第22話 十二使徒 (閑話)
魔大陸のさらに北にある氷と雪に覆われた極寒の大陸が存在している。
およそ生物など存在出来るはずも無いその地の地下に、邪神に見そめられ、より強力な加護を受けた複数の魔族が暮らす拠点が、人知れず建造されていた。
「ふぅ、何とか無事に帰って来れたな…。勇者のクソが!アイツは俺が必ず殺す!」
二対四枚の漆黒の翼に、禍々しい刻印が身体中に刻まれた魔族…マールムから夥しい魔力が放出され、石の壁や床を傷つける。
『なんだい!うるさいね!一体何事だい!』
すると奥から金髪の長い髪を靡かせながら、少しキツめな顔だが、美人で長身の魔族の女が近づいて来た。
「っち、うるせぇな。なんの用だヘレネー。俺はいまイラついてんだ、つまんねぇ用ならぶっ飛ばすぞ」
『ん?あんたマールムかい?ハハハハハ!なんだい?その姿は!前よりカッコ良くなったじゃないか!ハハハハハ!』
クソ女が!
「うるせぇ!早く要件を言いやがれ!本当にやっちまうぞ!」
『はいはい、ごめんなさいね…。それよりアンタとエビルだけかい?タスカルの奴はどーしたんだい?アンタ等はいっつも三人セットだろ?』
うるせぇ、セットなんかじゃねぇ…タダの腐れ縁ってやつなだけだ。
「あ?タスカルは死んだよ、勇者のクソに斬り殺されちまった…ただそれだけだ」
『ふーん、薄情な奴だね。まぁどうでもいいか、それより目的の物はちゃんと手に入れて来たんだろうね?邪神様が首を長くしてまってるよ』
「ああ、それなら問題ねぇよ。今報告に行く所だ。オラ!そろそろ起きねぇかエビル!」
俺はエビルを軽く蹴る、するとエビルが少し反応し出した。
「……うーん…あ、マールムだぁ…。あ、ヘレネーもおはよう。あれタスカルは?サラマンダーの干し肉を貰うって夢の中で約束したんだけど……」
「いいから来い…話は後だ、邪神様に報告にいくぞ」
『邪神様はいつもの
っち、面倒くせぇ。よりにもよってアイツ等も来るのかよ。
俺はヘレネーの言葉に反応せずに、部屋から出ていく。
「ちょ!待ってよマールム!タスカルは何処にいるのさ!ねぇってば!マールム!」
♦︎
俺はエビルの質問には答えず、ひたすら歩き続け、邪神のいる部屋に到着した。
扉越しからも伝わる凶々しい邪気が、格の違いをまざまざと感じさせられる。
俺はいつもの様に刻印が刻まれた扉に魔力を送り込む。
それに反応した扉がゆっくりと開くのを確認し、俺達は中に足を進める。
中には既に三名の姿があった。緑色の髪の男と全身が青に染まった少女……それと神座に座った……
『
部屋の中にデカデカと置いてある丸いテーブル……円卓の一際豪華な椅子に座っている、白いローブに身を包んだ黒い何かから声が発せられる。
通常、円卓には「俺達は対等だ、上も下も無いんだ」と言う意味があるが、この円卓には上座が…いや
「邪神様、只今戻りました。目的の物…ドラゴンハートを手に入れて来ました」
『
俺の報告に邪神は気を良くした様だ。
俺に当てられていた邪気が少し弱まった気がする。
「は!此度の任務で同胞が一人、女神の使徒…勇者によって討たれました!なので復讐の機会と力を頂きたい!」
「ちょ!マールム!タスカルが死んだって本当かい!?なんで!なんで助けなかったのさ!ねぇマールム!」
チッ!
『静かにしな!誰の前にいると思ってんだいエビル!』
しかしヘレネーの言葉にもエビルは収まる気配が無い。
すると邪神から今までとは比べ物にならない邪気が放たれる。
『
すると邪神の声を遮る様に、今まで邪神の隣に座っていた緑髪の男から声が発せられる。
『いいえ!邪神様!悲しぬ必要などありません!邪神様の為に死ねるなど、誉れ以外の何物ではないのですから!』
ファナクか、この狂信者が…そのうるせぇ口を閉じてろ。
『
邪神が虚空に手を伸ばすと黒い渦が発生した。
邪神はその中に手を入れると、中から一振りの剣と黒と金に彩られた首飾りを取り出した。
邪神は剣を俺に、首飾りをエビルに投げて寄越した。
その剣を持った瞬間、全能感が俺の体を駆け巡った。
身体から魔力が溢れ出し、勝手に暴れ出しそうだ。
「ありがとうございます、邪神様。必ずや使いこなしてみせます」
横を見るとエビルも同じ様な事になっており、邪神に礼を言っている。
『
『ああ!なんと羨ましい!我が君!次があれば私にお言いつけ下さい!必ずや満足する成果を出して見せます!』
『
扉に目をやると更に六人の影が見えて来た。
どいつもこいつも邪神に選ばれた、強力な加護を持つ魔族共だ。
全員が席に着くと、ファナクが音頭をとり始める。
『ようやく全員集まりましたね……。今回集まって貰ったのは他でもありません……。ついに……ついに!邪神様の復活まであと僅かとなりました!各自、邪神様に与えられた任務があったかと思いますが、今回はそれの成果の確認と、最後の計画について最終調整を行いたいと思います!』
魔族達の反応は、ダルそうに聞く者、真剣な面持ちで聞く者様々だ。
『
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