第3話 ガルランド王国
俺は転移陣が設置してあるガルランド王国の王宮の中庭に転移していた。
時差のせいかこっちの国は昼くらいだ。
どうやら第二王女のクラリスが複数の貴族とお茶会をしているみたいだな、丁度いい。
「すまないがガルランド王に話がある、取り次いでくれないか?クラリス王女」
突然現れた俺に皆驚いてるみたいだな。
楽しいお茶会を邪魔してすまない。
「こ、これは勇者ファルケンハイン!どうなさったのですか!?前線にいたはずでは?」
「ああ、火急の話がガルランド王にあってな、転移で戻って来たと言う訳だ。クラリス王女、何度も言うが王様に取り次いでもらえるかい?」
「…わかりました。ついて来て下さい。皆様はごゆっくりしてて下さい、すぐ戻りますね」
俺はクラリスの後に続いて歩き出す。
「すまなかったな、茶会の邪魔をして」
「いえ、お気になさらずに。大事な要件なのでしょう?それに兵士が戦ってる中、お茶会をしている事に貴方が怒らないかの方が心配でしたよ」
まぁ確かに思う所はあるが…。
「気にするな、あの場は貴族の第二の戦場だと思う事にするよ。俺にあーゆのは無理だからな」
マナーなど知らないからな。
「ふふっ、第二の戦場ですか…。面白い事を言いますね貴方は。所で大事な話とはなんなんです?」
王女になら話してもいいか……。
「ああ、魔族との戦争が終わりそうだよ。魔王が停戦…いや終戦に向けて話をしたいそうだ」
「本当でございますの!?…ああ、まさか私が生きている内にこの百年続いた戦争が終わるとは……」
「そう言う事だ。完全な平和には程遠いが…とりあえずの足掛かりにはなるだろう?」
「ええ!それでしたらこんな悠長にはしてられません!勇者ファルケンハイン!お父様の元へ急ぎますよ!」
そう言うと王女クラリスはドレスの裾を掴み走り出した。
俺も後に続き走っていると、玉座の間の大きな扉が見えて来た。
「お父様!大事なお話があります!お父様!」
クラリスが扉を勢いよく開けるとそこには王と宰相が何やら話し合っている所だった。
「これ、クラリス。淑女がそんな大声をあげるものではないよ。一体どうしたのかな?」
「申し訳ありません、お父様。そこの勇者ファルケンハインより、大事な話があるとの事で急ぎ連れて参りました」
「ガルランド王、そして宰相グスタフ殿。突然の無礼をお許し願いたい。だが事は急を要する、魔王ドゥルキスより終戦の会談を開きたいとの伝言を承った。よって日時や場所、条約の内容や各国への通達など色々話し合って欲しい」
「………であるか」
いや王様、話ちゃんと聞いてるか?
…であるか。じゃないんだよ。
「勇者よ、其方を召喚してらからまだ数ヶ月しか経っていないが、もう魔族に負けを認めさせたのか!?」
「…いや、宰相グスタフ、それは少し違うな。俺が魔王の部下になる代わりに世界の半分を貰ったのだ。人類が暮らす中央大陸と東大陸をな」
「…な!それでは実質魔族に負けたのを認めたのも同然ではないですか!?大体なぜ魔王なんかに世界の半分を与える権利があるんですか!! 王は如何お思いですか!?」
「………であるか」
「ほら見ろ!王もこう言っておるわ!」
いや、何も言ってないよね?
…であるか。しか言ってないよね?
「宰相グスタフ、少し落ち着け。大事なとこはそこじゃないだろう?戦争が終わるんだぞ?それも負ける形ではなく、対等な条件でだ」
「…そうですわ!お父様それにグスタフ。この百年続く戦争の終結はガルランド国…いえ人類の悲願でありませんか!これ以上なにを望まれるのです!?」
「……Deあるか。…いやすまないクラリス、あまりの衝撃に意識がとんでおったわ。もちろん戦争終結に反対などしないさ。勇者よ良くやってくれた。だが、少し待ってくれ。主要な貴族だけでも集め、議会をひらかなければならぬ。宰相もそれでよいな?」。
「………でありますか」
いや、今度はお前かい!
「それは分かっている。元々時間のかかる事だと理解していた。だが前線の軍への全ての作戦中止の命令書だけは今すぐに発行してもらいたい。余計な犠牲を出さないためにもな」
「承知した。すぐに発行させよう…いやその時間も惜しいな。勇者よこの短剣を持って行くが良い、それを見せれば誰も逆らわぬじゃろう」
そう言うと、王はシンプルな鞘にガルランド家の紋章が刻まれた短剣を投げて寄越した。
「助かる、ガルランド王よ。俺はすぐに前線へ転移する。…そうだな1週間後にまた様子を見に帰って来るとします」
「あい、分かった。それまでにはなんとか形になるよう努めるとしよう。では勇者よ大義であった」
俺は王様やクラリスに別れの挨拶をし、すぐに前線へ転移する。
……やれやれ、やる事が山積みだが、平和のためにはやらないといけないの……であるか。
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