき始めた、「ザワザワ!」 騒がしくなった会議室内に、鈴木は険しい表情で隣の高村に目を向けた、高村はすぐに察知し、前のテーブル置かれた状態のマイクを手に取り、静かにするよう呼び掛けた、「大事な会議中だぞ!静粛に、」響き渡る高村の声で、騒がしかった捜査員達は静まり返っていった、皆藤はもう一度話始める前に軽く咳き込むと、鋭い視線で周囲を見つめながら再び話し始めた、「列車のサーバー内部に入り込んだ形跡を調べました。列車を発車させた際に遠隔操作を行った時の形跡には、一人の人物のサーバーが残っており先程特定できました。」すると皆藤は用意していたパソコンから、会議室のモニターに一人の顔写真を転送させた、「映し出された彼が容疑者です。」モニターに表示された顔は何と葛城のものであった、「嘘だろ…」 「おいおい!」 再びざわつき始める捜査員達に鈴木は眉間に皺を寄せ、グッと目を瞑りながら腕を組んで頭を悩ませた、しかし、皆藤の報告はまだ終わりではなかった、「ですが、葛城の形跡は列車を走らせた事だけであり、2号車、1号車の扉をロックさせ、このようなメールを送らせたのは葛城一人では我々には不可能だと考えられました」 すると皆藤は次にとあるメールの文面をスクショしたであろ画像をモニターに転送させた、すると次に鈴木が席から立ち上がり話し始めた、「葛城は清原からの連絡が来るまで、ずっと後部車両にて待機していた、前方部分については情報が知りえる筈がない、よって、我々は大至急東京駅にて急行し、もう一人の容疑者を暴き出さなければならない!」鈴木は力を上げてテーブルに手を叩きつけた。
「カチッ!」吾妻の握り締める銃口は葛城の方に向けられていた、突然の行動に葛城は激しく動揺し始めた、「何してるです吾妻さん?気でも狂ったんですか!?」必死に吾妻を呼び掛ける葛城に、吾妻の目はもう信用を失っていた、「お前には話したいことが沢山あるが、その前に教えろ、俺に連絡をかけてきたこの人物は誰か応えろ!」そう強く問いかけながら吾妻は銃口を向けている、「吾妻さん…私には全く話がわかりません」
そう応える葛城に、吾妻は咄嗟に蛭間の方に向けて発砲した、「バーーン!」。
「はぁ…あぁ…」弾は蛭間には当たらず、わざと近くの壁へと弾を当てていた、思わず蛭間は恐怖と驚きで力が抜けその場で気絶してしまった、「葛城、俺が復讐心に苛まれて、蛭間を殺してくれるとでも思っていたのか?、俺はそんな人間にはならない!」
「クゥ、ブッハハハハハハ!」すると葛城は、隠し続けていた本性をさらけ出すかのように笑いだした、「吾妻さん、いつから気づいてたんですか?」葛城は、死んだような目付きで拳銃を抜き出そうとした、その時、「動くな!大人しく武器をよこせ葛城、」 そう後ろで声をかけてきたのは、ずっと一号車にて姿を眩ませていた清原が拳銃を向けて、その場に立ち尽くしていた、「もう一人の仲間は今、どこにいる?」 清原の姿を見た葛城は、ゆっくりと両手を上げて、持っていた拳銃を床へと投げ捨てた、「俺も最初は知らなかった、お前が、これはただの移送計画ではなかったと言うことも、」吾妻はそう呟くと、両手を上げる葛城に向けて携帯を見せつけた、「この会話全て聞いてましたか、鈴木一課長?」
警視庁捜査会議室内は、吾妻の通話音で室内は響き渡っていた、「よし、吾妻…このまま我々は東京駅にて待機している、どこかにもう一人、仲間がのっている筈だ、」
「わかりました、一課長」 そう応えると通話は切れた、「もうこれ以上抵抗の予知はないだろ葛城、」清原は銃口を向けたまま、葛城に自供を促した、「何で…何でだ!、あんたはもう刑事じゃないだろ!」 困惑を隠せない様子で葛城は、吾妻にそう言い放った、すると、吾妻は込めた怒りを抑えきれず葛城の胸ぐらに掴みかかった、「吾妻、落ち着け!」清原の言葉に聞く耳をもたず、胸ぐらを掴んだまま壁に葛城を押し付けた、「確かに俺は、家族の事で仕事に支障がでて、刑事という仕事を捨てた、だが、送られてきたメッセージを知ったとき、刑事としての誇りは捨てられなかった、だから鈴木と結託し、黒幕の指示に従いながら、容疑者を探っていたんだ!」
「でも遅かったですね、私が遠隔操作していた事に気がついたのも、」葛城は不適に笑みを浮かべてきた。
「葛城ともう一人、確実に協力者がいることは決定だが、その一人は一体誰なんだ?、ほとんどの乗客は皆が盛岡駅で降りている、だが、二号車にい班は全滅している、だとすれば、あえて怪我を負った山崎なのか?」 本部へと居座る鈴木は、じっと手を組みながら、頭の中で思考を巡らせていた、すると、「鈴木一課長、先程の資料について解析が終わりました。」 周囲に同じく居合わせていた皆藤が鈴木に声をかけてきた、「そうか、」鈴木は一度思考を止めて、皆藤のいる席へと駆け寄った、「一課長から送られたDEOの3文字のアルファベットが並べられた画像ですが、これは恐らく、(drug enforcement officer)、麻薬取締官と言うことです。」
「麻取が同じ列車に乗っていたという事なのか。 麻薬取締部と話がしたい、皆藤、至急連絡してくれ!」 皆藤はパソコンから目を離し眼鏡を整えながら一課長に応えた、「了解です、」。
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