第21話 四天王との闘い

 瘴気に包まれた山に囲まれた魔王城の地下にある特訓場に緊張に包まれた五つの影があった。

 

 

 「行きますぞ勇者殿!悪魔羊の角笛メリーさんのつのぶえ!」


 レイモンドさんから放たれる轟々とした角笛の音が俺の身体能力を大幅に下げる。


 「今や!リリス!合体技行くで!」

 「はいです!今日の為に練習した必殺技!」


 「「愛道化の真紅魔砲あいどうけのクリムゾンショット!」」


 クラウニーとリリスからこの世の全てを濃い赤に染めてしまうんじゃないかと錯覚する、ハート型の巨大な魔導砲が発射される。


 「これは避けられるサイズじゃ無いな…なら!覇王抹殺勇者式防御法守れ!」


 球状の防護壁が俺を覆う。

 

 このくらいの威力では俺の防護壁は突破出来ないだろう。


 しかし俺の死角をついて、二つの影が近づいてくる。


 可視化出来るほどの魔力を両手足に纏わせ、黒いオーラの残存を靡かせながら、無数の連撃を放つ羊の執事。

 

 俺はそれを一切無駄の無い動きで全ての攻撃を避ける。


 「…………殺人海老の乱撃弾キル・プル-ショットガン


 しかし、俺の避けた先を予測して、エビから放たれた無数の魔力弾が俺を襲う。


 「中々良い連携だ…しかしまだ甘い」


 俺は瞬時にエビから放たれた魔力弾と同数の魔力弾を放ち相殺する。


 その隙を見逃さず、追撃しようとした執事の渾身の一撃に、カウンターのボディブローを喰らわせる。


 執事は俺の予想外の一撃に全く反応出来なかったのか、威力を殺す事が出来ずにその場で失神してしまう。


 「勇者おどれー!よくもレイモンドはんを!行け!傀儡の黒騎士ブラック・ドーラ!」


 「私も許しませんよ!これでも喰らいなさーい!愛悪魔の流星雨ラブリー・シャワー!」


 クラウニーに操られた黒騎士が高速で俺に迫り来る。


 しかし、リリスから放たれた魔力弾の雨が黒騎士に全弾ヒットし、粉々に砕けてしまった。

 

 「…………………」

 「…………………」

 「…………………」


 「…………魔海老の跳ね返りスプリングル・シュライプル!」


 呆然としていた俺は、エビの強靭な肉体から繰り出された強力な一撃をモロに喰らってしまった。


 「……ぐは!ゆ、油断した!……まさかあいつ等……これを狙って……」


俺は壁に叩きつけられてようやく止まった。


 「ど、どや!勇者はん!ワイ等の勝ちや!リリスは後でシバくけどな!

 「ふ、ふふん!どうですか勇者さん!私達は強いんです!クラウニーは後で抹殺ですけど!」

 「………………エビエビエビエビ!」


 エビ!何だお前それ!笑い声か!笑い声なのかそれ!


 俺は回復の魔法を俺と執事に掛けて、一息つく。


 「まあ、一撃貰ったら負けだって言ったのは俺だし?別に全然悔しくないけど?なにか?」


 「ヒェヒェヒェ!見いやリリス!ごっつう悔しがってるで!」

 「二ヒヒヒヒ!私達のパーペキ完璧な作戦の前には勇者も形無しですね!」

 「…………エービエビエビエビ!」


 この三馬鹿がー!この世から消してやろうかー!あー!?


 「…むぅ…っは!どうやら私は気を失ってしまった様ですな…情けない限りです」


おっ!起きたか執事さん!


 「いえいえ、レイモンドさん、貴方が一番筋が良かったです。相手が俺じゃなかったら、こんな結果にはなりませんでしたよ」



 「せやせや!レイモンドはん、ワイ等は勝ったんや!辛気臭いのは無しやで!

 「そうですそうです!今夜は焼肉ですよ!パーと祝いましょう!」

 「……エビエビ!エビフライ!エビフライ!」


 …調子に乗りまくってるな。それとエビ、共食いはダメだろ。


「そんなまさか……。我々が勝てるレベルでは無かったはず……。一体何があったのですか?」


 それは聞かないでくれ。


 「と、とりあえずだ!お前等四天王は俺が思ってたよりは多少はやる様だな!だが、今のままでは邪神に対抗するには全然実力がたりーん!」


 邪神には俺が対応するつもりだが、邪神の使徒があの三人だけとは思えないからな。


 

 「舐めたらあかんで!勇者にも勝ったワイ等や!舐めたらあかっーん!」

 「そうですそうです!舐めたらあかんー♩舐めたらあかんー♩人生舐めずに!」

 「…………エビ舐めてー♩」


 エビは舐めたらあかん!


 「お前等いい加減に……」

 

 「貴方達!真面目に聞きなさい!魔王様の命が掛かっているのですよ!?いえ、違いますね…私達全員の命がです!昨日の誓いをもう忘れたのですか!」


 レイモンドさんに怒られた三人は天国から地獄に落ちた様にションボリしている。


 「まぁまぁ、レイモンドさん…その辺にしてあげて下さい。……これからはもう二度、調子に乗る暇もありませんからね」


 俺は執念深い事で有名だからな、やられたらやり返す!

 

 「お、鬼や!いや悪魔や!悪の権化やで!」

 「あーん!私達きっと食べられちゃうんですー」

 「…………………カニ」


 蟹!?エビお前何故にカニ!?


 「厳しくお願いしますぞ、勇者殿。ところで魔王様は大丈夫ですかな?そろそろ何をやってるかだけでも教えて下され」

  

 魔王には邪神に対抗する為にある特訓をして貰っている。


 「なに、そんなに心配する程の事はさせてないよ。……魔王から聞いたんだけど、邪神に魔族全員の命か魔王一人の命か、天秤にかけられているらしいじゃないか。だから魔王には死んで貰う事にしたよ」


「な!?勇者殿!それは一体どう言う……」


 「シー!レイモンドさん、静かにしてくれ!何処に邪神の目があるか分からない。…とにかく今は俺を信じてくれ!悪い様にはしないから」


 邪神の加護の影響がある以上誰が裏切るか分からんからな。


 「納得は出来ませんが……。分かりました、今は貴方を信じましょう……。ですが約束して下され、決して魔王を泣かす様な事はしないと!」


 「ああ、約束だレイモンドさん!……よし!話は終わりだ!早速お前等四天王には、邪神の加護が無くても戦える様に、潜在能力を上げる勇者式特訓法を……」





 邪神に対抗する準備は始まったばかりだが、今はやれる事をやるだけだ!


 


 

 

 


 

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