第17話 邪神について
『ところでファルケン君、貴方は邪神についてどのくらい知ってるのかしら?』
「…俺はまだこの世界に来たばかりなので、詳しい事は何も知りません。この戦争が始まった原因としか…。」
そう、今回の襲撃の黒幕だと睨んでいる邪神…。
シャーベット様は何か知っているのだろうか。
『ええ、そうなの…この戦争の全ては邪神の復活の為に行われてるらしいの…いえ、行われていた、と言った方が正しいかもしれないわ』
…一体どう言う事なんだ?
「一体全体、戦争と邪神の復活にどう言う関係があると言うのですか?」
「それはじゃの、魔族の原初は邪神によって創られたと知らなければ説明は難しいのじゃファルケン!」
な、なんだって童!童が急に知的に…!
「な、なにをするのじゃファルケン!急におでこに手を当てるでない!別に熱などないのじゃ!」
『うふふ、ええ、アイスの言う通り魔族は邪神の眷属なの。その眷属が争う事によって、生き物を殺したり自分が死んだりすると、その者の魂や体に残存した魔力が邪神が復活する為の糧になると言う訳なの。魔族に掛けられた祝福…いえ、呪いの類ね』
なる程な…。だが、それだとなぜ今は小規模にしか争わないかの説明になっていない。
「その話が真実だとするなら、この50年以上、魔族から大規模な進行がないのは何故なのでしょうか?邪神の復活の為に、もっと激しく攻めて来てもおかしくないのでは?」
「ふふん、そんな事も分からんのかファルケン!きっともう、復活に必要なだけの邪気は集め終わったに違いないのじゃ!」
「
俺は最上級の身体強化を使い、童の後ろに回り込み、頭を拳でグリグリする。
童はもう虫の息だ。
「なる程、確かにそれなら説明がつきますね。今も少なからず攻めて来るのは、魔族も今回の事で一枚岩ではない事が分かったので、おそらく複雑な事情があるのでしょう」
『ええ、おそらくそうだと思うわ。55年前…中央大陸ではハーベストが現れ、勇者様を亡くしましたね?時を同じくして、この東大陸にもビルカウルと言う、山の様な巨体と雷を纏った牛の魔物が現れ、南の龍王と相打ちました……』
そんな魔物が居たとは初耳だな。
「先代勇者やその龍王のような存在はエサとしては格好の的、最上級のエネルギーになりますね。…その時に邪神の目的は達成された……と」
「ほら見るのじゃ!アイスの言った通りなのじゃ!ファルケンも……ふがっ!」
俺はうるさい童の口にシュークリームを突っ込む。
童は満面の笑顔だ。
『ファルケン君のそのお菓子は後で貰うとして…今回の話の本題は私の魔石化した心臓を取られたことね…。龍の心臓…通称ドラゴンハートにはね、あらゆる力を増幅する効果があるの。邪神が何に使うかは分からないけど、もうそんなに時間は残されていないと思うわファルケン君……』
魔王……何故、何も教えてくれなかったんだ。
「シャーベット様に昨日お話しした、魔族と人類の和平交渉は間に合わないと…そう言いたいわけですね?」
俺は昨日の内に魔王と俺の事をざっくりと話していた。
『ええ、そう言う事。それに邪神がいる限り本当の平和など無いわ。私には魔王が何を考えてるのか分からないの…でも勇者ファルケンハインが協力して欲しいと言うのなら我が龍国は全力で事に当たります!』
「アイスもじゃ!ファルケンのためなら邪神もやっつけてやるのじゃ!だから安心するのじゃファルケン!」
童!……口にクリームがついてるぞ童!
「ありがとうございます…シャーベット様にアイス様。勇者の力の全てを使い、この世界に平和を訪れさせます!…だけどその前に、赤龍さん…地獄の稽古を始めますよ?時間がないのでスパルタでいきます!」
『ははは、程々にして頂けると……』
『ええ!死なない程度に鍛えてやって頂戴!ファルケン君!』
「そうじゃそうじゃ!もう二度とあの様な失態は許さぬのじゃぞ!…さてアイスは定時の散歩にでも行こうかの……これファルケン!離すのじゃ!」
うふふ…童、お前もだよ…。
『勇者様…アイス様はお勉強もありますので、ちょっとだけ余力を残して頂けると…。』
分かったよ!女中さん!
「アヤメ!お主裏切りよったな!母様ー助けてたも!誰でもいいから助けてたもれー!」
だーめ。
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