第25話 決着


 「来い……相棒。[聖剣召喚]創笑剣スマイル!!」


 俺の聖剣も鎧の影響を受け、その剣身が黒に染まっている。


 これじゃぁ、笑顔どころか暗黒微笑になっちまうよ…。


 『其方も準備が出来たご様子ですね……。では遠慮なく。73柱目の悪魔ザ・イレギュラー!』


 ソフォスが創り出した召喚陣から、顔はヤギ、体は人の悪魔が飛び出して来た。


 その異形は体が傷だらけで、所々が包帯でまかれ、手に枷を嵌められている。


 『この悪魔の名はスクラヴォスラス…階級は奴隷。能力は……まだ内緒にしておきましょう。さあ、行きなさい!』


 ソフォスの命令で、何も構えずにその悪魔が突っ込んでくる。


 「何だこの悪魔は……。不気味な奴だな……。ならば何かさせる前に一撃で葬る!暗黒魔黒勇者式魔剣術地獄に帰れ!」


 俺の聖剣スマイルから全てを染め上げる暗黒の刃が悪魔に向かって飛んでいく。


 悪魔は何の防御もせずに暗黒の刃に飲まれていく。


 刃が消えた後にはその悪魔の姿は何処にもなかった。


 「警戒し過ぎたか?一体奴は何だったん……ぐはぁ……!」


 俺の闇の鎧が大きく切り裂かれ、俺の口から血が溢れ出してくる。


 『この程度か……勇者!巨腕の連舞Die・パン


 膝をついて血を吐いてる俺に、更なる追撃をする為、ヴラカスが巨木の様なその腕を連打で放ってくる。


 「ク、クソ…ハァハァ…勇者式転移法緊急避難だ……」


 俺は転移の魔法でヴラカスから少し距離を取る。


 その間に最上級の回復魔法を掛け、体制を立て直す。


 「ふぅー!あー痛かったー!こんなに痛かったのは、前の世界で魔王と闘った以来だよ!あー自分に腹が立つぜ!」


 邪神を倒すとか言った癖に、邪神の部下なんかにこの様では、恥ずかし過ぎるぜ!


 過去最高に苛立ってる俺は、怒りの魔力を魔族の二人に放ち威圧する。


 『……ま、まさかこれ程とは。これはまるで……我が神……』


 『ソフォス……。どうやらお前は龍の尾を踏んだみたいだな』


 「神黒燼黒勇者式強化法潰す!」


 俺は50mは離れていた距離を、一瞬でゼロにする。

 勿論転移では無く、肉体能力だけでだ。


 『な!は、早!』


 『ぐ、ぐぬぅ!腕が……!』


 俺はまずヴラカスの腕を一本切り落とした。

 奴等は反応すら出来なかっただろう。


『これ以上はやらせませんよ!奈落王子の邪死眼アバドンズ・ライフ!』


 ソフォスの邪眼から、この世の全ての悪意を集めたかの様な邪気が発射される。


 今の俺には余りにも遅すぎる攻撃だが、俺は敢えて受けてやる事にした。


 『はっはー!喰らいましたね勇者!これで終わりで……な、何故私の攻撃が跳ね返って……あああぁぁ!』


 ソフォスは自分が放った邪気によって、半死半生になっている。


 俺の闇の鎧の効果によって、威力が倍増されて跳ね返ったお陰だ。


 俺のこの闇の鎧は、邪気や悪意のこもった魔力を吸収し、威力を増やして相手に跳ね返す効果がある。


 この効果があるからと油断した結果が、最初の不様な醜態を晒した原因だ。

 

 『ソフォス!勇者……貴様ー!うおおおぉぉ!怒神ネメ・シス!』


 ヴラカスの黒かった肌が赤黒く変色し、血管がはち切れんばかりに浮き出している。


 切った筈の腕もまた生えてくるどころか、更に二本増えて、六腕になっていた。


 「お前は芸がないな、腕を増やして殴るだけか……」


 『黙れ!それで全て事足りるわ!喰らえぃ!巨神の怒りティタノマキア!』


 ヴラカスは六本の腕を一斉に振り下ろした。

 それはまるで、大木が倒れてくると比喩ひゆしても過言ではなかった。


 「だけど、遅い……遅すぎる」


 俺は余裕を持ってヴラカスの攻撃を避け、また腕を切り落とすつもりで、三本ある右腕の一本を切りつける。


 しかし、肌が変色した影響か、防御力が上がっており、切り落とす事は出来なかった。


 『ハハハハハ!先程の様にはいかぬわ!しかもこの状態の俺は、再生能力も上がっている!見ろ!今貴様がつけた傷も……バカな!何故回復しない!』


 あーあ、まるで邪剣みたいな効果じゃないの……スマイルちゃん。


 勇者はそんなの許しませんよ。


暗黒地獄勇者式連撃斬喋ってばっかだなお前は!」

 

 俺は狼狽えてるヴラカスに容赦なく切り付ける。

 

 毎秒、百を超える斬撃がヴラカスを襲う。

 ヴラカスの体はもう、血で赤いのか元々赤かったのか分からなくなっている。


 『……こ、こんな化け物だったとは……。手も足も出ぬ……』



 ヴラカスはどうやら気絶した様だ。


 俺は死にそうな二人を軽く回復してやった。

 そして、恐らくコイツらの力の源である、ブレスレットとモノクルを破壊し、二人を拘束する。


 『……ああ、我が神よ……。申し訳ございません……。貴方様から頂いた神物が……』


 ん?俺の回復魔法で意識が戻ったか?


 「おい、ソフォスといったか?一つだけ教えろ……。あの悪魔の能力はなんだ?」


 俺の闇の鎧を無効化する力なんて聞いた事がないからな、また召喚されては厄介だ。


 『神物が壊れた今……もう召喚するすべはありません。聞くだけ無駄ですよ?』


 「いいから言え……。お前じゃない誰かが使役するかもしれんだろが」


 『フフフ……。本来なら、勇者に利する情報を与える必要など無いのですけどね……特別です。あの悪魔は、貴方の攻撃をそのまま貴方に移す力があったんですよ……』


 どうりで闇の鎧が反応しない筈だ。

 俺の攻撃には邪気も悪意もこもってないからな。


 「クククク……ハハハハハ!流石は俺だ!俺に傷をつけられるのなんて、俺くらいだと思っていたんだ!いやー良かった良かった!」


 『急に笑いだすから何事かと思えば……。なんと傲慢な勇者何ですか……。貴方……本当に勇者なのですか?』


 勇者だよ!失礼な奴だな!後にも先にも、俺以上の勇者はいねぇよ!


 『うるせぇ!とりあえずお前らは処さないでおいてやる。その代わり目的を全部話してもらうからな。今は眠ってろ」


 俺は眠りの魔法をソフォスに掛け、ヴラカスと一緒に城まで運ぶ。


 「あー疲れた!甘いもんとブラックコーヒーで癒すしかねぇな!」


 

 俺にシリアスなパートをやらすんじゃありませんよホント!




  あー夕陽が綺麗だな!

 

 

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