第28話 エルフの二人


 俺とペギラスは何処かに街や村がないかと、探し回っていた。


 「なぁペーちゃん、お前一応この国に恐怖と絶望を与えに来たんだろ?なのに何で街の場所一つも知らないの?」


 『へへ、お恥ずかしい話ですが、私こう見えて方向音痴でしてね。でも動物の本能って言うか、習性って言うんですかね、北だけはどこにいても分かるんですよ」


 チッ、使えねぇペリドリルだ。


 それにさっきから魔物が随分多いな。


 「なあペッチョギ、なんで魔物が全部お前に向かって来るわけ?ふざけてんの?」


 『…ペリドットです。だからこれが邪神の加護の効果なんですよ!分かりますか!この苦労が!』


 ここまで面倒くさい代償だったのか。


 大変だったなペランダム。


 「そうか…。だがもう大丈夫だ、ペリンコ。この勇者たる俺が仲間になったんだからな」


 『だから、ペリドットだって言ってんだろ!さっきから一個も合ってないよ!仲間ならまず名前を覚えて下さいよ!』


 「わ、悪かったよ、ペリチョリス。どうも人や物の名前を覚えるのが苦手でな。あっ、そう言えば、この大陸にはあと何人の使徒が来てるんだ?流石にお前一匹だけって事はないだろうし」


 『……もう好きに呼んで下さいよ。えーと、俺の他に二人の使徒が来る筈ですよ。俺だけ先に行ってろと言われたんで、いつ来るかはわかんないっすね』


 そうか、まだ時間の猶予はありそうだな。


 「来るなら、早く来て欲しいのだがな……。あっ、ペリーパー!あそこから煙が上がってるぞ!人に違いない!行くぞ!」


 『ちょ、勇者さん!待って下さいよ!』


 俺とペギオンは、森の中から上がる煙の元へと大急ぎで向かっていった。


 モクモクと上がる煙の正体は、どうやら焚き火が原因だった。


 焚き火の側には、まだ幼い子供のエルフとそれより少し歳上っぽいエルフが座っていた。


 「ちょっと待て、ペギザイラス!このまま

お前が近づくと、敵対されるか、逃げられるかの二択になっちまう!」


 『そ、そうですよね……。それじゃぁ俺はこの辺で……』


 「馬鹿野郎!誰がいなくなれと言った!俺は勇者だぞ!勇者は仲間を見捨てないんだ!だからコレを身に付けろ!」


 俺は、勇者専用アイテム袋から"中和の首輪"を取り出し、ペゴパゴラに装着する。


 『ちょ、勇者さん!何すかコレ!やめ、やめて下さいよ!』


 「大丈夫、大丈夫。これはお前にかかってるあらゆる効果を中和してくれる、最高の一品だ!これを身に付ければ、もう憎まれる……な!ど、どうしたペアルシバルシア!」

 

 首輪を付けた途端、ペザリアの身体が人の形に変わっていった。


 ペンタの変化が終わると、そこには黒いスーツに、嘴と同じ赤色のネクタイを付けた黒髪の青年がいた。

 

 「ペザギニス……お前、もしかして……」


 『ち、違うんすよ、勇者さん!これは決して騙したとかではなく!そ、そうこれも邪神のせいなんすよ!信じて下さい、勇者さん!』


 「お前……勇者を舐めてる様だな……」


 『す、すいません!舐めるだなんて!決してそんなつもりは……』


 「お前!ペリカンにされる呪いにも掛かってるなら、最初から言えよ!勇者はそんな事で仲間を見捨てたりしないぞ!」


 全く、ペアティボンの奴め……。

 勇者に隠し事なんかしやがって。


 『ひ、ひぃ……!え?あ、ああ!そうなんですよ!いやー!邪神にも困ったもんすよ!ほ、ほら勇者さん!エルフの二人がこっちを見てますよ!』


 な、何ぃ!まだ、空高く飛んでいると言うのに。


 少し声が大きすぎたか。


 俺とペイラライは、今度こそエルフの元に降り立ち、声を掛ける。


 「き、君達、俺達は世界に平和をもたらす旅をしている勇者一行なんだが…少し道を尋ねたいんだ……」


 しかし、エルフの二人は警戒心MAXの状態らしく、怯えた目でコチラを見ている。


 『勇者さん、やっぱり俺の呪いせいっすかね?‥やっぱ俺、いない方が……痛い!』


 俺はゴチャゴチャうるさいペザリアスに拳骨を喰らわせる。


 しかし、この二人を懐柔するにはどうしたら……


『………グゥー』


 ん?今、幼い方のエルフちゃんのお腹がなった様な……はっ!この手があったか!


 俺は勇者専用アイテム袋から、七色野菜の黄金サラダを取り出す。


 幼いエルフちゃんは、サラダに目が釘付けだ。


 『ほ〜れ、質問に答えてくれたらコレをあげちゃうんだけどな〜。ほ〜れ、ほ〜れ」


 俺がサラダを目の前で上げ下げしていると、幼いエルフちゃんがピョンピョンして取ろうとしてくる。


 『勇者さん…それは流石に可哀想っすよ…』


 うるさいペタナリアだ。


 「しょうがないな…。ほら食べなさい幼いエルフちゃん。そっちのお姉ちゃんにもあげるから安心しなさい」


 俺の七色野菜の黄金サラダを受け取った二人は、早速食べ始めた。


 『……ほぉいふぃおいしい…。はひほれなにこれふぉっふぇも、ほぉいふぃとっても、おいしい!』


 『ふぉふぉのらララノアまふぉよまだよまふぉひんひちゃふぁめよまだ信じちゃダメよ!』


 七色野菜の黄金サラダを、リスの様にほっぺを膨らませて食べるエルフの二人…。


 とりあえず、行儀悪いから食べてから喋りなさい!

 

 『勇者さん…この二人、よほどお腹が空いてたんですね。俺……なんか涙が……』


 そういえば、エルフだから森にいるのなんて当たり前だと思っていたが……。


 よく見れば服もボロボロだし……何か人には言えない事情でもあるに違いないな。


 『…おひゃわりおかわり!』

 『わひゃひも私もはひゃくはひゃく早く早く!』


 遠慮を知らないエルフ共が!

 

 チッ!俺は大人だからな!我慢してやるぜ!


 さて、おかわりか……。

 同じ物では芸がないな。


 ならば!楽園那須らくえんなすの極上ステーキと堕天南瓜だてんかぼちゃ堕落だらくパイだ!さぁ、おあがりよ!


 『ふぁ〜!お姉ちゃん!これも野菜だよ!』

 『まさか……。こんな霜降りのお肉みたいな見た目をしてるのに。でも問題は味よ!』



 楽園那須らくえんなすの極上ステーキを食べた二人のエルフは、魂が抜けたかの様に放心している。


 「まだだ!まだ終わらんよ!この堕天南瓜だてんかぼちゃ堕落だらくパイを食べる事で、この物語は完成する!さぁ、食せ!」


 俺の言葉にかろうじて意識を取り戻した二人は、震えた手で堕落だらくパイを掴み、恐る恐る咀嚼する。


 『…………ララノア……もうエルフやめる……』


 『そうね……エルフをやめて、二人でニートにでもなりましょう……いえ、こんな事を考えるのも面倒くさいわね……』


 うんうん、流石は堕落だらくパイだ。


 「ハハハハハ!ペゴナバルよ、コレでこの二人は俺の質問に答えてくれるだろう!我ながら見事な懐柔の仕方だ!」


 『ペリドットです。いやいやいや!勇者さん!これはまずいっすよ!ほ、ほら!エルフの二人も正気に戻るっすよー!』


 何を慌てているんだか、ペラガスのやつ……。


 「大丈夫だ、ペマノサタス。ただ料理が美味し過ぎただけだ。変な効果は掛かっていないさ」


 『ほっ、そうなんすね。てか、勇者さん……俺気づいちゃったんですけど……』


 「ん?何にだペンタゴラ?」

 

 『2800文字位書いてるのに話が全く進んで無いっす……』



 ……テコ入れが必要だな……。

 


 


 

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