第24話 使徒との闘い
「陛下!私が行きます!陛下は民を避難誘導させる為の兵をお願いします!」
「あい、わかった!頼んだぞ勇者!」
伝令の予期せぬ救援依頼を聞いた俺は、急ぎ会議室の窓から飛翔し、襲撃されてる場所へ向かった。
「何が起きている?まさかあの三馬鹿の転移先を間違えたか?……いや、流石に街を襲撃するほど馬鹿じゃないな。なら……」
城から飛び出し、上空から街を見渡すとあちらこちらから黒煙が上がっている。
この国に召喚されたばかりの時によく通った酒場や、冒険者ギルド、商業ギルドといった大きな建物は軒並みやられている。
「ゆ、許さん!誰の仕業か知らないが…報いを受けてもらうぞ…
俺が発動した探知の魔法に、一際大きい魔力の反応が二つあった。
とても禍々しい魔力だ。
あのマールムと呼ばれていた魔族の魔力よりもだ。
俺は魔力の反応があった、貴族街のところまで高速で飛翔する。
貴族街の大きい家々が所々半壊している。
それをしでかした人物がハッキリと見えてきた。
四本の腕に青黒い肌、頭にターバンを巻いた、筋肉モリモリの魔族と、キッチリ揃えられた黒髪…片目にモノクルを掛け、白のスーツを身に纏った人間ぽい男…。
その魔族達に、貴族の令嬢やその側仕え達が今にも手に掛けられようとしていた。
『やめてー!お嬢様だけでもお助け下さい!代わりに私の命を差し上げますから!お嬢様はまだ五歳なのよ!』
『どうしたのカリン?そんなに大きい声を出してはだめなのよ?はしたないの。このおじさん達はだーれ?』
『黙れ人間…全ては我が神の意志…。運が無かったと思って諦めろ』
『貴方達、ホモサピエンスはほっとくと虫の様に増えますからねー。いえ…環境を破壊する分、虫より害悪かもしれません。次に生まれ変わるなら虫におなりなさい。ではさようなら』
白スーツの男が呪文の詠唱を始め、この辺り一面を吹き飛ばす程の魔力を放出しようとしている。
「させるかよ…
白スーツの男が溜め込んだ魔力は全て霧散した。
俺はすぐ様、貴族令嬢達と魔族達の間に降り立つ。
『一体何が…私の美しい魔法が使えなくなった?……貴方が何かしたのでしょうか?』
『ソフォス、この鎧にあの紋章……コイツが勇者だ。マールムの奴が変な魔法を使うと言っていただろう……。聞いて無かったのか?』
『あーはいはい!そういえばそんな事を言っていましたね!……そうですか、貴方が噂の勇者様ですか……』
俺は魔族が喋っている間に貴族令嬢達に避難する様促す。
『勇者様!ありがとうございます!よくサロマお嬢様を助けてくれました!』
お礼はいい!早く行くんだ!
『勇者のお兄ちゃーん!なんだかわかんないけどがんばれー!』
あい、俺も何が何だか分かんないけど頑張るよ!
メイドさんに抱きかかえられたお嬢様が無事に去っていくのを見届ける。
「意外だな…待っててくれたのか?」
『いえいえ、待つだなんてとんでもない。どうでもいいだけです…遅いか早いかの違いですので……』
『然り…人類で脅威足りえるは、お前唯一人だけだ。貴様さえ排除すれば、後は虫の集まりよ……』
ふん、人間をあまり舐めるなよ?
『ヴラカス……それは虫に失礼と、先程も言いましたよ。さて、勇者殿……そろそろ始めましょうか……』
さっきからこいつ虫大好きだな。
「まぁ待てよ……。結局お前等は誰な訳?何が目的でこんな事をしてるんだ?」
『私達の目的は話せませんが…自己紹介くらいはしましょうか……。邪神に選ばれし十二使徒の一人……[智者]ソフォスです……。以後お見知りおきを……。
ちょ!危ないでしょうが!
ソフォスと名乗る男が、不意打ち気味に白と黒、半々に分かれた光弾を連打で撃ってくる。
かろうじて原形を残していた貴族の家が完全に崩壊してしまった。
『俺は[百碗]のヴラカス……いざ参る!』
光弾を避ける為に体制を少し崩した俺に、四本腕の魔族が頭上から襲い来る。
そのゴツい四本の腕から振るわれる、高速の拳の連打…まるで腕が更に増えた様な錯覚に陥る。
「調子に乗るな……!
俺は元々かけていた身体強化の魔法より、更に強力な強化をかけ直す。
俺は持っていた盾を背中に回し、フリーになった両手で、ヴラカスの連打より速い連打を、奴にお見舞いする。
ヴラカスは俺の連打を、同じ連打で対処しようとしたが、間に合うはずも無く、何発か喰らった後自分から後ろに大きく飛んで、距離を取ろうとした。
「逃がすかよ……!
俺は小転移の魔法でヴラカスの後ろに転移し、両手で作った握り拳を奴の脳天に振り下ろした。
『させませんよ……!眠り牛の歩み《フェスティーナ・レンテ》!』
ソフォスの魔法を喰らってしまった俺の身体が少し遅くなった気がした。
それは勘違いではなく、ヴラカスに間一髪の所で攻撃を避けられてしまった。
魔法による影響を、大幅に減少させるこの鎧を貫通するか……。なかなかやるね。
『すまないソフォス……油断した』
『しっかりして下さい。どうやら遊んでいい相手ではない様です。本気でいきますよ……
『ああ、俺も本気で行く……
魔族の二人がそう呟くと、莫大な邪気が二人に纏わり付いた。
ソフォスは片目に着けていたモノクルから。
ヴラカスは四本の腕に嵌めていたブレスレットから邪気が溢れている様だ。
ソフォスのモノクルは自身の目に取り込まれ、異様な模様が描かれた邪眼に変わっている。
ヴラカスは更に肌が黒に染まり、腕が異様に巨大化している……。
威圧感が先程とは大違いだ。
「これは…戦いの余波だけでも大変な事になりそうだ。仕方ない……
最上級の防御壁がドーム状に広がり、戦いに必要なスペース分だけ展開していく。
『さて、勇者殿…お待たせ致しました。それでは開始の鐘を鳴らさせて頂きます…
突如現れた巨大な鐘……。
その鐘には様々な悪魔の顔が埋まっており、鐘を鳴らすたびに怨嗟の声をあげ、俺を惑わす。
「やはりさっきのはまぐれでは無いみたいだな…。俺の鎧を貫通する程の魔法か…ならば!"換装 勇者シリーズ 闇"!」
おれの青白く光っていた鎧が黒より黒い漆黒に覆われ、その外見を変化させていく。
鎧から出ている黒いオーラが、モヤの様に纏わりつく。
勇者の紋章も血の様な赤に変わっている。
「でも俺……この鎧嫌いなんだよね。まるで悪の化身みたいだろ?だからさっさと終わらせるから」
さぁ、第二ラウンド開始だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます