第31話 予言



 俺達は、王様とその親族達に連れられ、色とりどりな花で装飾された白い宮殿内に入って行った。


 ララノアとミーリエルは母親と手を繋ぎながら楽しく喋っている。


 俺はなんか忘れてる様な気がしたが、大した事じゃないなと、考えるのをやめた。


 しかし、後ろからとてつもないスピードで誰かが走って来る音が聞こえて来る。


 『ちょちょちょっと待って下さいよー!勇者さーん!俺達を忘れないでー!』


 声に反応して振り向くと、ペタナスがブリガーと共に全力疾走してこちらに向かって来た。


 

 『な、何故、災害獣デスフォレストが!ララノア!ミーリエル!アルディス!早く逃げなさい!エルフの戦士達よ!殿しんがりを務めるぞ!』


 何も知らない王様が自分の家族に指示を出すと、戦士達と共にブリガーに向かって行った。



 「ブリガー!ペラリア!お座り!王様も攻撃をやめて下さい!」


 俺はすぐ様ブリガーとペラリアに命令を下し、王様達の誤解を解く。


 『な、何が……。勇者殿、これは一体……』


 「すみません、この虎……ブリガーは俺が森で調教テイムしたんですよ。それと、あのスーツの男は連れですね」


 『あ、あのデスフォレストを……。そ、そうか……。ふぅ、勇者殿……心臓に悪いですよ』


 王様とエルフの戦士達は皆一応に胸を撫で下ろしている。


 そんなに危険な魔獣なんだろうか?


 『ふふふ、パパったら慌てちゃって!』

 

 ミーリエル……お前が一番慌ててただろ!


 『ブリガーさんは私達を運んでくれたんですよ、お父様……。それにペリドットさんにも助けられたんです』


 名前を呼ばれたペカッターは、狂喜乱舞している。


 『ならば、御二方にもお礼をしなければいけませんね。是非ご一緒して下さい。それと勇者殿……こう言う事は忘れずに教えてくれると……』


 ララノアとミーリエルの葬儀のせいですっかり忘れてたよ!


 「ははは、すみません王様!次からは気を付けますよ!」  



 何故か苦笑いしている王様に続き、俺達は案内された客室に入って行った。


 『さあ勇者殿達、是非寛いでくれたまえ。ララノアとミーリエルは湯に浸かり、衣を変えた方がいいだろうね。アルディス、頼めるかい?』


 『はい、あなた。勇者様、私はララノアとミーリエルの母のアルディスです。私の娘達を救って下さり……本当になんてお礼を言ったら……』


 アルディスさんは涙で言葉に詰まってしまっている。


 「いやー、そこまで感謝されると照れちゃいますね。確かにあの二人には食べ物をたかられましたけど、勇者としては当然の事をしたまでです」


 『ふふふ……。ララノアから聞いた通りのお方なのね。それでは勇者様、すぐ戻りますのでごゆっくりして下さいませ。それでは……』

  

 『勇者!すぐ戻るから、待ってなさいよ!』

 『勇者様、ここのお茶はとても美味しいのです。是非堪能して下さいね』


 そう言って、エルフの親子三人は退出していった。


 部屋に残ったのは、王様と護衛の戦士が二名、それに側仕えの女性が一人に俺とペとブリガーだ。  


 『さて、勇者殿……勇者殿がこの国に来たと言う事は、災いが迫っているのか?』


 な、何故分かった!?さては貴様、エルフの忍だな!


 「その通りです。その前に、まだ名前を言ってませんでしたね。私は勇者"ファルケンハイン"です。こっちはペラペラとブリガーです。」


 『名前は記号だって言ってた割には、随分自分の名前を主張するんすね……。あっ、自分はペリドットです!宜しくお願いします!』


 うるさいぞ!ペザリコッタの分際で!


 『ああ、宜しく頼むよ。私はメネリオン三世だ。それで、事実なのだな勇者殿……?災いの内容はやはり……邪神か?』


 何故ここまでピンポイントで分かるんだ?

 そう言う能力の持ち主なのか……。


 「ええ。正確には、邪神の使徒がこの大陸を襲うそうですがね。実はこのペアランタムも使徒の一人なんですよ」


 『な!ゆ、勇者さん!それは秘密っすよ!』

 

 バカヤロー!内緒にするのが一番いけないんだ!


 『勇者殿は信用出来るが……。まず、何故勇者殿と邪神の使徒が一緒にいるのか聞かせてもらえるか』


 「それはですね……」


 俺はペマタリとの出会いと、可哀想な境遇を話して聞かせてやった。


 『なる程……。呪いか。しかしそれだけで全てを信用するのは弱い気がするが……』


 心配はごもっとも!


 「大丈夫です!責任は全てこの勇者が取りますゆえ!それに勇者は、一度仲間にした者を見過ごす事は出来ないのです!」


 これにはペタマリも、感動で涙してる事だろうな?


 『……………………』


 なんちゅう顔で俺を見てんだ!ペアランタムの分際で!


 『わ、分かった。そこまで言うなら勇者殿に任せよう。それにペリドット君にも、娘達が世話になった様だしな』



 『いえ、自分は北に進んだだけなんで。それに、俺も何でここに居るのか不思議なんすよね』

 

 ふっふっふ。それはだな……。


 「ペンナコッタ!お前にはここに来る使徒の事を教えて貰うぞ!さあ!」


 『勇者さん、そんな急に……いえ、どうせ俺に拒否権なんてありませんよね。この西の大陸を任されたのは、[群勢]のヘレネー、[創星]のジュラ、そしてこの俺![丸呑み]のペリドットです!ペリドット!』


 お前だけ手抜き感が半端ないな。


 『この広い西大陸を三人だけ……いや、ペリドット君が抜ければ二人……。これが本当にお婆様に読まれた予言の事なのか……?』

 

 予言?……予言とは何の事だ?


 「メネリオン王、その予言について聞かせて頂きたい」


 『……ああ、よかろう。予言とは、このエルフの国の神子たる、お婆様によって告げられた物だ。その内容は……』



 六が三つ並んだ火の月に

 星が二つ落ちるだろう

 希望一つを見つければ

 全てが零に還り行く




 「……わからん。おいペラタン、お前分かった?」


 『ちょ、自分に振らないで下さいよ!分かるわけ無いじゃないっすか!』


 だよな。所詮ペカザルナだもんな。


 『ははは、私も最初は分からなかったよ。だけどお婆様はその後にこう言ったんだ。邪神の復活に備えろと。民を……森を守りたくば、全てに備えろとね』


 なる程……。だから王様は、俺が来たのは邪神の事だと分かったのか。


 

 「ではメネリオン王よ、これからの事について……」


 

 俺達はそれから、長い事話し合った。


 避難場所や防衛策、使徒の能力等を話し合っている内に日が沈み、月がで始めようとしていた。


 


 『ーーーーーだからそう言う訳で、詳しい能力は分かんないんすよ。使徒が本気で戦う事なんて、今まで無かったっすからね』


 「ホントかペザノキミス?まさか庇ってる訳じゃねぇだろうな!って、ミーリエル!ララノア!いつの間に帰って来てたんだ?」


 いつの間にかミーリエル達、親子三人が部屋の入って来ていた。


 『ふ、ふん!今に決まってるじゃない!それより何か言う事はない訳なの!』

 『ゆ、勇者様、時間がかかってしまい、ごめんなさい。服が決まらなくて……』


 恥ずかしそうに言う二人の服装は、さっきのボロボロの服とは打って変わって、とても綺麗な服になっていた。


 流石は王族だ……。まるで別人みたいだぞ、ミーリエル。


 「二人共、とても綺麗になったな!ミーリエルなんかは特にだ!馬子にも衣装とはこの事だ!」


 『ちょっと!どう言う意味よ!……いえ、今はいいわよ。それより祭りに行くわよ、勇者!』

 『そうです!早く行きましょう、勇者様……』


 祭り?今はそれどころじゃ……。

 や、やめろ!離せ!離せば分かる!


 『あなた、祭りの準備が終わったそうですよ。開始の挨拶をしに行きましょう』


 『ふむ……そうだな。行くとしようか。そう言う事だ勇者殿。話の続きは、また後でだな』


 そ、そんな!ええい!助けろブリガー!

 

 助けろペファノリスク・ペリザリオン!


 

 

 


 

 


 

 

 

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