第5話 魔王の呪い


 もう本当に馬鹿、俺の馬鹿。


 あれからオリビアを探して走っているが、タダでさえ迷いやすい砦で簡単に見つかるはずもなく、俺は走り回っていた。


 「おーい!オリビア!どこだー!俺が悪かったー!」


 本当どこ行っちゃったの?


 まさか一人で魔族の陣に突撃してる訳じゃ……いやそこまで馬鹿じゃないな。


 あと行ってないとこと言えば…訓練所か!


 迷いながらも何とか訓練所に辿り着くと、そこには一人で素振りをしているオリビアがいた。


 「よかった!ここに居たのかオリビア!探したぞ!」


 「……何しに来たのよ。どうせ私はうるさい女よ……」


 「オリビア…あれは違うんだ。‥実は魔王に呪いをかけられてな、思ってもない事を言ってしまうという呪いなんだ。怖い呪いだ……」

 

 「そ、そうだったのね!そうよね!勇者があんな事言う訳ないものね!」


 なんて簡単な娘なんだ。勇者は心配だ。


 「ああ、でなければオリビアにあんな事言う訳ないだろ?でも安心してくれ、すぐ解いてみせるよ」


 「ええ!私も協力するわ!何でも言ってね!あと……さっきの質問に答えてよ、戦争が終わったら私は何をすればいいの?」

 

 本当にこいつは真面目なんだから…。


 「何でもいいだろう?例えば冒険者なんかどうだ?世界中を旅して回るんだ。それがいやなら騎士なんかもいいぞ!貴族や王族に仕えて護衛するんだ!商人なんかもいいかもな!」


 「そんなの私なんかがなれる訳無いじゃない……。計算だって出来ないし、騎士になれるような言葉使いだって知らないのよ?無理よ……」

 

 「違う違う、俺が言いたいのはやる気さえあればなんにでも挑戦出来ると言いたいんだ。それにな、戦争が終わったからって軍はすぐに解体はされないぞ?」


 「どうして?戦争が終わるなら軍なんて必要なくなるじゃない……」


 「お前は馬鹿だな、規模は縮小するだろうが、完全に軍を無くす国がある訳ないだろ。それに戦争が終われば魔族は中央大陸から撤退するが、この百年で自然に増えた魔物だっているだろ?それに対処するには軍が必要だろうに」


 「……そうよ…ね…そうよ!こんな簡単な事に気づかないなんて私って馬鹿ね!…って誰が馬鹿よ!」


 いやお前も自分で言っただろ。


 「すまない、呪いが…。でも気づけただろ?やる事、やれる事は沢山あるってな!じゃあ俺は忙しいからこれで」


 俺が去ろうとすると、オリビアがいきなり木剣を投げて来た。

 

 「待ちなさい勇者!勝負よ!悩みがなくなったら体を動かしたくなったわ!」


 いや、お前は年がら年中動かしてるだろが。

 はぁ…しょうがない、稽古をつけてやるか。


 「ちょっとだけだぞ?本当に忙しいんだからな」

 

 「どっちかが負けを認めるまでよ!喰らえ!『三連切り』!」


 オリビアがいきなり切りかかって来たのを俺は軽くいなす。


 俺はオリビアが防げるくらいの威力、スピードの攻撃を上中下に分けて繰り出す。


 オリビアは防ぐので手一杯だ。息も切れてきたみたいだな。


 俺は少し攻撃の手を緩め、オリビアの出方を伺う。

 

 「ハァハァ‥やるじゃない勇者!でもまだこれからよ!『閃光の一撃オーラブレード』!」


 オリビアの閃光の一撃オーラブレードがすごい勢いで迫る。


 (おいおい、殺す気かよ)


俺はすぐ様同じ威力の閃光の一撃オーラブレードを放ち相殺する。


 そして技を放った隙だらけのオリビアの背後に回り首筋に剣を当てる。


 「オリビア…俺じゃなかったらケガじゃすまなかったぞ?」


 「私の負けね。それとあんただから撃ったのよ」


 さいですか…。

 


 「そうか…なんてうるさくて凶暴で馬鹿な女なんだ。っあ!呪いが!さらば!」


 俺は高速で逃げ出す。


 「ぬわあんですってー!本当に呪いなの!?ちょっと待ちなさい勇者ー!!」



  呪いって便利。


 

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